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やきものの現在 土から成るかたち—Part XⅦ

ギャラリーヴォイス (岐阜県多治見市) 2019年10月26日〜12月15日

 「やきものの現在 土から成るかたち」は、タイトル通り、陶芸の現在を考えるシリーズ企画のグループ展である。テーマを設定した初日のシンポジウムやアーティストトークを聞くのも楽しみで、以前から訪れ、刺激を受けてきた。以前、別の媒体「REAR」20号(2009年1月)に掲載した「工芸的造形への応答」もその1つを取材して書いた記事である。


 とはいえ、なかなか参加できずに月日が流れた。今回も、展示は見られたものの、トークには間に合わず、ギャラリーからその様子を収めた動画を借りた。以前と比べ、現代陶芸を美術館で見る機会が減っている気がする。個々のギャラリーの個展では見られるのだろうが、こうしたグループ展を機に、傾向や時代性、作家の問題意識の変化を議論することは、過去を整理して文脈化しつつ、新たな作品展開の可能性を広げる上でも重要だと感じた。

 今回のトークのテーマは「制作への意識—かたちに込めた思い」である。参加したのは、20代から40歳ほどまでの作家たち。1978年生まれの塩谷良太さんと、惣田司さん、1990年生まれの橋本知成さん、1995年生まれの伴和憲さん、1987年生まれの古井晶子さん、1995年生まれのヨバナ・チャボロビッチさんの6人である。

 最初に発言した塩谷さんは、土が焼成して焼き物になる制作過程での行為の痕跡、現象を「仕組み」という言葉で語り、それと自身の意識との関わりから生まれるリアリティーを観客の中に生み出す作品を目指している。

塩谷良太
塩谷良太

 トークでは、以前の「クリップ」のシリーズや、2015年以降、制作している「物腰」について説明した。「物腰」は、土がひしゃげたような肉塊を連想させる形態。現在は、ろくろを使い、亀板をスライドさせたり斜めにしたりして、揺らぎをつくり、自然な膨らみの中に動感を生み出している。工芸的な意識が強い一方で、形態に合う質感、色彩で表面を装飾。台座も自作し、鑑賞者が周囲を巡りながら見るという多視点的な鑑賞を前提にするなど、彫刻やインスタレーションへの意識があることにも注目したい。

惣田司

 惣田さんは、磁器による鋳込みと透かし彫りによって、風に揺れる木漏れ日、光と影にインスピレーションを受けた作品を展開している。形はスケッチせずに、頭の中のイメージを直感的に創作。薄い曲面が入り組んだ複雑な形態ながら、穿たれた空隙から光が通り抜け、曲面の柔らかな陰影と相まって繊細で浮遊感のある作品を立ち上げている。樹脂で作るような形態を磁器素材を使って釉薬でつなげていく方法論が面白い。

橋本知成
橋本知成

 橋本さんは、大物づくりができる信楽の窯で制作している球体や直方体、立方体などプライマリーな形態の大型作品を展示。手捻り、焼成という陶芸の基本的なプロセスから、幾何学的な形態の表面に焼け焦げた荒々しくもナチュラルな変容の相を刻印させている。こうした気配を生み出す経過は、作者にとって自己と向き合う時間であって、急激な時代の変化の中で生きる自身にとって、世界観を問い直す内省の機会となっているようである。

伴和憲

 伴さんは、地元の名古屋芸大を卒業後、多治見市陶磁器意匠研究所を修了。バイオモルフィックな形だが、しっかり整形されたV字構造の間にプリミティブな突起状の形態が自然発生的にひしめく対比がユニークである。作者によると、土の魅力を引き出すように創作した、自身の分身でもある作品には、本能と理性の葛藤、拮抗が具現化されている。

古井晶子

 古井さんは、愛知教育大で中島晴美さんの指導の下、陶芸を学んだ。円弧になった紐状の土の断片が複雑に絡まりながら水平方向、上方に拡張する形態が独特である。紐状の土の集積が器形から延び広がり、次第に自身を支持体に自在さを獲得しつつある。作者自身が身体感覚を意識するようになったというように、より伸びやかにダイナミックな動きを持つようになると面白いのではないか。

ヨバナ・チャボロビッチ

 セルビア出身のヨバナ・チャボロビッチさんは、母国でテキスタイルを学んだ後、陶芸に進み、現在は多治見市陶磁器意匠研究所で制作している。セルビアの森にインスパイアされたといい、現在の作品は、磁器の板を球状にした形態が基本。銀彩と上絵の転写紙で装飾されている。サナギをモチーフに、内部に孕まれた変化を焼成過程に象徴的に重ねながら、創作。重力の作用も利用しながら形態のイメージを膨らませている。

 いずれの作家も可塑性のある土の性質を引き出しながら、さまざまな手法で形態を作りつつ、そこに自身の意識、身体性を交感させるように思いを溶け込ませている。

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