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川端健太郎 多治見市陶磁器意匠研究所

  • 2020年10月12日
  • 2020年10月13日
  • 工芸

多治見市陶磁器意匠研究所(岐阜県) 2020年9月12日〜10月18日

川端健太郎 多治見市陶磁器意匠研究所

川端健太郎

 川端健太郎さんは1976年、埼玉県生まれ。2000年に多治見市陶磁器意匠研究所を修了している。

 とても早くから注目されている作家である。2000年代の初め頃から、よく知り合いの学芸員などから名前を聞いた。折に触れ、作品を見る機会もあった。

 パラミタ陶芸大賞展大賞をはじめ、数々の受賞歴があるし、陶芸系の美術館でのテーマ展などにもよくピックアップされている。

川端健太郎

 理由は、オリジナリティーだろう。筆者は陶芸の専門家ではないが、現代美術と現代陶芸の交わるあたりを模索するうちに陶芸も見るようなった。その中で、川端さんは、現代陶芸の可能性を広げた1人であった。

 私たち鑑賞する側からすると、作品を見て、一目で作家のアイデンティティーがつかめるというのはとても強い。川端さんには、それがある。

川端健太郎

 多治見市陶磁器意匠研究所の中島晴美所長が、本展のチラシに書いた「第一線で戦う芸術家である」「強烈な個性で若い研究生の魂を揺さぶってくれる」という言葉は的を射ている。

川端健太郎

 川端さんの作品を見て思い浮かんだ言葉は、「美しきグロテスク」。工芸と現代美術を峻別する気はないが、川端さんはとてもアート的である。同時に川端さんは陶芸(工芸)的でもある。

 筆者にとって、ものすごく大まかに言えば、アート的とは、1つにコンセプト優先であること、2つめに発想が自由であること。川端さんの作品は2つめの意味、すなわち、とても自由であるという意味でアート的である。

 筆者にとって、陶芸的、工芸的とは、制作プロセスと素材への意識の強度があるということである。

川端健太郎

つまり、川端さんがアート的かつ陶芸的であるとは、表現がこのうえなく自由であると同時に陶芸の制作プロセス、素材にとても敏感であるということである。

 そして、こだわりは、とても強いが、さりげない人である。

 多治見市文化工房ギャラリーヴォイスで2020年10月4日〜11月29日に開かれている「牛田コレクション作品と作家の現在」展にも川端さんの作品が出品されていて、そのオープニングのシンポジウムで、川端さんが登壇した。

川端健太郎

 多くは語らなかったが、作品が他者とのコミュニケーションの役割も果たしていると述べたのがとても印象に残った。

 筆者は、川端さんにインタビューしたことがない。作品の制作方法については、2020年9月28日の中日新聞夕刊に掲載された多治見市陶磁器意匠研究所の副所長、前田剛さんの連載「やきものnote」に掲載された川端健太郎さんの紹介記事に多くを負っている。

川端健太郎

 この記事で、前田さんも、川端さんのことを「川端の独自性を羨む作家は多い」と書いている。

 川端さんの作品は、装飾的であるなどと評されるが、筆者は、確かにそうなのだけど、装飾的というよりは、むしろ、全体に対して部分が豊かで細部のつくりが精妙、複雑なのだと思う。作品は、時に海洋生物のように見え、それぞれの部分が体の器官のように思える。

 前田さんの記事によると、川端さんは、繊細な細工が得意で、有機的な造形が多い。貝のような巻き込み、しわやひだ、生物の口、足、顔に見えるものが付いている。

川端健太郎

 有機的、生命的、植物的な形態の陶芸作品は、これまでの現代陶芸にもあったが、川端さんの作品は、ディテールの細工が生々しく、また粘膜のような質感もあって、とてもエロティックに見える。

 ガラス片を粘土の素地に埋め込み、それに釉薬をかけて焼成することで、溶けたガラスの流れと釉薬が絡み合い(絡み合うけど、濁らせない)、妖艶、豊潤な色彩で覆う。

 さらに、前田さんによると、川端さんの作品は、幻想的な外観であっても、実用性を意識した作品が多いという。

川端健太郎

  筆者は、こうした川端さんの作品に、生命活動の循環、生物器官の生成変化の印象を強くもつ。作品全体が生命の体とすると、部分が生命のリズムを刻む器官に見えるのである。

川端健太郎

 そして、全体ががっしりとした強度と構成を持っていたとしても、部分に目を転じると、女性的で、柔らかく、コケティッシュな感じがし、色彩も艶かしい。

 そうしたうごめくように変化する部分と全体とを行き来するように、作品を眺めると、その1つの作品がとても多様で豊かなものに思える。

川端健太郎

 だからだろう、川端さんの作品は、従前の陶芸の枠組みを超えるように、スリルとエロスを感じさせる。

 川端さんの作品は、もちろん、川端さんが造形したのだが、不思議なことに、生命的に自己生成し、今なお変化の途上にあるようにさえ見える。

 とても、個性的な作品群である。

川端健太郎
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