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やきものの現在 茶碗に挑んだ麒麟児たち ギャラリーヴォイス

 岐阜・多治見市文化工房ギャラリーヴォイスで、2020年1月16日〜3月29日、茶碗を集めた約130人による「やきものの現在 茶碗に挑んだ麒麟児たち」展が開かれている。岐阜県がドラマの舞台になった今年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の放映に合わせ、主人公の明智光秀ら戦国武将たちも愛好した茶道具の茶碗にスポットを当てた。趣向を凝らした茶碗が一堂に展示された楽しい展観。次世代の陶芸家や陶磁器デザイナーを育成する多治見市陶磁器意匠研究所の現役研究生30人と、美濃地方を拠点に活躍する卒業生97人が出展し、趣旨に賛同した国指定重要無形文化財保持者(人間国宝)の加藤孝造さん、鈴木蔵さんも特別出品している。出品者は、ギャラリーヴォイスのWEBサイトによる出品者一覧を参照。入場無料。

2月15日には、シンポジウム「ishokenの造形」も開催。国内外から注目される多治見市陶磁器意匠研究所卒業生の活躍と作品の魅力を紹介しながら、やきものの本質や今後を考える活発な議論を展開させた。シンポジウムのコーディネーターは、意匠研の副所長、前田剛さん。パネリストは、卒業生の大江憲一さん、堺克弘さん、柴田雅光さんである。

展示は、志野、織部など伝統的なものから斬新な手法、意匠のものまで文字通り多種多様である。130点の茶碗には、その数だけの作家の土との関わり、創作意識、方法論がある。
 シンポジウムでは、パネリスト3人が自作の展開や、陶芸との関わりについて話した後、前田さんが、やきものを仕事にして生きる現実のあり方等について、3人に尋ねた。特に、やきもの業界としては、制作すれば売れた過去の一時期と比べると、以前ほど作品が売れなくなっている中で、陶芸作家として生きる「楽しさ」の意味について問いかけた。

柴田さんは、家業が窯元で、中学生の頃から手伝わされた。意匠研に入ってから、やきものが好きになった。1から10まで自分でできるのがやきものの楽しいところ、などと説明。「商品」と「作品」を自分の中で比較的明瞭に分けて制作している。陶芸のイベントへの参加は、お客さんとの会話、触れ合いが楽しいという。

俳優で兄の堺雅人さんの演劇のように自分が打ち込めるものとして見つけたものが、やきものだった。自分の仕事として、料理人、小説家、陶芸家の3つの候補から、よりリアルで形が残るものとして陶芸家を選んだ。意匠研卒業後、当初、瑞浪市のメーカーの現場に入り、工場長になったが、会社が廃業。その後、作家として作品を作り始めた。個展等の企画、DM作り、SNSによる発信なども自分でこなすという方法で創作を展開させている。

大江さんは当初、コンビニでバイトをしながら制作し、ある時期にバイトをやめて自分を制作へと追い込んだ。今は、個展を中心に作陶。渓流釣りの趣味、家族との生活とバランスを取りながら、「楽しく生きる」ことをモットーにしている。土の感覚が気持ちいいという。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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