記事内に商品プロモーションを含む場合があります

ベルイマン没後15年記念特集 名古屋シネマテークで6月4-17日 デジタル・リマスター版 

スウェーデンが生んだ20世紀最大の巨匠 イングマール・ベルイマン監督

 スウェーデンが生んだ20世紀最大の巨匠、イングマール・ベルイマン監督(1918- 2007年)の没後15年の特集上映が2022年6月4-17日、名古屋・今池の名古屋シネマテークで開催される。

 『魔術師』『仮面/ペルソナ』『叫びとささやき』の日本最終上映に合わせ、ベルイマンの至福の世界に浸ることができる特集上映である。

 スタンリー・キューブリック、スティーブン・スピルバーグ、ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォーなど、巨匠と呼ばれる映画監督たちに尊敬され、世界中から称賛される唯一無二の映画作家。

 ベルイマンの遺した作品にオマージュを捧げる監督は数知れず、没後15年がたった今なお、ウェス・アンダーソンやミア・ハンセン=ラヴ、アリ・アスター、グザヴィエ・ドランなどの映画作家たちに影響を与え続けている。

 「愛と欲望」「生と死」「神と宗教の存在」といった普遍的なテーマを軸に、人間の内面に潜む「孤独」や「葛藤」をすくいあげ、人間の本質を追究し続けた。

 独創的で奥深い心理描写と革新的な色彩表現は、登場人物の心の痛みが聞こえるほどに生々しく、見る者の感情を揺さぶる。

 北欧特有の壮大な自然は厳しくも温かく、息をのむほど美しいシーンとして登場する。

 しばしば難解なイメージが先行する監督だが、私たちの感性に語りかけるベルイマンのメッセージは現代でも鮮烈な衝撃と喜びを与えてくれる。

プログラム

6/46/56/66/76/86/96/10
10:00『仮面/ペルソナ』『鏡の中にある如く』『叫びとささやき』『魔術師』『沈黙』『仮面/ペルソナ』『鏡の中にある如く』
6/116/126/136/146/156/166/17
12:00『叫びとささやき』『魔術師』『沈黙』『仮面/ペルソナ』『鏡の中にある如く』『叫びとささやき』『沈黙』

作品紹介 日本最終上映作品も

『仮面/ペルソナ』

(1966年/スウェーデン/スタンダード/モノクロ/82分/原題:Persona)
第2回全米批評家協会賞 作品賞・監督賞・主演女優賞 ※日本最終
出演:ビビ・アンデショーン、リヴ・ウルマン
撮影:スヴェン・ニクヴィスト

 失語症に陥ったスター女優と、彼女を看病することになった看護婦。海辺の別荘でふたりだけで生活していくうちに、お互い自意識の“仮面”が剥がされ、溶け合い、交錯していく…。分身-ドッペルゲンガ-をテーマに「映画」と名付けられる予定だった本作は、ベルイマンによる映画論だ。終生にわたるパートナーとなったリヴ・ウルマンは、本作で出会い、以降ともに傑作を生みだしてゆくことになる。

『鏡の中にある如く』

(1961年/スウェーデン/スタンダード/モノクロ/89分/原題:Såsom i en spegel)
第34回アカデミー賞 外国語映画賞
第12回ベルリン国際映画祭 国際カトリック映画事務局賞

出演:ハリエット・アンデンション、グンナール・ビョルンストランド、マックス・フォン・シドー、ラルス・パッスガルド
撮影:スヴェン・ニクヴィスト

 夏、孤島にやってきた4人の家族。狂気へと走ってゆく娘に対し親として何もできず、むしろ作家としてその姿を冷徹に記録したいと思ってしまう父。愛をささやきながら、沈黙するほかない夫。無邪気な弟は、唯一の心の拠り所だったが…。神の前提なしでいかに愛を証明するか、その途方もない模索が始まった。

『叫びとささやき』

(1972年/スウェーデン/ビスタ/カラー/91分/原題:Viskningar och rop)
第40回アカデミー賞 撮影賞
第7回全米批評家協会賞 脚本賞・撮影賞
第47回キネマ旬報 外国映画ベストテン第2位
第26回カンヌ国際映画祭 フランス映画高等技術委員会賞 ※日本最終

出演:ハリエット・アンデルセン、カリ・シルヴァン、イングリッド・チューリン、リヴ・ウルマン
撮影:スヴェン・ニクヴィスト
音楽:フレデリック・ショパン、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ

 19世紀末のスウェーデンの大邸宅。優雅な生活を送る上流階級の3人姉妹と召使。4人の女性のそれぞれの愛と孤独、生と性の断片を強烈な赤のイメージで抉り出し、まさにベルイマン芸術のエッセンスが花開いた名作。トリュフォーが絶賛し、アメリカでのベルイマンの最大のヒット作となった。

『魔術師』

(1958年/スウェーデン/スタンダード/モノクロ/99分/原題:Ansiktet) 
第20回ヴェネツィア国際映画祭 審査員特別賞 ※日本最終
出演:マックス・フォン・シドー、イングリッド・チューリン、グンナール・ビョルンストランド、ナイマ・ヴィフストランド
撮影:グンナール・フィッシェル

 怪奇現象、超能力、交霊術…といったオカルト的要素に科学と呪術、芸術と権力などの二項対立をごった煮で凝縮し、愉快なエンタテイメントへと昇華した初期の到達点。旅廻りのマジシャンの一座と、彼らの見世物のトリックを見破ろうとする役人たちの一夜のいたちごっこを描く。ベルイマンが問う、芸術家とショー・ビジネスの正体。

『沈黙』

(1963年/スウェーデン/スタンダード/モノクロ/96分/原題:Tystnaden)
出演:イングリッド・チューリン、グンネル・リンドブロム、ヨンゲル・リンドストロム、ホーカン、ヤンベルイ
撮影:スヴェン・ニクヴィスト
音楽:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ

 言葉が全く通じない国に来てしまった翻訳家の姉と奔放な妹、そして妹のひとり息子。しかもお互い唯一の話し相手であるはずのその姉妹は、嫌いあっている。この絶望的な状況。完結編に至り、ようやく“神の沈黙”が意味するものがおぼろげに見えてくる…。静寂の中、かすかに聞こえるささやき。センセーショナルな描写が各国で物議を醸し、映画史上、最も多くの分析・批評がなされたと言われる問題作。

イングマール・ベルイマン

 1918年、プロテスタントの聖職者の父エーリックと母カーリンの次男として、スウェーデンの大学都市ウプサラで生まれる。

 44年、アルフ・シェーベルイ監督『もだえ』で脚本を手掛け、46年、『危機』で映画監督デビュー。

 以後、60年以上にわたるキャリアの中で、50本以上の作品を残した。併行して、ストックホルム王立劇場の芸術監督として、数々の演劇の演出を務める。

 1982年、最後の監督作と宣言し、スウェーデン映画史上最大の製作費を投じた『ファニーとアレクサンデル』で、3度目のアカデミー賞外国語映画賞に輝く。

 1998年にカンヌ国際映画祭から「名誉パルム・ドール」を授与された。2007年7月30日、バルト海の孤島フォール島の自宅で死去。享年89。

最新情報をチェックしよう!
>文化とメディア—書くこと、伝えることについて

文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

CTR IMG