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ヘレン・ケラーの荒川修作、マドリン・ギンズの思想への影響を分析

  • 2020年10月8日
  • 2020年10月8日
  • 美術

『Distraction Series』第12号より

 荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所Reversible Destiny Foundationが、荒川+ギンズが創造したさまざまな哲学、プロジェクトを共有しようと配信を始めた隔週のニューズレター『Distraction Series』の第12弾で、 マドリン・ギンズ著『ヘレン・ケラーまたは荒川修作』(Helen Keller or Arakawa;英語版1994年、日本語版2010年)を取り上げた。 10月の視覚障害意識向上月間に合わせた企画。

 日米両国で多くの人々に多大な影響を与えたケラーの軌跡が、荒川とマドリンの建築分野での思想と活動にどのように反映されているかを考えた。 『Distraction Series』の第12弾 では、エッセイとイメージによって、このプロセスが丁寧に紹介されている。

 小学生向けのケラーの伝記の多くが彼女の子供時代と家庭教師であったアン・サリヴァンに焦点を置くに対して、ギンズのアプローチは深い詩的考察に基づいている。

 ギンズは、ケラーの言葉の引用と、著者の詩的表現から綴られる視覚・聴覚障害の状況をさまざまにより合わせ、荒川の絵画作品をバックグラウンドに、複数性を内包した主体を 世界に降り立たせる。

 複数性の存在を通して、読者に、普段の生活では想像もできない世界の体験、それを可能にする「建築的身体」を生きるとはどういうことなのかを指し示すのである。

 視覚障害意識向上月間を前に、9月末に開催された米ニューヨーク・フィルムフェスティバルでは、ヘレン・ケラーの新しいドキュメンタリー映画「HerSocialist Smile(社会主義者の微笑み)」がストリーミング上映された。

 ジョン・ジャンヴィト監督によるこの映画は、政治活動家としてのケラーを主題に取り上げ、マドリンと荒川も興味を寄せた『アクティビズム』における先駆的功績として、ケラーという歴史的人物の活動を再考している。

 フィルムフェスティバルのプログラムによる作品紹介は以下の通り。

ジャンヴィト監督 は20世紀初頭のある瞬間に目を向ける。それはヘレン・ケラーが進歩主義を支持すべく情熱的に語り始めた時。映画は1913年、当時32歳であったケラーが初めて公の一般講演を行った年から始まり、新しく録音された詩人キャロリン・フォーシェによるナレーションとともに、ケラーの手記と様々な自然のイメージが織りなす作品である。労働者権利、平和主義、そして女性参政権を求めたケラーの揺るぎないアクティヴィズムは、彼女が生涯戦い続けた障害者運動の思想から切り離されてはならぬことを改めて思い出させる映画である。

https://www.filmlinc.org/nyff2020/films/her-socialist-smile/

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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