L gallery(名古屋) 2025年9月20日〜10月5日
森正響一
森正響一さんは1997年、愛知県知多市生まれ、2020年、名古屋造形大学彫刻コース卒業。「第14回CBC 翔け! 二十歳の記憶展」CBC賞。
2020年、愛知の3つの美術大学の学生、卒業生の選抜展motion#5に出品。2024年に名古屋のYEBISU ART LABOでの「TACTIL SENSE OF PERSONA(森正響一+示崎マキ)」を参加した。
森正さんは、子供の頃から好きだったロボットアニメをモチーフに、ロボットの形態を焼き物で制作している。ロボットアニメというサブカルチャーの世界と、陶芸という組み合わせの意外性がユニークである。

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今回の個展会場を見渡してみる。サイズは大小さまざまで、屋外に設置された大型のものから、手のひらに載る小さなものまで幅広い。同時に形態も実に多様で、一つとして同じものはないという感じである。
作家はこれらの作品をドローイングをしてから立体に再現するのではなく、即興的に下から立ち上げるように制作していく。いきなり土を練り上げ、これだけ多種多様な形態を生み出しているというのは驚きである。
手びねりで、ひも状や玉状にした粘土を積み上げ、素焼き(800℃)、本焼き(1250℃)、上絵(750℃)と三回焼く。

表面は、金、銀をはじめ、メタリック感を強調しているが、その色彩もまたバラエティーに富んでいる。細部に至るまで、緻密に造形され、鋭角的であると同時に土の素材感と釉薬によって、有機的でもあり、温かみがある。
それゆえ、それぞれの作品の形態を見ていくのが楽しい。阿修羅など、作家自身が吸収したさまざまなものがイメージの源泉になっていて、そこから形態を生み出している感じである。
多分、さまざまな文化、要素、動きを複合化させしながら、全体の形態が生まれるのだろう。設計図を作らないで、素材に対する触覚性から、その場で形を立ち上げるという陶芸における土の可塑性が、「ロボットアニメ」を作る作家の制作スタイルにフィットしたとも言える。

森正さんは、同じ形態が生まれないように意識しつつ、自在に形態を作る。紐状や玉状の粘土が増殖するように造形することで、形態の自由さ、多様さが生まれるのだと感じた。
その意味では、彼の作品は精密で、ロボット的、未来的でありながら、陶芸性が強く出ているために、土俗的、原初的で、どこか土偶のような呪術性や祭祀性をもまとっていてようにも感じられるのだ。
筆者が森正さんの作品に興味を覚えるのは、まさにそういう部分だ。焼き物で人形的な作品を作る場合は、どうしてもキャラクター化しがちであるが、そういう安易さがない。

「キャラクターのイメージありき」の制作になると、素材に対する意識も相対化するし、制作プロセス自体が複合化する。自分がイメージしたキャラクターの再現が優先されるからだ。
彼の場合は、そうではなく、むしろキャラクター化を避け、形態を多数化、多様化するとともに、徹頭徹尾、土素材と対話しながら作るという陶芸のプロセスをベースに据えている。
ロボットアニメという未来的なイメージを借りながら、太古の昔から続く土への憧憬、人形の呪術性、精霊性を宿し、過去の時間と現在、そして未来をつなぐような両義性が作品に表れている。

そもそもロボットアニメというのは、過去における未来のイメージであって、それ自体は過去への眼差し、郷愁なのだ。
だから、森正さんの作る作品は、作家の幼い頃の記憶の「ロボットアニメ」の相貌と、そこに流れ込む膨大な過去の時間による懐かしさが、作家の創造力、現在性によって、更新され続けていく。
森正さんの作品が、未来とともに過去、そして遠い昔を想起させる所以である。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)