KYOTO EXPERIMENT 2021 SPRING 全プログラム発表

©️小池アイ子

京都国際舞台芸術祭 京都エクスペリメント

 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2021 SPRING」の全プログラムが、京都国際舞台芸術祭実行委員会から発表された。11回目を迎える今回は、3人の共同ディレクターによる新体制で新たなプログラム構成をスタートさせる。

概要

会期 :2021 年2 月6 日 (土) 〜3 月28 日 (日)

会場 :ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、京都伝統産業ミュージアム、京都府立府民ホール“アルティ”、mumokuteki ホール ほか

主催 :京都国際舞台芸術祭実行委員会[京都市、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)、京都芸術大学 舞台芸術研究センター]

 国内外の「EXPERIMENT(エクスペリメント)=実験」的な舞台芸術を創造・発信し、芸術表現と社会を新しい形の対話でつなぐフェスティバル。

 演劇、ダンス、音楽、美術、デザイン、建築など、ジャンルを横断した実験的表現から生まれる創造、体験、思考を通じて、新たな可能性を開く。

 国内外の先鋭的なアーティストによる作品を上演する「Shows」、京都および関西地域をアーティストとともにリサーチし、未来の創作基盤につなぐ「Kansai Studies」、トークやワークショップなど鑑賞とは異なるフォーマットで先端的な思考に触れる「Super Knowledge for the Future[SKF]」という3つのプログラムがある。

チケット販売は1月8日から

 チケットは、2021年1月8日午前11時から販売。詳細は公式サイトへ

Shows 上演プログラム

 国内外から先鋭的なアーティストを迎え、いま注目すべき10 作品を上演。ダンス、演劇、音楽、美術といったジャンルを越境した実験的作品が紹介される。

 観客席と舞台の関係性、ジェンダーの境界線、パフォーマンスの主体における境界線、作品と創作プロセスの境界線など、舞台芸術を取り巻くさまざまな境界線に対して、新たな問いを投げかける作品にフォーカスしている。

 ※各アーティスト名は公式サイトにリンク

小原真史 [日本|展示]

小原真史「イッツ・ア・スモールワールド:帝国の祭典と人間の展示」「学術人類館」(第五回内国勧業博覧会)1903年、個人蔵

デイナ・ミシェル [カナダ|ダンス]

デイナ・ミシェル「Mercurial George」Photo by Camille McOuat

垣尾優 [日本|ダンス]

垣尾優『それから』

フロレンティナ・ホルツィンガー [オーストリア|パフォーマンス] 

フロレンティナ・ホルツィンガー「Apollon」Photo by Radovan Dranga

山本精一 [日本|音楽]

山本精一

ナターシャ・トンテイ [インドネシア|パフォーマンス]

ナターシャ・トンテイ『秘密のグルメ倶楽部』©️Natasha Tontey

音遊びの会×いとうせいこう [日本|音楽・パフォーマンス]

音遊びの会×いとうせいこう『音、京都、おっとっと、せいこうと』Day1 上ル Day2 下ル

中間アヤカ&コレオグラフィ [日本|ダンス]

中間アヤカ&コレオグラフィ『フリーウェイ・ダンス』Photo by Junpei Iwamoto

ウィチャヤ・アータマート/For What Theatre [タイ|演劇]

ウィチャヤ・アータマート/For What Theatre『父の歌 (5月の3日間)』Photo by Wichaya Artamat

ママリアン・ダイビング・リフレックス/ダレン・オドネル [カナダ|演劇]

ママリアン・ダイビング・リフレックス/ダレン・オドネル『私がこれまでに体験したセックスのすべて』(オーストラリアでの上演、2017)Photo by Jim Lee

Kansai Studies リサーチ

kansai studies

 アートにおける関西という場のポテンシャルやローカル・カルチャーの実態を改めて定義する試み。

 アーティストが中心となって、市民、プロデューサーや研究者とともに、年間を通じて関西の地域文化をリサーチする。

 リサーチを通じて生まれた思考の軌跡やプロセスは、特設ウェブサイトで公開・蓄積。誰もがアクセスできるオンライン図書館として、未来のクリエイターのため、プロジェクトを実践するためのナレッジベースや実験場、アイデアソースとなる。

 アウトプット形式を事前に決めず、作りながら考え、その過程も見せ、数年かけてリサーチを続けるのが特徴だ。

 2020年度は、「水」がテーマ。大阪を拠点とする建築家ユニット、dot architectsと、京都を拠点とする演出家、和田ながらが中心となって、プロジェクトを進める。

 「水」は、生物の生存に欠かせない物質であると同時に、農耕、漁業、流通、産業、工業など、人間の生活のあらゆる営みに関わる。アーティストたちは水にまつわる現場に出向き、この地で水がなしてきたさまざまな出来事を探る。

 そうして気づいた発見や、そこから導かれた思考、発想は、世界中から集うアーティストをはじめ、あらゆる人々にとって、魅力的な原石となる。

Super Knowledge for the Future [SKF] トーク、ワークショップ

 実験的な舞台芸術作品と社会をつなぎ、未来への視点を獲得するプログラム。参加者は、トークやワークショップなどを通じ、さまざまな社会問題を知り、現代の重要な課題や予測不能な未来に立ち向かうための知識を深める。

 トーク、ワークショップなどの詳細・申し込みは、こちら

ディレクターズ・メッセージ

更なるエクスペリメンタルな領域へ

 11回目を迎えるKYOTO EXPERIMENTは、私たち3名の共同ディレクターという新体制による、フェスティバルの新たなスタートです。橋本裕介前プログラムディレクターからディレクションを受け継ぎ、共同ディレクターチームとして始動したのは2019年4月。以来、2020年度のフェスティバルに向けて準備をしてきましたが、その過程で私たちを取り巻く世界は大きく変化しました。KYOTO EXPERIMENT 2020として用意していたフェスティバルは、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により秋の開催を見送り、2021 SPRINGとして2021年春に開催することになりました。
 その対応の中で、変更を余儀なくされ、また当初の想定とは異なる形になったプログラムもありますが、この「KYOTO EXPERIMENT」というフェスティバルで私たちが実現したいことの多くは変わりません。準備を始めてから1年以上が経ったいま、新たなフェスティバルの形とプログラムをみなさんと共有できることを嬉しく思います。
 新たな出発に際して、3人でのミーティングを膨大に持つ中で互いに問い続け、プログラムに反映していったいくつかのことがあります。
 ひとつは、「KYOTO EXPERIMENT=京都の実験」という名を冠すこのフェスティバルにおいて、どのような舞台芸術の実験が可能なのか?という問いです。

 KYOTO EXPERIMENTは、文字通り京都という街において実験的な舞台芸術を紹介するフェスティバルです。「実験的」とはどういうことなのか、京都という都市において実験的表現を創作し共有してい くことにどんな意味があるのか。共同ディレクションの始点からこれらの問いを持ち続ける中で、社会の様相も変化を遂げていきました。国内においても国際的な社会においても、他者に対する非寛容性や分断、経済格差、環境危機など、グローバリゼーショ ンがもたらす負の側面ともいえる諸問題が叫ばれる中で、なぜ「実験的」表現を国際舞台芸術祭という場で追求していくべきなのか。こうしたことを考える中で、ますます分裂し、また二極化していく世界においては、KYOTO EXPERIMENTという国際性と創造性を有するプラットフォームからこそ、何かと何かの間、未知やわからないこと、曖昧さ、つまりそうした実験的表現に焦点を当て、生み出していくことが重要ではないかと考えるようになりました。
 誰もが「わかる」のではなく「わからない」可能性のある実験的表現こそが思考の領域を広げ、これからの時代におけ る新たな価値観や寛容性を生み出すのではないか。そしてそれができるのは、つねに新たな視点や予想外のやり方を既存の価値観や方法論に持ち込むことのできる、表現者たるアーティストではないでしょうか。また、「京都」という、多く の大学や芸術創造拠点、先端企業が位置する都市においては、アーティストが新たなアイディアを異なる分野とつなげな がら展開していくポテンシャルが十分にあることから、実験的表現をこの街で展開することに大きな意義を見出しました。
 これらのことから導き出したのは、既存の表現形式を飛び越えるもの、ある表現形式と別の表現形式のハイブリッドを生み出したりそれらの間を提示するもの、プロセス主導型の表現、また京都をはじめとする関西地域で展開されてきた表 現活動を見直し発展させる表現やリサーチをプログラムに据えることです。こうした表現は、知らず知らずの間に私たちが線を引いてしまっている認知領域を軽やかに飛び越え、また京都という創造都市の可能性を存分に感じさせるものであると考えています。
 もうひとつ重要な問いは、フェスティバルを鑑賞する場ではなく、思考する場にするためにはどのような提案が必要か、ということです。上演される作品をすべての中心に据えるのではなく、それを生み出す環境やそこから社会に派生する出来事をもフェスティバルの一環として捉えることはできないか。また、毎年開催されるフェスティバルとフェスティバルの間に思考の関係性を創っていくことは可能だろうか。これらのことから、Kansai Studies (リサーチプログラム)、 Shows (上演プログラム)、Super Knowledge for the Future (エクスチェンジプログラム、略称 SKF) という3つのプログラムを柱とした形でのフェスティバルを考えました。この骨組みがフェスティバルの可能性をひらき、アーティストと観客が互いを発見すると共に、対話を生み出す新たな関係性を創り出すことを願っています。
 Kansai Studies は、KYOTO EXPERIMENTが拠点とする京都、そして関西地域をアーティストとともにリサーチするプログラムで、そのプロセスをウェブサイト上で公開していきます。今年度は、私たちの生活に欠かせない「水」をテーマに したリサーチを進めており、アーティストならではの視点によるその過程は、思考の反転や予想外の出会いと展開に満ちています。このプログラムが KYOTO EXPERIMENTの思考のベースとなり、ゆくゆくは京都で創作する国内外のアーティストの立脚点となることも目指していることのひとつです。
 Showsは、いわゆる鑑賞型のプログラムですが、舞台芸術におけるさまざまな境界線に注目し、そうした境界線への問いを緩やかであったり鋭くであったり、独自のやり方で投げかける表現を配置しています。何かの答えを示すのではなく、 問いの設定方法やそのプロセス、問いから導き出される対話の糸口を提示する表現に注目しました。また、Showsではこ うした表現を生み出すアーティストの創作を促進していきます。
 SKFは、フェスティバルを構成するにあたり背後にあるさまざまな事象や、Showsの演目でトピックとなっている事象、または舞台芸術に限らずいまの社会において重要な事象をトークやワークショップなど観劇とは異なるフォーマットで取り上げ、対話の場を開いていくプログラムです。「未来に役立つスーパー知識」がこのプログラムでシェアされ、議論やエクスチェンジ、新たなアイディアを生み出すことで、未来のフェスティバルにも影響を与えていくことを目指しています。
 実験的表現は、ひとつの形を規定するのではなく、常に変化を続けていくものでしょう。まさにその変化し続ける表現のあり方こそ、「いま」を規定することなく複数の形で具現化しながら、未来に向けてさらなる変容を続ける可能性を秘めているものだと信じます。その変容のプロセスにみなさんと共に参加していくことこそ、このフェスティバルの目的であり、これからの新たな挑戦を共有し、共にエクスペリメンタルな日々を過ごすことを楽しみにしています。
 最後に、新型コロナウィルス感染症拡大という未曾有の状況に際し、度重なる変更にも大きな理解を示しフェスティバルに力を与えてくれたアーティスト、そして関係者、スタッフのみなさんに感謝します。
     KYOTO EXPERIMENT 共同ディレクター
     川崎陽子 塚原悠也 ジュリエット・礼子・ナップ

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伝えること、文化芸術とメディアについて

1980年代から、名古屋、東京、関西で文化芸術を見てきた。新聞文化面、専門雑誌、「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、自ら新聞文化欄を編集、美術、映画、演劇などの記事を書いてきた。2000年代に入ると芸術批評誌を立ち上げ、2019年にはWEBメディアを始めた。文化芸術とメディアの関係、その歴史的展開、メディアリテラシー、課題と可能性、レビューや伝わる文章の書き方、WEBメディアの意義、構築方法について、若い世代に伝えたいと考えています。

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