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『パリ13区』4月22日 ミッドランドスクエア シネマ(名古屋)など全国公開

©ShannaBesson ©PAGE 114 – France 2 Cinéma

鬼才ジャック・オディアール× 気鋭セリーヌ・シアマ

 カンヌ国際映画祭パルムドール受賞『ディーパンの闘い』、グランプリ受賞『預言者』などで知られるフランスの鬼才、ジャック・オディアール監督待望の最新作『パリ13区』が2022年4月22日、全国公開される。

 つながるのは簡単なのに愛し合うのはむずかしい——。自分らしい生き方を求め、現代のパリを彷徨う多国籍の20代、30代の男女4人の日常をみずみずしいモノクロ映像で描く群像劇である。

 中部地方では、名古屋・ミッドランドスクエア シネマMOVIX三好などで公開される。 

 オディアール監督は、『燃ゆる女の肖像』で脚光を浴びたセリーヌ・シアマ監督、若手注目監督・脚本家レア・ミシウスと共同で脚本を手がけ、大胆さと繊細さを併せ持つ女性のまなざし、洗練されたモノクロの映像美で“新しいパリ”の物語を描きだした。

 フランス映画界屈指の世代を超えたコラボレーションは大きな話題を呼び、作品はセザール賞で5部門にノミネートされた。

 2021年、第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で披露されると、今を物語るミレニアル世代(20代半ばから30代)の感性と斬新な映像美が注目された。

 物語の舞台となるパリ13区は、高層住宅が連なる再開発地区で、アジア系移民も多く暮らす。古都のイメージとは異なる活気に満ちた現代のパリを象徴するエリアだ。

 原作は今、最注目の北米のグラフィック・ノベリスト、エイドリアン・トミネの3つの短編。

 エリック・ロメール『モード家の一夜』での男女の駆け引きや、『マンハッタン』でウディ・アレンが捉えた魅力的な都市の情景にオマージュを捧げながら、オディアール監督は2021年の13区で愛の在り方について問う。

物語

 コールセンターでオペレーターとして働く台湾系フランス人女性、エミリーのもとに、ルームシェアを希望するアフリカ系フランス人の高校教師カミーユが訪れる。二人は即セックスする仲になるものの、ルームメイト以上の関係になることはない。

 同じ頃、法律を学ぶためソルボンヌ大学に復学したノラは、年下のクラスメートに溶け込めずにいた。

 金髪ウィッグをかぶり、学生の企画するパーティーに参加した夜をきっかけに、元ポルノスターでカムガール(ウェブカメラを使ったセックスワーカー)の“アンバー・スウィート”本人と勘違いされ、学内中の冷やかしの対象となってしまう。

 大学を追われたノラは、教師を辞めて一時的に不動産会社に勤めるカミーユの同僚となって…。

短評

 欧州の移民問題を扱い、カンヌで最高賞パルムドールを獲得したオディアール監督の『ディーパンの闘い』(2015年)は、思いもよらぬ展開に驚いたが、この作品もかなりの異色作である。

 テンポ良く物語は展開。男女4人それぞれの仕事や家族、愛と性を描きながら、エミリーとカミーユ、ノラとアンバー・スウィート、カミーユとノラの物語がつながっていく。

 エイドリアン・トミネによる3つの短編を再構築して、1つの物語にしている。最初はオムニバス風に見えたが、見終わってみると、よくまとまっている。

 多国籍のパリの新興エリアで紡がれるスタイリッシュな映像、個性豊かな俳優陣も見もの。奔放な人間関係、生々しく官能的な性描写にはドキリとさせられる。

 男女4人は未来に展望がわるわけではなく、それぞれに心の空洞、生きづらさを抱えている。拠り所なく、互いにつながりを求めながらも強がり、うまく生きられない不器用な若者たち。

 思いがすれ違い、自分で自分が分からないもどかしさが伝わってくる。わがまま、気ままで危なっかしいが、人のよさ、純粋さもあって憎めない。

 デジタルネイティブ世代が求めているのも、やはり温かい肌触りなのだろう。 

監督・脚本 ジャック・オディアール

 1952年4月30日フランス、パリ出身。1994年、『天使が隣で眠る夜』で監督デビュー。『預言者』(09)でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞、マリオン・コティヤール主演『君と歩く世界』(12)ではゴールデン・グローブ賞外国語映画賞と主演女優賞にノミネートされた。続く『ディーパンの闘い』(15)で、コーエン兄弟、グザヴィエ・ドランら審査員たちの満場一致でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞を果たし、『ゴールデン・リバー』(18)ではセザール賞4冠、リュミエール賞3冠、ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞に輝いた。

共同脚本 セリーヌ・シアマ

 1978年11月12日、フランス、ヴァル=ドワーズ出身。2007年に初の長編監督映画『水の中のつぼみ』で、カンヌ国際映画祭ある視点部門に出品、セザール賞3部門にノミネート。『トムボーイ』(11)でベルリン国際映画祭でテディ賞審査員特別賞を受賞。『Girlhood』(14)はカンヌ国際映画祭監督週間でオープニングを飾り、セザール賞4部門にノミネート。また、脚本で参加したアニメ作品『ぼくの名前はズッキーニ』(16)はセザール賞で脚色賞を受賞。2019年、『燃ゆる女の肖像』でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞、また女性監督として初めてクィア・パルム賞を受賞したほか、世界中の40を超える映画賞に輝く。最新作『Petite Maman』(21)は第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された。

共同脚本 レア・ミシウス

 1989年4月4日、フランス、ボルドー出身。最初の短編『Cadavre exquis』(13)は、クレルモン=フェラン短編映画祭でSACD賞を受賞。続く短編『Les oiseaux-tonnerre』(14)はカンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門に出品、『パリ13区』の撮影監督も手掛けたポール・ギロームとの共同監督作『L’île jaune』(16)も各国の映画祭で高く評価された。初の長編映画となる『アヴァ』(17)はカンヌ国際映画祭カメラ・ドールを含む4部門にノミネート。監督最新作に、『アデル、ブルーは熱い色』(13) のアデル・エグザルコプロスを主演に迎えた『Les cinq diables』がある。

原作 エイドリアン・トミネ

 1974年、米国カリフォルニア生まれ。日系アメリカ人四世のグラフィック・ノベル作家。ニューヨーカー誌のカバーイラストや、WEEZER、Yo La Tengoといったミュージシャンのアートワークで知られる。自伝的物語を描いた最新作はA24とアリ・アスター製作でのアニメ化が進んでいる。『パリ13区』の物語の下敷きとなったのは3つの短編。ポルノ女優にそっくりなことで悩む女性を描いた「アンバー・スウィート」、コメディアンを目指す口下手で吃音の少女と家族の物語「キリング・アンド・ダイング」(「キリング・アンド・ダイング」収録)。オペレーターをクビになり、気晴らしのいたずらを始める「バカンスはハワイへ」(「サマーブロンド」収録)。

2021 年/フランス/仏語・中国語/105 分/モノクロ・カラー/4K 1.85 ビスタ/5.1ch/原題 Les Olympiades 英題:Paris, 13th District/日本語字幕:丸山垂穂/R18+
©PAGE 114 – France 2 Cinéma
提供:松竹、ロングライド
配給:ロングライド

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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