美術評論家の中村英樹さんが死去 81歳

 2021年12月7日の朝日新聞、毎日新聞によると、名古屋市出身の美術評論家、中村英樹さん(名古屋造形大名誉教授)が11月14日、肺炎で死去した。81歳。

 近現代美術を中心に幅広く論じ、「いきのびるアート」「〈人型〉の美術史」「新・北斎万華鏡」など、多数の著書がある。

 1940年、名古屋市生まれ。名古屋大学文学部哲学科美学美術史卒業。1965年、69年に美術出版社主催芸術評論募集に入選。その後、名古屋造形芸術短期大学助教授、名古屋造形大学教授を務めた。 国際美術評論家連盟会員。

 1990年代半ばから2000年代初めにかけ、中日新聞の美術記者だった筆者は、中村さんに大変お世話になった。

 よく酒を酌み交わし、いろいろなことを教わり、また、この地域の美術家や美術館学芸員らも交え、熱く語り合った。

 文化欄にも、多くの原稿を書いていただいた。訃報追悼記事でいえば、 久野真さん(1998年)や斎藤義重さん(2001年)など。アントニー・ゴームリー展、柳幸典展(ともに2001年)のレビューなど、数多くの記事を執筆いただいた。

 筆者が中日新聞の美術記者を外れ、2002年に芸術批評誌「REAR」を高橋綾子さん(現・名古屋造形大教授、当時は名古屋芸術大教員)らと始めた後も、応援していただき、協力をいただいた。

 また、2010年から2015年ごろまで、東京新聞(中日新聞東京本社)で、展覧会評を書いていただいている。

 中村さんは、名古屋市美術館の「現代美術のポジション」展など現代美術展のシンポジウムパネリストもされていたので、そうした場面で会う機会も多くあった。

 美術館や画廊のオープニングなど、機会あるごとに会い、言葉を交わし、決まって、その後は飲みに行った。

 以前から、名古屋と東京の2拠点で活動されていたが、名古屋造形大を退職された後は東京での活動が中心となり、転居。会う機会も次第に少なくなった。

 長年にわたり、ご指導をいただき、親しくしていただいた。ご冥福をお祈りいたします。

 以下、中村英樹さんの生前の活動について、引込線│Hikikomisen Platform中村英樹さんの略歴から情報をお借りした(一部加筆修正)。

1940 名古屋市生まれ
1963 名古屋大学文学部哲学科(美学美術史)卒業
1965・69 美術出版社主催芸術評論募集に入選
以後、新聞・雑誌・展覧会企画などによる評論活動を展開
1986・91 インド・トリエンナーレのコミッショナー
1986 バングラデシュ・アジア美術ビエンナーレのコミッショナー
1992 「東南アジアのニューアート-美術前線北上中」展(国際交流基金)企画参加
1993 バングラデシュ・アジア美術ビエンナーレ国際審査員
1999~2009 「第1回~第4回福岡アジア美術トリエンナーレ」出品作家選考協議会委員

著書
『鮮烈なる断片―日本の深層と創作現場の接点』(杉山書店)
『日本美術の基軸―現代の批評的視点から』(杉山書店)
『表現のあとから自己はつくられる』(美術出版社)
『新・北斎万華鏡―ポリフォニー的主体へ』(美術出版社)
『ハイブリッド・アートの誕生―東西アート融合に向けて』(現代企画室)
『視覚の断層―開かれた自己生成のために』(現代企画室)
『最深のアート/心の居場所 [実録]窮鳥はいかにして自己救済したのか?』(彩流社)
『アート・ジャングル―主体から〈時空体〉へ』(水声社)
『生体から飛翔するアート―二十一世紀の《間知覚的メタ・セルフ》へ』(水声社)
『〈人型〉の美術史―まなざしの引力を読む』(岩波書店、2011年)

共著
『アートウォッチング-現代美術編』(美術出版社)
『アートウォッチング-近代美術編』(美術出版社)
『カラー版 20世紀の美術』(美術出版社)
『20世紀の美術と思想』(美術出版社)
『「日本画」――内と外のあいだで』(ブリュッケ)他

論文
「『モナ・リザ』の真相」(雑誌『現代思想』2001年10月号、青土社)
「戦後日本美術の自主的な文脈」(雑誌『ARTFIELD 芸術の宇宙誌04』2007年3月、アート農園)
「外部/他者と対話する自立的な内面――仮設の視覚的表現による自己改革」(雑誌『思想』2008年第5号、No.1009 岩波書店)
「視覚的表現に根差すメルロ=ポンティ―〈間〉とキアスムによる自己救済力の生成―」(雑誌『思想』2008年第11号、No.1015 特集「メルロ=ポンティ生誕100年」、岩波書店)など

その他
雑誌『美術手帖』2007年3月号特集「アートクラシック」監修・執筆・対談、「描かれた植物との対話」―「(その1)画面を散歩する視線」「(その2)眺める距離を変えて」「その3」 「絵画空間の内に立つ」(雑誌『いけ花龍生』2008年6~8月号、no.578~580)など。

引込線での活動項目一覧
2009年「第一回 所沢ビエンナーレ美術展 引込線」参加
2011年「所沢ビエンナーレ「引込線」2011」参加

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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