anonymous studio(名古屋) 2025年2025 年8月22日〜10月12 日
金・土・日
秋吉風人
秋吉風人さんは1977年、大阪府生まれ。名古屋芸術大学大学院美術研究科修了。国内では主にTARO NASU (東京)で個展を開いている。
グループ展は、「あいちトリエンナーレ 2010」、「絵画の庭─ゼロ年代日本の地平から」 (2010年、国立国際美術館)、「全館コレクション企画 アイチアートクロニクル1919-2019」(2019年、愛知県美術館)、「開館30周年記念コレクション展 VISION 星と星図 | 星図 Ⅰ : 社会と、世界と」(2025年、豊田市美術館)など。

anonymous studio 2025年
絵画概念を探求する作品を展開してきた作家である。今回は、金の絵具で空間が構成された《Room》シリーズ。10年ぶりに制作された同シリーズの新作である。
個々の作品は、45.5×53.0センチの同一サイズで、計12点。等間隔で横一線にきれいに展示されている。
秋吉さんは、色というよりも光を反射する金属光沢である金色を使い、均質に塗りながらも、微妙な筆跡と繊細な濃淡、グラデーションによる光沢表現によって、「部屋のような、何もない空間」と「抽象画」を両立させている。

いわば、遠近法によって、閉じた矩形の世界に設けられた絵画空間と、ラメなどの偏光素材の混ざった金色で均質に塗られた板であるような平面性との間で揺らぐような、ギリギリの描き方をしている。
anonymous studioの空間のために構想されたといい、それゆえ、モノクロームでミニマルな平面を配列したインスタレーションだとも言える。
そして、その一方で、微かな筆触と濃淡、グラデーション、空間的なイメージ、すなわち絵画的な表現を極少的に残しているのだともいえる。
地に対する形象がなく、金一色であるミニマルアートのような表面がそのまま「部屋」の空間になっているという、特異な到達点によって、絵画の平面性、奥行き、地と図、レイヤー、色彩などの絵画の形式を相対化させている。

こうしたことが可能になったのは、金色がいわゆる「色」ではなく、金属的な視覚効果であることが大きい。
個々の画面の均質性によって、それぞれのオリジナリティは限界まで排除しつつ、わずかな差異による連鎖によって、それらが反復されることで、新たな空間を生成させている。