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池谷友秀展 masayoshi suzuki gallery(愛知県岡崎市)で6月11-26日 

masayoshi suzuki gallery(愛知県岡崎市) 2022年6月11〜26日

池谷友秀

 池谷友秀さんは1974年、神奈川県小田原市生まれ。2001年、東京綜合写真専門学校を卒業後、国内外で個展、グループ展を開いている。masayoshi suzuki galleryでは、初めての個展となる。

 趣味のスキューバダイビングで海に潜っていたことをきっかけに、水と人間をモチーフに撮影している写真家である。

 一見、コマーシャルフォト的な雰囲気もあるが、池谷さんが書いている文章を読むと、人間存在、つまり人間が宇宙に生きる根源的なありようを探究していることが分かる。

 水は、命の源、人間の拠り所であるとともに、その命を超越した圧倒的な存在である。池谷さんは、水の諸相と人間を撮影することで、人間がコントロールできない水の絶対的次元を主題に据えている。

池谷友秀

 日常と非日常、生と死、運動と静止、美しさと醜さ、強さと弱さ、存在と非在、表面と内部など、見え方、現象、概念、意味を超えたところにある水である。

BREATH & WAVE

 池谷さんは、海に潜ったとき、生と死の境界を見たというようなことを書いている。例えば、水の中では、地上では当たり前すぎて忘れている呼吸が意識される。

 また、動きにくく、張り詰めた海の中で自分の身体性を感じ、肌など人間のインターフェイスがすべて水に囲まれているから感覚が研ぎ澄まされる。

 言い換えると、それは生の実感と死の恐怖が接する空間である。

 それは、意味を超えた「空」の世界に近い。そこでは、人間がつくった解釈の世界、社会から離れ、生命がただ生きようとする姿、ありのままに純化した態様と、その延長にある死が隣り合わせになっている。

池谷友秀

 美しく、神秘に満ち、すべてを包み込む海、ときに荒々しい姿を見せる流れの中で、自分という主体が客体としての世界に向き合うというより、むしろ、自分という小さく希薄な存在が大きな世界、いのちと一体になる感覚を得たのではないか。

 地上での見た目の美醜を超え、社会の上下関係、利害、一般的なルール、意味によって制御できない、対等で平等な命そのものを感じること--。すべてが支えあい、自分の命がほかの命の死によって生かされていることを知る。

 池谷さんは、自身の作品のテーマを「コントロールできないこと」としているが、それは、まさに人間という存在が自然、宇宙の摂理とともにあることである。

 ヌードのモデルには、コンテンポラリーダンサーを使っている。

 そのシャープな体と官能性、身体性、感覚性、存在性、生命感が、いっそう、池谷さんの作品を力強いものにしている。

池谷友秀

 UV インクを使うようになった池谷さんの最近の作品は、写真でありながら、「絵画」を志向しているようである。

 アクリル板にUV インクでイメージを転写した作品では、物質感が強調されている。

 木製パネルに石膏を塗って盛り上げ、UV インクでプリントした後で、ガラスの破片などを貼っている作品もある。

 「絵画」的であるとは、複製芸術である写真をテクスチャーによって1点ものにしているということもあるが、同時に、劇的で躍動感あふれる場面、構図や明暗、造形性が強調されていることでもある。

 何をしたいかが明確である。自身が海の中で実際に体験したこと、その揺るぎない原初的な出会いが作品の底流にあるからだろう。

池谷友秀

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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