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《国立西洋美術館》

☆モネ 睡蓮のとき 2024年10月5日〜2025年2月11日
印象派を代表する画家のひとりとして親しまれる、クロード・モネ。その晩年の制作に焦点をあてた本展では、マルモッタン・モネ美術館の珠玉のコレクションおよそ50点に加え、日本国内に所蔵される名品の数々から、“印象派を超えた”モネの芸術の豊かな展開をたどる。なかでも注目なのは、〈睡蓮〉の大画面に取り囲まれ、たゆたう水と一体になるかのような展示空間。画家が長い道のりの果てにたどり着いた境地である。
☆小企画展 オーガスタス・ジョンとその時代—松方コレクションから見た近代イギリス美術 2024年10月5日~2025年2月11日
ラファエル前派の系譜、あるいは唯美主義や象徴主義などとの関係から紹介されることの多い世紀転換期のイギリス美術であるが、フランスの近代絵画の発展に触発されつつ、若い画家たちが新たな制作環境を生み出そうと模索したさまざまな動きが起きている。画壇を統べるロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに対抗して1886年に設立されたニュー・イングリッシュ・アート・クラブ、その保守化に対して1911年に結成されたカムデン・タウン・グループ、あるいはコーンウォールの漁村に芸術家コロニーを形成したニューリン派。そこには、印象派やポスト印象派に対する応答、そしてロンドンの急速な都市化や工業化とこれに対する反動を見ることができる。オーガスタス・ジョン(1878-1961)はこうした動きと交差しつつ、イギリス画壇で独自の位置を占めたウェールズ出身の画家。卓越したデッサン力と大胆な色彩、さらにボヘミアン的生活から着想した題材などによって、第一次世界大戦前には、最も革新的な画家として若い芸術家たちの注目と期待を集める。また、素描の名手として知られ、繊細な線でモデルの特徴を的確にとらえた肖像素描や、時にユーモラスともいえる素朴で空想的な習作などを残した。20世紀後半には急速に忘れられるが、イギリス最初のポスト印象派に数えられている。1916-1918年のロンドン滞在中に美術品収集を始めた松方幸次郎(1866-1950)のコレクションには、こうした画家たちの作品が多数含まれていた。本小企画では、松方コレクションより、オーガスタス・ジョンの初期の素描を中心に、同時代の画家たちの素描や版画、油彩画も加えた展示をおこない、世紀転換期イギリスの多彩な芸術動向や人的ネットワークの広がりに光をあてる。
☆西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館 2025年3月11日~6月8日⇨公式サイト
サンディエゴ美術館と国立西洋美術館の所蔵品計88点を組み合わせ、作品をどのように見ると楽しめるかという観点から、鑑賞のヒントを提案する。サンディエゴ美術館から出品されるジョルジョーネやサンチェス・コターンなど、世界に冠たる傑作を含む49点はいずれも日本初公開。
☆ピカソの人物画 2025年6月28日〜10月5日
20世紀美術の巨匠パブロ・ピカソ(1881-1973年)は、何よりも「人」を描いた画家と言言える。彼は、生と死、戦争と平和、愛と欲望といった私たちを取り巻くあらゆるテーマや感情に向き合い、強い存在感を放つ人間像を生み出し続けた。本展は、ピカソの人物画に焦点を当てることで、この芸術家の核心に迫る。ピカソは、母国スペインの美術学校における写生デッサンの訓練を通して、人体を正確に把握し再現するための基礎を築いた。独学で学んだカリカチュアの手法は、ピカソの人物像におけるユーモラスな誇張や単純化、デフォルメの表現に生かされた。一方、キュビスムの発明は、理想的な人体美の伝統を根底から覆し、人物画を新たな造形実験のための場へと転換させた。ピカソの人物画の主題は、初期には社会から疎外された人々、両大戦間には古典古代、晩年には「画家とモデル」など多岐に及ぶが、生涯にわたり中心的な位置を占めたのは肖像画である。それらの多くは従来のような注文制作ではなく、家族や友人、恋人たちを自由に描いたものだった。ピカソはとりわけ、最も身近な存在であった女性たちを、技法やスタイルを変えながら何度も取り上げている。そして1枚の絵には集約できない一人の人物の多面性や彼女らに向けられた自身の変化する感情を、一連の肖像画を通して表現した。本展は、近年多数の寄託作品により拡充された同館のピカソ・コレクションをまとめて紹介するまたとない機会。さらに国内の美術館のご所蔵品若干数を加えた絵画、素描、版画、資料など合計34点を通して、画家の青年期から晩年に至る人物画の表現と主題、その革新性と多様性を紹介する。
☆スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで 2025年7月1日〜9月28日⇨公式サイト
スウェーデンの首都ストックホルムにあるスウェーデン国立美術館は、同国王家が収集した美術品を基盤にする、世界で最も古い美術館のうちの一つ。なかでも同館の素描コレクションは、世界規模でみても質、量ともに充実したコレクションとして知られている。この度、その素描コレクションより、ルネサンスからバロックまでの名品を選りすぐって紹介する展覧会を開催する。素描は環境の変化や光、振動の影響を受けやすいため、通常、海外で所蔵されている素描作品を日本で公開することは難しく、世界最高峰であるスウェーデン国立美術館の素描コレクションが約80点もまとまって来日するのはこれが初めての機会となる。デューラーやルーベンス、レンブラントら巨匠の作品をはじめ、芸術家の技量と構想力のすべてが注ぎ込まれている素描の魅力を、存分に堪能できる。
☆オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語 2025年10月25日~2026年2月15日⇒公式サイト
印象派といえば、戸外の風景を移ろう光とともにとらえた絵画がまず思い浮かぶのではないだろうか。とはいえ、彼らの最初のグループ展が開かれたのは、1870年代の近代都市パリ。室内を舞台とした作品も多く描かれ、とりわけドガは室内における鋭い人物表現にこそ本領を発揮し、ルノワールも親密な雰囲気に浸された室内画を得意としていた。印象派の画家たちがもともと私邸の壁面装飾として描いた作品も少なくない。印象派と室内は思いのほか深い関係を結んでいたのだ。本展では、「印象派の殿堂」ともいわれるパリ・オルセー美術館所蔵の傑作68点を中心に、国内の重要作品も加えた約100点により、室内をめぐる印象派の画家たちの関心のありかや表現上の挑戦をたどる。オルセー美術館の印象派コレクションがこの規模で来日するのはおよそ10年ぶり。新鮮な視点から印象派の魅力を実感できる貴重な機会となる。
☆小企画展 物語る黒線たち――デューラー「三大書物」の木版画 2025年10月25日〜2026年2月15日
☆フルーニング美術館・国立西洋美術館所蔵 フランドル聖人伝板絵―100年越しの“再会” 2025年10月25日〜2026年5月10日
《東京国立近代美術館》

☆コレクションによる小企画 フェミニズムと映像表現 2025年2月11日〜6月15日
1960年代から70年代にかけて、テレビの普及やヴィデオ・カメラの登場によってメディア環境が急速に変化すると、作家たちは新しいテクノロジーを自らの表現に取り入れはじめた。同じ頃、世界各地に社会運動が広がり、アメリカでは公民権運動、ベトナム反戦運動などの抗議活動が展開される。そのなかでフェミニズムも大衆的な運動となり、男性優位の社会構造に疑問を投げかけ、職場や家庭での平等を求める女性が増えた。この状況は、女性アーティストたちが抱いていた問題意識を社会に発信することを促した。主題や形式の決まっている絵画などに比べると、ヴィデオは比較的自由で未開拓な分野だったため、社会的慣習やマスメディアの一方的な表象に対する抵抗を示すことにも有効だった。前会期から続くこの小企画では、作品の一部を入れ替えて、上記の時代背景を起点とする1970年代から現代までの映像表現を紹介。
☆所蔵作品展 MOMATコレクション 2025年2月11日〜6月15日
「シュルレアリスム100年」では、20世紀芸術における最大の動向を、国内外の作品でたどる。前期は春の花を描いた作品を集めた「春まつり」、後期は細密描写によって見えるものの先に迫った日本画家の作品も。
☆ヒルマ・アフ・クリント展 2025年3月4日〜6月15日
抽象絵画の先駆者、ヒルマ・アフ・クリント(1862-1944)のアジア初となる大回顧展。スウェーデン出身の画家ヒルマ・アフ・クリントは、ワシリー・カンディンスキーやピエト・モンドリアンら同時代のアーティストに先駆け、抽象絵画を創案した画家として近年再評価が高まっている。彼女の残した 1,000点を超える作品群は、長らく限られた人々に知られるばかりだった。1980年代以降、ようやくいくつかの展覧会で紹介が始まり、21世紀に入ると、その存在は一挙に世界的なものとなった。2018年にグッゲンハイム美術館(アメリカ、NY)で開催された回顧展は同館史上最多となる60万人もの動員を記録した。本展では、高さ3mを超える10点組の絵画《10の最大物》(1907年)をはじめ、すべて初来日となる作品約140点が出品される。代表的作品群「神殿のための絵画」を中心に、画家が残した資料や、同時代の神秘主義思想や女性運動といった多様な制作の源の紹介をまじえ、その画業の全貌を見ることができる。
☆コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ 2025年7月15日〜10月26日
「昭和100 年」にあたり、なおかつ「戦後80 年」を迎える2025 年という節目の年に、コレクションとアーカイブ資料を駆使することで美術に堆積した記憶を読み解きながら、多様な視点で歴史に迫る美術館の可能性を探る。
☆コレクションによる小企画 新収蔵&特別公開 コレクションにみる日韓 2025年7月15日〜10月26日
☆所蔵作品展 MOMATコレクション 2025年7月15日〜10月26日
☆アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦 2025年12月16日〜2026年2月8日
1950年代から60年代にかけて、日本では女性美術家が前衛美術の領域で注目を集めた。後押ししたのは海外から流入した芸術運動「アンフォルメル(非定形)」だったが、次いで「アクション・ペインティング」という様式概念が導入されると、女性画家たちは如実に批評対象から姿を消していくことになった。豪快さや力強さといった、男性性と親密な「アクション」の概念によって、伝統的なジェンダー秩序の揺り戻しが生じたからだ。本展は、中嶋泉『アンチ・アクション─日本戦後絵画と女性画家』(2019年)で開示された視座を基軸に、日本の近現代美術史の再解釈を試みる企画。ジェンダー研究の観点から美術史の読み直しを図る『アンチ・アクション』の見地を踏まえ、同書で取り上げられた草間彌生、田中敦子、福島秀子の三人をはじめ、これまで中心的に語られにくかったアーティストたちの活動に迫る。今日の美術史研究の成果を広く紹介するととともに、作品の評価というものを考える視点を提供する。
《東京国立博物館》

☆Hello Kitty展―わたしが変わるとキティも変わる― 2024年11月1日~ 2025年2月24日
☆開創1150年記念 特別展「旧嵯峨御所 大覚寺―百花繚乱 御所ゆかりの絵画―」 2025年1月21日~ 2025年3月16日
京都西北に位置する嵯峨野は、古くより風光明媚な王朝貴族の遊覧の地として愛されてきた。平安時代初期に、嵯峨天皇(786-842)はこの地に離宮・嵯峨院を造営し、空海(774-835)の勧めで持仏堂に五大明王像を安置する。その後、貞観18年(876)に皇女・正子内親王が寺に改め、大覚寺が開創された。来たる令和8年(2026)に開創1150年を迎えるのに先立ち、優れた寺宝の数々を東京国立博物館で一挙に紹介する。なかでも、寺内の中央に位置する宸殿は元和6年(1620)に後水尾天皇へ入内した東福門院和子の女御御所を移築したものと伝えられており、内部を飾る襖絵や障子絵などの障壁画は、安土桃山~江戸時代を代表する画家・狩野山楽(1559-1635)の代表作として一括して重要文化財に指定されている。本展ではこれら100面を超える障壁画のほか、信仰の歴史を跡付ける歴代天皇による書の数々や、平安時代後期の仏像を代表する明円作「五大明王像」ほか、密教美術の名品も公開する。
☆イマーシブシアター 新ジャポニズム ~縄文から浮世絵 そしてアニメへ 2025年3月25日~ 8月3日
はるか1万年以上前から、日本の風土の中で、独自の美意識が受け継がれてきた。縄文土器、はにわ、絵巻、鎧兜、浮世絵、さらには世界で人気のアニメまで。NHKの高精細映像と技術を結集したイマーシブシアター「新ジャポニズム」。東京国立博物館所蔵の国宝や重要文化財を中心にした日本文化のタイムトラベルが楽しめる。
☆特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」 2025年4月22日~6月15日⇨公式サイト
江戸時代の傑出した出版業者である蔦重こと蔦屋重三郎(1750~97)は、喜多川歌麿、東洲斎写楽といった現代では世界的芸術家とみなされる浮世絵師を世に出したことで知られている。本展ではその蔦重の活動をつぶさにみつめながら、天明、寛政(1781~1801)期を中心に江戸の多彩な文化を紹介する。蔦重は江戸の遊郭や歌舞伎を背景にしながら、狂歌の隆盛に合わせて、狂歌師や戯作者とも親交を深めるなど、武家や富裕な町民、人気役者、人気戯作者、人気絵師のネットワークを縦横無尽に広げて、さまざまな分野を結びつけながら、さながらメディアミックスによって、出版業界にさまざまな新機軸を打ち出す。蔦重はその商才を活かして、コンテンツ・ビジネスを際限なく革新し続けた。そこに根差したものは徹底的なユーザー(消費者)の視点であり、人々が楽しむもの、面白いものを追い求めたバイタリティーにあるといえる。この展覧会では、蔦屋重三郎を主人公とした2025年の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)とも連携し、江戸の街の様相とともに、蔦重の出版活動をさまざまに紹介。蔦重が江戸時代後期の出版文化の一翼を担っていただけでなく、彼が創出した価値観や芸術性がいかなるものであったかを体感させる。
☆浮世絵現代 2025年4月22日~2025年6月15日
日本の木版画の技術は、江戸時代の文化の中で独自に発展し、浮世絵という力強く華やかな芸術を生み出した。「浮世」という言葉には「当世風の」という意味があり、浮世絵 版画はまさにその時代と社会を色鮮やかに映し出すメディアだった。写楽や歌麿、北斎の浮世絵を生み出したこの高度な木版画の技術は、途切れることなく、現代まで職人たちに受け継がれている。山桜の版木を使い、和紙に墨と水性の絵具で摺り上げることで生まれるシャープな線や軽やかな色彩は、唯一無二。伝統の技術は、同時代の人々の心をとらえる作品を生み出し続けることで、さらに次代へと継承されていく。伝統木版画の表現に魅了された様々なジャンルのアーティスト、デザイナー、クリエーターたちが、現代の絵師となり、アダチ版画研究所の彫師・摺師たちと協働して制作した「現代」の「浮世絵」を紹介する。総勢約80名のアーティストたちの木版画を通じて、現代から未来につづく伝統の可能性を堪能できる。
☆特別展「江戸☆大奥」 2025年7月19日~9月21日⇨公式サイト
大奥ときくと、選ばれた女性たちが、豪華絢爛で美麗を尽くした衣装をまとい、優雅に暮らす様子を思い浮かべるだろう。しかし、厳格な制度としきたりの中、将軍の世継ぎを生み育て上げるというプレッシャーの中での生活は、想像するような華やかで美しいものではなかったはず。歴代の御台所と、それを支える御殿女中の歴史をたどると、時にその権勢を振るい、時に締め付けに遭いながら生きていた女性たちの栄枯盛衰がみえてくる。その一方で、彼女たちは閉ざされた生活の中でも喜怒哀楽を享受してきた。いわば江戸時代の裏歴史ともいえる、大奥の歴史と文化を、その虚実を通して紹介する。
☆特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」 2025年9月9日~11月30日⇨興福寺公式サイト
奈良の興福寺の北円堂は、鎌倉時代を代表する仏師・運慶の仏像が安置される空間をそのまま伝える貴重な例として知られている。本尊の弥勒如来坐像と、両脇に控える無著・世親菩薩立像は、運慶晩年の傑作である。北円堂は通常非公開だが、弥勒如来坐像の修理完成を記念し、約60年ぶりの寺外公開が決まった。本展では、弥勒如来坐像、無著・世親菩薩立像と、かつて北円堂に安置されていたとされる四天王立像の合計7軀の国宝仏を一堂に展示することで、鎌倉復興当時の北円堂内陣の再現を試みる。
《国立新美術館》
☆リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s‒1970s 2025年3月19日~6月30日
1920年代以降 、ル・コルビュジエ(1887-1965 年)やミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969年)といった多くの建築家が、時代とともに普及した新たな技術を用いて、機能的で快適な住まいを探求した。その実験的なヴィジョンと革新的なアイデアは、やがて日常へと波及し、人々の暮らしを大きく変えていった。本展覧会は、当代の暮らしを根本から問い直し、快適性や機能性、そして芸術性の向上を目指した建築家たちが設計した、戸建ての住宅をご紹介するもの。1920年代から 70年代にかけて建てられたモダン・ハウスは、国際的に隆盛したモダニズム建築の造形に呼応しつつも、時代や地域、気候風土、社会とも密接につながり、家族の属性や住まい手の個性をも色濃く反映している。理想の生活を追い求めた建築家たちによる暮らしの革新は、それぞれの住宅に固有の文脈と切り離せない関係にある。一方、それらの住宅は、近代において浮上してきた普遍的な課題を解決するものでもあった。身体的な清潔さを保証する衛生設備、光や風を取り込む開放的なガラス窓、家事労働を軽減するキッチン、暮らしを明快に彩る椅子や照明などの調度、そして住まいに取り込まれた豊かなランドスケープは、20世紀に入り、住宅建築のあり方を決定づける重要な要素となった。そして、こうした新しい住まいのイメージは、住宅展示や雑誌などを通じて視覚的に流布していった。本展覧会では、20世紀にはじまった住宅をめぐる革新的な試みを、衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープという、モダン・ハウスを特徴づける 7つの観点から再考。そして、特に力を入れてご紹介する傑作 15 邸を中心に、20世紀の住まいの実験を、写真や図面、スケッチ、模型、家具、テキスタイル、食器、雑誌やグラフィック、映像などを通じて多角的に検証する。今から 100年ほど前、実験的な試みとしてはじまった住まいのモダニティは、人々の日常へと浸透し、今なお、かたちを変えて息づいている。本展覧会は、今日の私たちの暮らしそのものを見つめ直す機会にもなる。
☆時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010 2025年9月3日~12月8日
昭和が終わり、平成の始まった1989年から2010年までに、日本でどのような美術が生まれ、日本からどのような表現が発信されたのか、本展は、国内外の50を超えるアーティストの実践を検証。この20年間は、冷戦体制が終わり、人、ものが行き来するグローバル化の始まりによって、国際的な対話が大いに促進された時期。同館はアジア地域におけるパートナー美術館、香港のM+との協働キュレーションにより変化に富んだ時代を見つめなおす。本展は、80年代初頭以降の国際化の胎動を扱うプロローグに始まり、続くイントロダクションでは、日本社会が大きな転機を迎えるなか1989年を転換点として登場した、新しい批評性を持つ表現を紹介する。そして、以降の時代を3章のテーマに基づくレンズを通して見つめていきます。1章「過去という亡霊」では戦争、被爆のトラウマ、戦後問題に向き合い続ける探求を、2章「自己と他者と」では自他のまなざしの交換のなかでジェンダーや文化的アイデンティティを問う実践を、3章「コミュニティの持つ未来」では、既存のコミュニティとの関わりや新たな関係性の構築に可能性を探るプロジェクトを紹介していく。国内外のアーティストによる実験的挑戦は、時代、社会の動向をとりこむプリズムとなって、さまざまな問いかけを含んだ作品へと反射されていった。この20年間の日本というプラットフォームを国内外の双方向的視点で捉えながら、複数の歴史と文脈が共存する多元的な美術表現の姿を提示する。
☆ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧 2025年9月17日~12月15日
ローマのハイジュエラー、ブルガリ。その色彩を操る唯一無二の手腕に光を当てる「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」展は、日本におけるブルガリの展覧会としては10年ぶり、過去最大のスケールとなる。「美しい(カロス)」「形態 (エイドス)」を意味するギリシャ語にちなんだ展覧会タイトル「カレイドス」は、美と創造性が調和した、ダイナミックで変化し続ける色彩世界の旅を象徴する。ブルガリ・ヘリテージ・コレクションと貴重な個人コレクションから選び抜かれた色彩のマスターピースというべき約350点のジュエリーは、メゾンの始まりから現在までを跡付けつつ、イタリアと日本の深いつながりを浮き彫りにし、アートとデザインに対する両国共通の情熱や豊かな文化遺産を称える。3名の現代の女性アーティスト、森万里子、ララ・ファヴァレット、中山晃子が、それぞれ色彩についての考察に基づく作品を展示する。ハイジュエリー、ブルガリ・ヘリテージ・コレクションのクリエーション、現代アート、ブルガリ・ヒストリカル・アーカイブからの貴重な資料、そして没入型のインスタレーションが取り混ぜられた本展覧会は、さまざまな創造性と心を揺さぶる体験が次々と現れる万華鏡のような展覧会。
《国立科学博物館》
☆特別展 鳥 2024年11月2日〜2025年2月24日
☆企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」 2024年11月26日~2025年3月2日
貝類は、多くの貝塚に示されるように先史時代から人類の生活を支えてきた。そして、現代においてもなお、さまざまな形で人々の生活や文化を彩り続けている。それは無脊椎動物の1グループである貝類の生物学的な特性や多様性と関係している。
☆特別展「古代DNA―日本人のきた道―」 2025年3月15日~6月15日
遺跡から発掘された古代の人々の骨に残るごく僅かなDNAを解読し、人類の足跡をたどる古代DNA研究。近年では技術の発展とともに飛躍的な進化を遂げ、ホモ・サピエンスの歩んできた道のりが従来想像されていたよりもはるかに複雑であったことが分かってきた。本展では、日本各地の古人骨や考古資料、高精細の古人頭骨CG映像などによって、最新の研究で見えてきた遥かなる日本人のきた道と、集団の歴史が語る未来へのメッセージを伝える。
☆気象業務150周年企画展「地球を測る」 2025年3月25日~6月15日
《東京都現代美術館》

☆MOTアニュアル2024 こうふくのしま 2024年12月14日~2025年3月30日
清水 裕貴 / 川田 知志 / 臼井 良平 / 庄司 朝美
☆MOTコレクション 竹林之七妍/小さな光/開館30周年記念プレ企画 イケムラレイコ マーク・マンダース Rising Light/Frozen Moment 2024年12月14日〜2025年3月30日
☆坂本龍一 音を視る 時を聴く 2024年12月21日~2025年3月30日
音楽家・アーティスト、坂本龍一(1952-2023)の大型インスタレーション作品を包括的に紹介する、日本では初となる最大規模の個展。坂本は多彩な表現活動を通して、時代の先端を常に切り拓いてきた。2000年代以降は、さまざまなアーティストとの協働を通して、音を展示空間に立体的に設置する試みを積極的に思考/実践した。生前、坂本が本展のために構想した新作と、これまでの代表作を美術館内外の空間にダイナミックに構成・展開。クロニクル展示を加えることで、坂本の先駆的・実験的な創作活動の軌跡をたどる。
☆岡﨑乾二郎 2025年4月29日~7月21日
日本を代表する造形作家であるとともに、建築や環境文化圏計画、絵本、ロボット開発などの幅広い表現領域を手がけ、さらには文化全般にわたる批評家としても活躍してきた岡﨑乾二郎(1955-)の核心に迫る東京における初の大規模な展覧会。近年、国際的な評価も高まるこの作家が大きく転回した2021年以降の新作を中心に、過去の代表作も網羅しつつ、世界認識の方法としての造形の可能性と力を提示する。
☆MOT Plus ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ 2025年4月29日〜6月29日
ハン・ネフケンス財団はビデオアートに特化した非営利組織として2009年バルセロナに設立。世界各地の美術組織と連携してアーティストの制作支援を行っており、東京都現代美術館は2023年より連携事業を行っている。本年は、新規事業「MOT Plusプロジェクト」の一環として、同財団、当館、その他5つの美術館等とで2023年に設立された「南アジア・ビデオアート制作助成」の受賞者で、パキスタン拠点のアーティスト、シャハナ・ラジャニ(1987-)による新作を紹介する。
☆MOTコレクション 2025年4月29日〜7月21日
☆MOTコレクション 2025年8月2日〜11月24日
☆開館30周年記念展 2025年8月23日〜11月24日
開館30周年を記念する本事業は、より多様化するこれからの社会と人々にとっての美術館がどのような場であるのかを展望するプラットフォームとして、国内外の作家による大型展示を軸に多彩な取り組みを展開する。展示では、ある場所や空間がどのような力学で形作られ、変容するのか、またそれはどのように人々の生き方に影響するのかを、幅広い視点から探求する作品を紹介。また会期を通じて、若手アーティストらによるパフォーマンス、ワークショップ、ツアーなどのイベントを開催する。
☆笹本晃 ラボラトリー 2025年8月23日〜11月24日
自ら設計・構成した彫刻や装置をインスタレーション空間に配置し、それらをスコアのように用いて即興的なパフォーマンスを展開する作品で知られる笹本晃(1980-)にとって初めてミッドキャリアを回顧する個展。私小説的な語りをユーモラスに絡めながら深遠な問いを投げかける初期の代表作から、キネティックな要素が強まる最新作まで、約20年にわたり造形とパフォーマンスの関係を探究し、独自の実践を重ねてきた異才とその作品を、動的に検証。
☆TOKYO ART BOOK FAIR 2025 2025年12月11〜14日19〜21日
TOKYO ART BOOK FAIR 2025では、独創的なアートブックやZINE(自主制作出版物)を制作する国内外の出版社、ギャラリー、アーティストら出展者が会場である東京都現代美術館に集結し、それぞれの印刷物の魅力を直接のコミュニケーションをとおして来場者へと伝える。ひとつの国や地域の出版文化に焦点を当てる企画「Guest Country」や、老舗から新進気鋭の出版社、さまざまな分野で活躍するアーティストやデザイナーらを、展示やトークイベントをとおして紹介し、豊かな出版シーンを紐解く。
☆Tokyo Contemporary Art Award 2024-2026 受賞記念展 2025年12月25日〜2026年3月29日
東京都とトーキョーアーツアンドスペースが2018年に創設した海外での活動に意欲がある中堅アーティストが対象の「Tokyo Contemporary Art Award」。第5回の受賞者、梅田哲也(1980‐)と呉夏枝(1976‐)が受賞を経て制作した新作を中心に東京都現代美術館で展示。
☆MOTコレクション 2025年12月25日〜2026年3月29日
☆ミッション∞インフィニティ 2026年1月31日〜5月6日
「ミッション[宇宙×芸術]」展から10年を経て、国際量子科学技術年(2025年)にあわせ、量子の世界を含む「宇宙と芸術」の企画展を開催する。科学者による宇宙研究と、アーティストによる宇宙をテーマとした作品に加え、量子コンピュータによる世界初のアート作品など、多次元的な「時と空間」が不思議なふるまいを見せる「量子」領域に取り組む表現を紹介する。国内外の研究機関でのアーティスト・イン・レジデンス作品や歴史資料をとおして、創造的な発想のヒント=量子的思考を探る試みである。
《東京都美術館》

☆田中一村展 奄美の光 魂の絵画 2024年9月19日~12月1日
自らの芸術の探究に生涯を捧げた孤高の画家・田中一村(たなか・いっそん/1908-1977年)。本展は、神童と称された幼年期から、最晩年の奄美で描かれた作品まで、その全貌を紹介する大回顧展。世俗的な栄達から距離を置き、我が道を歩んで描き続けた一村の生涯は、「不屈の情熱の軌跡」といえるものだった。自然を主題とした、澄んだ光にあふれた絵画はその情熱の結晶であり、彼の魂の輝きをも宿しているかのようだ。本展では、近年の研究で発見された資料を多数含む構成により、この稀にみる画家の真の姿に迫る。
☆ミロ展 Joan Miró 2025年3月1日~7月6日⇨公式サイト
1893年にスペインのカタルーニャ州に生まれたジュアン・ミロ(1893~1983)は、同郷のピカソと並び20世紀を代表する巨匠に数えられる。太陽や星、月など自然の中にある形を象徴的な記号に変えて描いた、詩情あふれる独特な画風は日本でも高い人気を誇る。そんなミロの創作活動は、没後40年を迎えたいま、世界的に再評価されている。本展は、〈星座〉シリーズをはじめ、初期から晩年までの各時代を彩る絵画や陶芸、彫刻により、90歳まで新しい表現へ挑戦し続けたミロの芸術を包括的に紹介。世界中から集った選りすぐりの傑作の数々により、ミロの芸術の真髄を体感できる空前の大回顧展である。
☆都美セレクション グループ展 2025 2025年6月10日~7月2日
☆つくるよろこび生きるためのDIY 2025年7月24日〜10月8日
☆ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢 2025年9月12日~12月21日⇨公式サイト
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の作品は、今日までどのように伝えられてきたのか。本展は、ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリー・コレクションに焦点を当てる。フィンセントの画業を支え、その大部分の作品を保管していた弟テオは兄の死の半年後に生涯を閉じ、テオの妻ヨーが膨大なコレクションを管理することとなる。ヨーは義兄の作品を世に出すことに人生を捧げ、作品を展覧会に貸し出し、販売し、膨大な手紙を整理して出版するなど、画家として正しく評価されるよう奔走した。テオとヨーの息子フィンセント・ウィレムは、コレクションを散逸させないためにフィンセント・ファン・ゴッホ財団を設立し、美術館の開館に尽力。人びとの心を癒やす絵画に憧れ、100年後の人びとにも自らの絵が見られることを期待した画家の夢も、数々の作品とともにこうして今日まで引き継がれてきた。本展では、ファン・ゴッホ美術館の作品を中心に、ファン・ゴッホの作品30点以上に加え、日本初公開となるファン・ゴッホの貴重な手紙4通なども展示。現在のファン・ゴッホ美術館の活動も紹介しながら、本展をとおして、家族の受け継いできた画家の作品と夢を、さらに後世へと伝えてゆく。
☆東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき 2026年1月27日~4月12日
ヨーロッパ北部、スカンジナビア半島の中央に位置する国スウェーデン。本展は、スウェーデン美術黄金期の作品を本格的に紹介する国内で初めての試み。スウェーデンでは、若い世代の芸術家たちが1880年代からフランスで学び始め、人間や自然をありのままに表現するリアリズムに傾倒した。彼らはやがて故郷へ帰ると、自国のアイデンティティを示すべくスウェーデンらしい芸術の創造をめざし、自然や身近な人々、あるいは日常にひそむ輝きを、親密で情緒あふれる表現で描き出した。本展はスウェーデン国立美術館の全面協力のもと、19世紀末から20世紀にかけてのスウェーデンで生み出された魅力的な絵画をとおして、自然と共に豊かに生きる北欧ならではの感性に迫る。
《上野の森美術館》
☆VOCA展2025 現代美術の展望 —新しい平面の作家たち— 2025年3月15〜30日
☆五大浮世絵師展 歌麿 写楽 北斎 広重 国芳 2025年5月27日〜 7月6日
浮世絵が最も成熟し、黄金期と呼ばれた天明・寛政期。吉原風俗や市井の生活など艶やかな女性のしぐさや想いを写し一世を風靡した喜多川歌麿。繊細な感覚と事実を踏まえた独自のデフォルメで役者の演技の一瞬を劇的に捉えた役者絵を描いた謎の絵師、東洲斎写楽。《冨嶽三十六景》をはじめ、風景・花鳥・人物と森羅万象を描き続けた葛飾北斎。《東海道五十三次》や江戸名所など、江戸後期の浮世絵に新風を吹き込んだ風景画の歌川広重。豊かな発想力と斬新なデザインで武者絵の世界を切り抜き幕末・明治の浮世絵界をけん引するリーダーとなり、国内はもとより海外でも高い人気の歌川国芳。美人画、役者絵、風景画など各分野で浮世絵の頂点を極めた5人の絵師の代表作を中心に約140点を紹介する。
☆「正倉院 THE SHOW -感じる。いま、ここにある奇跡-」 2025年9月20日~11月9日
この度、「正倉院 THE SHOW」が開催の運びとなった。奈良、東大寺旧境内にある正倉院は9000件もの宝物を1300年近く地上で守り伝えた、まさに“奇跡の宝庫”。毎年秋には正倉院展が開かれているが、今回は、この実物の観覧とは異なるアプローチ、すなわち最新のデジタル技術を駆使した手法で、皆様が体験したことのない、宝物の楽しみ方を提案する。宝物の価値をより深く味わい、皇室のかけがえのなさや伝来を支えた人々の想いなどにも触れてる機会になる。
☆大ゴッホ展 I.夜のカフェテラス展 2026年5月29日~8月12日⇒公式サイト
☆大ゴッホ展 II.アルルの跳ね橋展 2027年10月~2028年1月⇒公式サイト
《東京都写真美術館》
☆アレック・ソス 部屋についての部屋 2024年10月10日~2025年1月19日
☆現在地のまなざし 日本の新進作家 vol.21 2024年10月17日~2025年1月19日
大田黒衣美、かんのさゆり、千賀健史、金川晋吾、原田裕規
☆総合開館30周年記念 恵比寿映像祭2025 Docs ―これはイメージです― 2025年1月31日~2月16日
☆総合開館30周年記念 恵比寿映像祭2025 コミッション・プロジェクト 2025年2月18日~3月23日
☆APAアワード2025 第53回 公益社団法人日本広告写真家協会 公募展 2025年2月22日~3月9日
☆総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために― 2025年2月27日~6月8日
鷹野隆大(1963-)は写真集『IN MY ROOM』(2005)で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞し、現在も国内外で活躍を続ける写真家、アーティスト。鷹野は『IN MY ROOM』に代表されるセクシュアリティをテーマとした作品と並行し、〈毎日写真〉や〈カスババ〉といった日常のスナップショットを手がけ、さらに東日本大震災以降、「影」を被写体とした写真の根源に迫るテーマにも取り組んでいる。本展のタイトルである〈カスババ〉とは鷹野による造語で、カスのような場所(バ)の複数形。大規模な自然災害や感染症の世界的流行、経済発展による環境破壊や都市開発など、私たちは急速な時代の変化の渦中を生きている。鷹野は美しいものだけではない現実を受け入れ、弱いものもみにくいものもそのまま、むき出しのイメージを見る者へ提示する。
☆ロバート・キャパ 戦争 2025年3月15日~5月11日
20世紀が生んだ偉大な写真家のひとり、ロバート・キャパ。「カメラの詩人」と言われ、すぐれた「時代の証言者」でもある。その写真の背景には苦闘するヒューマニストの眼がある。戦争の苦しみをとらえるとき、そこにキャパの人間としてのやさしさ,ユーモアがある。キャパは人間を取り捲く状況を少しでもよいものにしようというつよい信念と情熱をもって状況に身を投じましたが、それだけでなく写真のもつ衝撃力を見分ける確かな眼を持ち合わせていた。1930年代ヨーロッパの政治的混乱、スペイン内戦でドイツ・イタリアのファシスト政権に支援されたフランコ将軍の反乱軍によって次第に圧倒されて敗北する共和国政府軍、日本軍による中国の漢口爆撃、第二次世界大戦で連合軍の対ドイツ反攻作戦の始まる北アフリカから、イタリア戦線、ノルマンディー上陸作戦などの戦闘現場に立会い、命がけの取材写真は眼に見える確かな記録として報道された。本展は、東京富士美術館が所蔵する約1000点のコレクション・プリントから、“戦争”に焦点を当てた作品約140点を厳選して展示。 昨今のロシアとウクライナ、パレスチナやレバノンとイスラエル等の地域における紛争、 シリアのアサド政権崩壊による影響など、世界の現状は、残念ながらキャパの願った「人間を取り捲く状況を少しでもよいものにしよう」という思いとはほど遠い。それ故にこそ、いまあらためてキャパの写真証言を見直すことの意義がある。
☆総合開館30周年記念 TOPコレクション 不易流行 2025年4月5日~6月22日
出品作家(予定):下岡蓮杖 フェリーチェ・ベアト アウグスト・ザンダー ジャック・アンリ・ラルティーグ 山元彩香 石内都 塩崎由美子 片山真理 大塚千野 アルフレッド・スティーグリッツ ドロシア・ラング 江成常夫 植田正治 杉本博司 山上新平 赤瀬川原平 田村彰英 長野重一 潮田登久子 鬼海弘雄 山﨑博 荒木経惟 中野正貴 佐内正史 澤田知子 長島有里枝 野口里佳 古橋悌
☆総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ展(仮称) 2025年7月3日~9月28日
欧米での個展開催やドキュメンタリー映画の発表など、近年国際的に注目されるイタリアの写真家、ルイジ・ギッリ(1943-1992)のアジア初の美術館個展。ギッリはその類まれな色彩、空間、光への美的感覚と、ありふれたものをユーモラスに視覚化する才能によって、写真表現を新たなレベルへと引き上げた。現実とイメージ、在と不在、外界と内なる世界、それぞれを同じレベルで見つめ、その調和や多義性を視覚化するギッリの写真は、写真が世界のあるがままの複製ではなく「見られた」世界の断片の集合であり、眼差しの証明であることを示している。そして、どのようにイメージを通して世界や社会を考えるかという無限の問いを私たちに投げかけていく。毎日のようにニュースに流れてくる紛争の映像、パンデミックによる不確かな日常、サステナブルな在り方が問われる社会、SNSで流れる広告やライフスタイル。様々なことが起こり続ける私たちの生活には、常にあらゆるイメージが存在している。ギッリはどのようにこのイメージと現実を見つめてきたのか。軽やかでありながら密度をもって問いかけている。
☆総合開館30周年記念 TOPコレクション トランスフィジカル 2025年7月3日~9月21日
「フィジカル」という言葉には「物質的」「身体的」という意味がある。総合開館30周年を記念したTOP コレクション展の第二期では、モノとして存在する写真の「物質性」や、被写体や作家自身の「身体的表現」に着目し、5つのテーマで当館コレクションの魅力を紹介する。デジタルが活況を呈する現在の写真・映像の在り様に、鮮やかな一石を投じる珠玉の名作群。
☆総合開館30周年記念 ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ 2025年8月28日〜12月7日
ポルトガルの鬼才、映画監督ペドロ・コスタ(1959-)の日本初となる個展。2018-2019年にポルトガル・ポルトのセラルヴェス美術館で開催された大規模個展「companhia」や、「The Song of Pedro Costa」(スペイン、2022-2023年)の開催など、世界が注目するコスタの映像作品に加え、同館の写真・映像コレクションも紹介し、映像とイメージの歴史を浮かび上がらせる。「すべての映画は千の手で書かれた手紙」とするコスタ。その制作方法、社会的構造へのアプローチ、映画史との関係性を、映像にとどまらない写真や資料等によって検証し、コスタの映像世界を紹介する。
☆総合開館30周年記念 日本の新進作家 vol.22 2025年10月2日〜2026年1月7日
出品作家(予定):スクリプカリウ落合安奈、岡ともみ、呉夏枝、寺田健人、甫木元空
☆プリピクテ 嵐 2025年12月12日〜2026年1月25日
☆恵比寿映像祭2026 2026年2月6〜23日
☆恵比寿映像祭2026 コミッション・プロジェクト 2026年2月25日〜3月22日
☆APA アワード 2026 2026年2月28日〜3月15日
☆TOPコレクション W.ユージン・スミス(仮称) 2026年3月17日〜6月7日
20世紀を代表するアメリカの写真家W. ユージン・スミス(1918-1978)。本展では、1950年代から70年代にかけての作品に焦点を当てる。スミスは1954年に『ライフ』誌を退職し、マンハッタンの通称「ロフト」と呼ばれる場所に移り住んだ。この時期の作品は、従来のジャーナリズム的なスタイルから一歩踏み出し、写真の芸術的な可能性を探求している。セロニアス・モンク、マイルス・デイヴィス、ボブ・ディランなどの音楽家や、サルバドール・ダリ、ロバート・フランク、ダイアン・アーバスなどの芸術家たちとの交流を通して、多くの作品を生み出したスミス。本展では、その芸術家としての魅力に焦点を当て、作品を新たな視点から探る。
《東京都庭園美術館》
☆鉄とガラス 青木野枝/三嶋りつ惠 2024年11月30日~2025年2月16日
現代を代表する二人の女性作家、鉄の造形で知られる青木野枝(1958- )とガラスを用いる三嶋りつ惠(1962- )の二人展。旧朝香宮邸でも装飾に用いられている鉄とガラスという二つの素材を通して、生命の輝きを想起させる現代美術の世界観を紹介する。両作家とも旧朝香宮邸の装飾様式を独自の視点で読み解き、空間の特性や魅力を採り込んだ、新作インスタレーションを発表する。
☆戦後西ドイツのグラフィックデザイン 2025年3月8日~5月18日
ドイツを拠点に活躍するグラフィックデザイナー、イェンス・ミュラー氏が所蔵する貴重なグラフィックデザイン資料を日本で初めて公開。冷戦時代東西に分断されたドイツでは、バウハウスの流れを汲むウルム造形大学などの優れた教育機関が中心となり、新しい時代の表現が模索されていた。同国で生み出された斬新かつ理知的なグラフィックデザインの魅力に迫る。
☆建物公開 2025 時を紡ぐ館 2025年6月7日~8月24日
☆永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーが語るアール・デコ 2025年9月27日~2026年1月18日
本展は、ヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリー作品を通して「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称 アール・デコ博覧会)」の100周年を祝うもの。ヴァン クリーフ&アーペルは、《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924年)を含む作品で、この国際博覧会の宝飾部門においてグランプリを受賞した。アール・デコ博覧会はまた、朝香宮邸(現・東京都庭園美術館)の設計や室内装飾に大きな影響を与えた。本展では、ヴァン クリーフ&アーペルのパトリモニー コレクションを中心とした、歴史的価値が認められた作品を厳選して展示。時代を超えて輝きを放つアール・デコの魅力と、ヴァン クリーフ&アーペルに今なお引き継がれる「サヴォアフェール(匠の技)」の数々が堪能できる。
《森美術館》
☆ルイーズ・ブルジョワ展 2024年9月25日~2025年1月19日
ルイーズ・ブルジョワ(1911年パリ生まれ、2010年ニューヨークにて没)は、20世紀から21世紀にわたって活躍した最も重要なアーティストの一人。70年にわたるキャリアの中で、ブルジョワは感情や心理状態の多面性をさまざまなメディアで表現し、感情の起伏と稀有な造形力を融合させた孤高の作品群を生み出してきた。本展は、ブルジョワの日本における27年ぶりの大規模個展として、絵画、版画、素描、彫刻、インスタレーション、遺稿などを紹介し、その活動の全貌に迫る。とりわけ1938年から1949年までの絵画作品の数々は、東アジアでは初めての紹介となる。この初期の絵画群は、その重要性が最近になってようやく認識されるようになったが、ブルジョワがその後数十年にわたって描き続けることになる造形と主題をすでに確立していることがうかがえる、大変興味深いもの。さらに、「蜘蛛」を題材としたシリーズを紹介することで、六本木ヒルズのパブリックアート作品《ママン》に込められた「母の愛」、「治癒の力」や「記憶」などのテーマを探求する。「アートは心の健康を保証するもの」という自身の言葉が表すように、ブルジョワの生きることへの強い意志を表現する作品は、世界的なパンデミックによる健康危機の後、あるいは緊迫した国際情勢の下、私たちが直面するさまざまな課題を生き抜くための重要なヒントを与えてくれる。
☆マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート 2025年2月13日~6月8日
仮想空間と現実世界が接続し、人工知能(AI)が飛躍的に発展するなか、新しいテクノロジーは私たちの日常生活に急速に浸透し、とりわけコロナ禍は仮想空間における活動を加速させた。顧みればテクノロジーとアートは、コンピューター・アート、ビデオ・アートなどの歴史のなかで常に併走してきた。近年のビデオゲームやAIの発展がアーティストの創造活動に全く新しい可能性をもたらす一方で、生成AIの登場は、人類の創造力にとっての脅威ともなっている。こうした動向は、現代アートの文脈においても大きく注目されている。本展では、ゲームエンジン、AI、仮想現実(VR)、さらには人間の創造性を超え得る生成AIなどのテクノロジーを採用した現代アートを紹介する。そこではデジタル空間上のさまざまなデータが素材となった全く新しい美学やイメージメイキング(図像や画像を作ること)の手法、アバターやキャラクターなどジェンダーや人種という現実社会のアイデンティティからの解放、超現実的な風景の可視化、といった特性が見られる。ただ、これら新しい方法を採用しながら、アーティストの表現の根幹では普遍的な死生観や生命、倫理の問題、現代世界が抱える環境問題、歴史解釈、多様性といった課題が掘り下げられている。「マシン」とアーティストが協働する作品や没入型の空間体験は、「ラブ(愛情)」、共感、高揚感、恐れ、不安など私たちの感情をおおいに揺さぶる。現実と仮想空間が重なりあう本展は、人類とテクノロジーの関係を考えるプラットフォームとして、不確実な未来をより良く生きる方法をともに想像する機会となる
☆藤本壮介展 2025年7月2日~11月9日
藤本壮介(1971年、北海道生まれ)は東京とパリ、深圳に設計事務所を構え、個人住宅から大学、商業施設、ホテル、複合施設まで、世界各地でさまざまプロジェクトを展開している。《武蔵野美術大学美術館・図書館》(2010年、東京)を手掛けた後、近年では集合住宅《ラルブル・ブラン(白い樹)》(2019年、フランス、モンペリエ)や音楽複合施設《ハンガリー音楽の家》(2021年、ブダペスト)など、高い評価を得たプロジェクトを次々と完成させ、現在は、「2025年大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーを担当するなど、いま、最も注目される日本の建築家の一人。本展は、藤本にとって初の大規模な回顧展となる。活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで主要作品を多数紹介し、四半世紀にわたる建築家としての歩みや建築的特徴、思想を概観する。また、模型や設計図面、記録写真に加えて原寸大模型やインスタレーションなども展示に含まれ、藤本建築のエッセンスを視覚的にも空間的にも体験できる現代美術館ならではの建築展となる予定である。
☆六本木クロッシング2025展 2025年12月3日~2026年3月29日
「六本木クロッシング」は、森美術館が3年に一度、日本のアートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として2004年から開催しているシリーズ展。森美術館のキュレーターが数名のゲスト・キュレーターと共同で企画し、複数の視点の交差によって日本のアーティストを選出する。既に国際的な活躍が目覚ましいベテランから今後の活躍が期待される新進気鋭の若手まで、また、現代美術のみならず、建築、ファッション、デザインなど、他ジャンルのクリエイターを紹介。シリーズ8回目となる本展では、アジアを拠点にグローバルなアートシーンで活躍するキュレーターたちと協働し、国際的な視点から日本のアートを捉える。多文化主義が進んできた一方で、様々な軋轢や分断に直面する現代において、アーティストたちの活動も影響を受け、変化し、そして、新たな表現を生み出している。日本のアートの今、そしてそれがより大きな文脈の中でどのような意義を持っているのかを改めて検証する。
《森アーツセンターギャラリー》
☆さくらももこ展 2024年10月5日~2025年1月5日
☆ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト 2025年1月25日~4月6日
古代エジプトが六本木に出現! ブルックリン博物館が誇る古代エジプトコレクションから、選りすぐりの名品群が東京・六本木に集結。彫刻、棺、宝飾品、陶器、パピルス、そして人間やネコのミイラなど約150点の遺物を通じて、私たちの想像を超える高度な文化を創出した人々の営みをひも解く。謎に満ちた三千年をともに旅する案内人は、いま注目を集める気鋭のエジプト考古学者、河江肖剰。人々はどんな暮らしを営み、何を食べ、何を畏れていたのか。彼らはどんな言語を話し、何を書き残したのか。ピラミッドはなぜ、どのようにして造られたのか。ミイラに託されたメッセージは。そして死後の世界とは。これまでのエジプト展で見過ごされてきた「知っているようで知らない事実」から最新技術を使ったピラミッドの研究成果まで、映像や音声も交えて紹介する。三千年の謎を掘り起こし、知への探求心を呼び覚ます空間。
☆ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展 2025年4月26日〜6月29日
☆トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~ 2025年7月16日~9月17日
《東京ステーションギャラリー》
☆テレンス・コンランモダン・ブリテンをデザインする 2024年10月12日~2025年1月5日
サー・テレンス・コンラン(1931-2020)は、デザイナー、家具の作り手、ライフスタイルショップ「habitat」の先駆的経営者として知られ、現在でいうセレクトショップや新しいスタイルのレストランなども数多く手がけた。また都市開発プロジェクトやデザインミュージアムの設立、多数の著作など、半世紀にわたってそのデザイン理念を実践。本展は、プロダクトや資料、さまざまなインスピレーション源をたどりながら、英国の生活文化を変えたといわれる独自の世界観と功績を紹介する。
☆生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った 2025年1月25日〜3月16日
身近なモノを対象に、布と紙で美しく親しみやすい作品をつくりつづけた宮脇綾子(1905-1995)。アプリケ、コラージュ、手芸などに分類されてきた彼女の作品は、しかしいずれの枠にも収まりきらない豊かな世界をつくり上げている。モティーフにしたのは野菜や魚など、主婦として毎日目にしていたもの。それらを徹底的に観察し、時には割って断面をさらし、分解して構造を確かめる。たゆまぬ研究の果てに生み出された作品は、造形的に優れているだけでなく、高いデザイン性と繊細な色彩感覚に支えられ、いのちの輝きを見事に表現している。
☆タピオ・ヴィルカラ 世界の果て(仮称) 2025年4月5日~6月15日
2019年に開催したアルヴァ・アアルト展、ルート・ブリュック展につづくフィンランドのアーティスト、タピオ・ヴィルカラ(1915-1985)の日本初の大規模個展。「ウルティマ・ツーレ」に代表されるガラスのプロダクトをはじめ、木の彫刻やオブジェ、写真など約300点を展示。常に自然に向き合いつづけ、その躍動や神秘にインスピーレションを受けたヴィルカラの世界に浸ることができる。
☆藤田嗣治 絵画と写真 2025年7月5日~8月31日
国際的に活躍した画家・藤田嗣治(1886-1968)の絵画制作を「写真」を通じて再考する展覧会。本展では藤田の写真活用のプロセスを検証するとともに、日本とフランス・エソンヌ県に現存する彼の写真を数多く展示する。また、写真と絵画によって重層的かつ巧妙に演出された藤田自身のイメージにも注目。描くこと、そして撮ること。二つの行為を行き来した「眼の軌跡」を追いかけ、これまでにない語り方で藤田嗣治を紹介する。
☆インド更紗(仮) 2025年9月13日~11月9日
染織の難しい木綿布に茜(あかね)や藍などの天然染料を用いて生産されたインド更紗は、宗教儀礼や室内装飾、服飾などさまざまな用途に使われ、鮮やかな色彩とのびやかなデザインが特徴である。大航海時代にはヨーロッパ各国で相次いだ東インド会社の設立に伴い、世界中へと輸出され、他国の要望に応じたデザインも生産されるようになった。本展では、世界有数のコレクターが集めた選りすぐりの品々から、奥深いインド更紗の展開を紹介する。
☆小林徳三郎(仮) 2025年11月22日~2026年1月18日
小林徳三郎(1884-1949)は、若者たちが結成した前衛洋画家集団フュウザン会で活躍、画業半ば頃からは春陽会で作品を発表した。彼は東京美術学校の後輩、萬鐵五郎の強烈な絵画をいち早く評価したが、自らは異なる制作姿勢を貫き、魚や野菜、家族、風景などの日常的な題材を、親しみやすく、かつ洒脱な作品に描き上げた。
☆超無限の探究者 大西茂の写真と墨象(仮) 2026年1月31日~3月29日
数学から写真、そして墨象へ。唯一無二の道を歩んだ孤高の芸術家・大西茂(1928-1994)。ニューヨークMoMAをはじめ欧米で絶賛された彼の日本初回顧展を開催する。戦後日本が躍動を始めた1950年代、大西は位相数学に基づく独創的な写真と墨象を世に問うた。瀧口修造、具体美術協会、ミシェル・タピエなど同時代のパイオニアたちを瞠目させた彼の芸術は、いま再評価の途上にある。国際的に活躍した「知られざる異才」の探究は必見である。
《Bunkamuraザ・ミュージアム》
《アーティゾン美術館》
☆ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子―ピュシスについて 2024年11月2日~2025年2月9日
アーティゾン美術館の開館(2020 年)から毎年開催している、石橋財団コレクションとアーティストとの共演、「ジャム・セッション」展。第 5 回目となる本展は、世界から今注目を浴びているアーティスト、毛利悠子を迎えて開催する。主にインスタレーションや彫刻を通じて、磁力や電流、空気や埃、水や温度といった、ある特定の空間が潜在的に有している流れ/変化に形を与え、立ち会った人々のあらたな知覚の回路を開く毛利。環境を制御しようとするのではなく、その場に漂いながら創造的な関わりを築いていく姿勢が──近年の切迫した地球環境問題に照らして──関心を集めている理由のひとつかもしれない。彼女の都内初大規模展覧会である本展では、毛利の新・旧作品とともに、作家の視点から選ばれた石橋財団コレクションとを並べることで、ここでしか体感できない「微細な音や動きで満たされた静謐でいて有機的な空間」にいざなう。
☆特集コーナー展示 マティスのアトリエ 2024年11月2日~2025年2月9日
アンリ・マティス(1869-1954)の絵画において、室内は常に重要な要素であり続けたが、とりわけ 1940年代以降、生活と創作とが一体となった空間として重要になるのが、アトリエである。本展では、《踊り子とロカイユ椅子、黒の背景》(1942年)の収蔵にちなみ、石橋財団のコレクションにより、マティスの創作においてアトリエが果たした役割について、複数の視点から探る。
☆ひとを描く Looking Human: The Figure Painting 2024年11月2日~2025年2月9日
古代ローマの大プリニウスの『博物誌』には、コリントの陶器商の娘が旅立つ恋人の姿を残しておくために壁に影をかたどったというギリシア人の説話が書かれている。この物語は、18 世紀後半から 19 世紀初めには、絵画の起源として引き合いに出された。そして実際、ヨーロッパの美術の歴史を見てみると、「ひとを描く」ことは作品制作の重要な要素のひとつだった。たとえば、自画像は、自らの技量を示すことのできる題材であると同時に、さまざまな新しい表現の実験の場でもありました。肖像画は、画家たちにとって重要な生活の糧となっていった。また、物語に登場する人物を描いた作品もあります。この展覧会では人物表現の豊かさを紹介する。
☆ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ 2025 年3月1日~6月1日
テキスタイル・デザイナーとしてキャリアを開始し、緻密な幾何学的形態による構成を、絵画や室内空間へと領域を横断しつつ追求したゾフィー・トイバー=アルプ(1889‒1943)と、詩人としての顔をもちながら、偶然的に生まれる形態に基づき、コラージュやレリーフ、彫刻を制作したその夫、ジャン・アルプ(1886‒1966)。本展は、この 20 世紀前半を代表するアーティスト・カップルをめぐり、個々の創作活動を紹介するとともに、両者がそれぞれの制作に及ぼした影響やデュオでの協働制作の試みに目を向け、カップルというパートナーシップの上にいかなる創作の可能性を見出せるか、再考する。
☆硲伊之助展 2025年3月1日~6月1日
硲伊之助(1895‒1977)は、フュウザン会や二科会で若い頃より注目された画家。一時は文化学院や東京藝術大学で後進の絵画指導にあたり、晩年は色絵磁器の創作に熱意をもって取り組む。制作活動のかたわら、クールベやゴッホなどの画集の編集や、『ゴッホの手紙』(岩波書店)の翻訳に携わるなど西洋美術の紹介にも尽力した他、師マティスの日本ではじめての回顧展(1951 年)実現にむけて作家との交渉に携わる実務家としての一面もあわせもっていた。さらに、裕福な出自をもつ硲が自身の研究のために収集した作品の一部、マティス《コリウール》や、ルソー《イヴリー河岸》は現在石橋財団に収蔵されており、当館にとってゆかりの深い作家の一人でもあります。本展は、油彩画、版画、磁器など約 60 点の作品と資料、硲が収集した当館の西洋絵画コレクションを展示することにより、硲の多様な側面を紹介することでその魅力について改めて考える機会する。
☆オーストラリア現代美術 彼女たちのアボリジナル・アート 2025年6月24日~9月21日
地域独自の文脈で生まれた作品への再考が進む近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、オーストラリア先住民によるアボリジナル・アートは改めて注目を集めている。またオーストラリア現代美術で
は、多数の女性作家が高い評価を得ており、その多くがアボリジナルを出自の背景としている。石橋財団は 2006年にオーストラリア現代美術の展覧会を開催し、以降継続的に作品を収集している。本展では、石橋財団として初めて女性アボリジナル作家に焦点をあてる。所蔵作家 4 名を含む 7 名と 1 組の作品をとおして、現代の多様な表現を紹介するとともに、オーストラリア先住民美術への深い理解と認知をめざす。
☆ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着 2025年10月11日~2026年1月12日
アーティゾン美術館の開館から毎年開催している、石橋財団コレクションとアーティストとの共演、「ジャム・セッション」。第 6 回目となる本展は、山城知佳子と志賀理江子を迎えて開催する。近・現代日本が生み出した矛盾と抑圧、沖縄戦や集中する米軍基地など、生まれ育った土地がはらむ複雑で歪な状況を、ときにユーモアを交えて描き出す山城。2008 年より宮城県を拠点とし、東日本大震災やそこからの復興、あるいはそれ以前から作用していた中心と周縁の不均衡な力学のなかに立ち現れる生のあり方に光を当てる志賀。ふたりの新作を通じて、過去から続く複雑で困難な現実に向き合う作家たちの真摯な態度、そして創造力と芸術という手法のあり方をコレクション作品のうちにも見出し、紹介する。
☆クロード・モネ -風景への問いかけ 2026年2月7日~5月24日
没後100年を記念し、モネの最も重要かつ網羅したコレクションを誇るオルセー美術館から、最高峰の作品40点以上が一挙来日。風景画を革新したモネの真髄に迫る。印象派の画家、クロード・モネ(1840–1926)は、自然光の美しさに魅了されて表現方法を探求し、新しい時代の世界観と詩情の織りなす革新的な風景画を創造した。本展では、ル・アーヴル、アルジャントゥイユ、ヴェトゥイユ、ジヴェルニーなど、モネの創作を語る上で重要な場所と時代から、画業の発展を丹念にたどる。また、同時代の絵画や写真、浮世絵、アール・ヌーヴォーの工芸作品などの表現との関わりから、モネの創作の背景や動機を読み解く。さらに、現代の映像作家アンジュ・レッチアによるモネへのオマージュとして制作された没入型の映像作品も展示。オルセー美術館が誇るモネの作品40点以上を含む約90点に、アーティゾン美術館をはじめとする国内の美術館や個人所蔵の作品を加えた、約140点を通して、風景画家としてのモネの魅力に迫る。
《皇居三の丸尚蔵館》
☆瑞祥のかたち 2025年1月4日~3月2日
《永青文庫》
☆細川家の日本陶磁—河井寬次郎と茶道具コレクション— 2025年1月11日〜4月13日
熊本藩主であった細川家には、日本の陶磁作品が数多く伝えられている。特に、茶の湯を愛好した細川家では、茶壺・茶入・茶碗などの「茶陶」が残された。熊本藩の御用窯であった八代焼(高田焼・平山焼)でも茶道具が多く作られている。八代焼は、素地と異なる色の陶土を埋め込む象嵌技法が特徴で、幕府の使者への進物などに重用された。永青文庫の設立者である16代の細川護立(1883~1970)は、同時代の工芸作家との交流が深く、大正から昭和にかけて活躍した陶芸家・河井寬次郎(1890~1966)の支援も行った。寬次郎は、初期に中国の古陶磁をもとにした作品で注目され、後に「民藝運動」の中心人物となり、作風が大きく変化した。本展では、河井寬次郎の作品30点あまりによって作風の変遷をたどるほか、茶道具・八代焼に注目する。河井寬次郎や八代焼を紹介するのは約20年ぶり。また特別展示として細川護熙・護光の作品を紹介する。
☆「肥後熊本の絶景―「領内名勝図巻」を旅する―(仮)」 2025年4月26日~6月22日
「領内名勝図巻」(りょうないめいしょうずかん、熊本県指定重要文化財)は、熊本藩のお抱え絵師・矢野良勝(やのよしかつ、1760~1821)と衛藤良行(えとうよしゆき、1761~1823)が、おもに熊本領内の滝や名所、川沿いの風景などの絶景を全15巻にわたって描いた、真景図の先駆的作例とされる画巻。天地の長さは約60センチ、全巻を広げると計400メートルにも及び、これほどまで長大で迫力に富んだ作品は他に類を見ない。描かせたのは絵画好きとして知られる8代藩主・細川斉茲(なりしげ、1759~1835)。本展では、現存14巻のうちから選りすぐりの巻をとおして、この規格外とも言える本作の迫真の風景描写や、制作背景を紹介する。
☆「文房四宝と喫煙具の美(仮)」 2025年7月5日〜8月31日
「文房」とは、中国の文人が詩作や読書にふけるための書斎を意味し、そこには彼らの高い教養を反映した様々な道具「文房具」が揃えられていた。特に筆・紙・硯・墨は重要視され、「文房四宝(ぶんぼうしほう)」と呼ばれる。そうした文房四宝を愛好したのが、永青文庫の設立者・細川護立(もりたつ、1883~1970)。護立は、禅画や刀剣、日本近代絵画の収集で知られるが、中国の陶磁器や仏像にも関心を広げ、文房具も収集した。1972年に開催された「永青文庫開館記念展」では、護立の中国美術コレクションから文房具が多く紹介されており、細川家で重視された分野であったことがうかがわる。本展では、永青文庫が所蔵する中国の文房具について調査を行い、改めてその魅力を紹介する。また2階展示室では、煙草入れなどの喫煙具(きつえんぐ)を特集展示する。煙草入れは、きざみ煙草を持ち歩くための入れ物で、江戸時代に喫煙が一般化すると携帯に適した様式が確立した。
☆重要文化財「黒き猫」修理完成記念「永青文庫 近代日本画の粋―あの猫が帰って来る!―(仮)」 2025年10月4日~11月30日
重要文化財「黒き猫」は、36歳の若さで夭折した画家・菱田春草が晩年に残した代表作の一つとして知られている。永青文庫の設立者・細川護立(もりたつ、1883~1970)は、春草をはじめ同時代の日本画家たちにいち早く注目し、彼らの作品を積極的に蒐集した。同館に伝わる護立の近代日本画コレクションのなかでも、「黒き猫」は不動の人気を誇る作品である。この度、クラウドファンディングでのご支援と、国・東京都・文京区からの補助により、初めて本作の本格的修理が行われた。修理完成を記念した本展では、「黒き猫」や「落葉」(重要文化財)など同館が所蔵する春草作品全4点を期間限定公開するほか、横山大観、下村観山、鏑木清方といった近代日本を代表する画家たちの優品を一堂に展覧する。あわせて、中国の禅僧・清拙正澄(せいせつしょうちょう)と楚石梵琦(そせきぼんき)による墨蹟2点(いずれも重要文化財)を修理後初公開する。
☆「石からうまれた仏たち(仮)」2026年1月17日~3月29日
2019年1月~4月に開催し、好評だった「石からうまれた仏たち」展。永青文庫の東洋彫刻コレクションを一挙公開した同展が、一部内容を変更して帰ってくる。館の設立者である細川護立(もりたつ、1883~1970)は幼少期から漢籍に親しみ、渡欧を機に東洋美術を広く蒐集し始めた。中国考古や陶磁器ばかりではなく、中国の石仏・金銅仏、インドや東南アジアの彫刻をもコレクションに加えている。とりわけ北魏から唐時代におよぶ中国彫刻は、近代日本においていち早く中国美術を紹介・蒐集した早崎稉吉(はやさきこうきち、1874~1956)の旧蔵品が大半を占め、各時代の特徴を表した重要な像が多く含まれる。本展では「菩薩半跏思惟像(ぼさつはんかしいぞう)」や「如来坐像(にょらいざそう)」(いずれも重要文化財)をはじめとする中国彫刻のほか、多種多様なインド彫刻を7年ぶりに公開する。
《三井記念美術館》
☆唐ごのみ 国宝雪松図と中国の書画 2024年11月23日~2025年1月19日
年末恒例となった、国宝「雪松図屏風」の公開にあわせ、今回は雪松図と同様に三井家で珍重された、中国絵画や墨蹟・古拓本を展示。祝いの席や特別な茶会を彩った、趣深い書画の数々を楽しめる。また、江戸時代の画家による鑑定書や、作品を納める箱なども併せて展示する。作品を愛でた所蔵者たちの思いや、収集に至るまでのストーリーにも注目。
☆魂を込めた 円空仏―飛騨・千光寺を中心にして― 2025年2月1日~3月30日
円空は、江戸時代前期に日本各地を修行し、木肌とノミ痕を活かした現代彫刻にも通ずる独特の神仏像を残している。そして晩年を飛騨(岐阜県)で過ごし、千光寺をはじめ近隣地区で多くの像を制作した。「飛騨の匠」と称される歴史を背景に、木材の産地として有名な飛騨は、自然に恵まれ、円空が修行と仏像の制作に励むに相応しい場所だった。魂を込めた円空仏を多数展示。
☆国宝の名刀と甲冑・武者絵 特集展示 三井家の五月人形 2025年4月12日~6月15日
国宝の短刀「名物 日向正宗」と「名物 徳善院貞宗」をはじめ、重要文化財7点を含む刀剣、および蒔絵の拵などを一気に展示。あわせて三井家の遠祖三井高安所用の甲冑、春日大社に伝来した紫糸縅歌絵金具大鎧を近代に三浦助市が模造した甲冑、そして掛軸の武者絵を展示する。特集展示として三井家伝来の五月人形も。
☆美術の遊びとこころⅨ 花と鳥 2025年7月1日~9月7日
日本・東洋の古美術に親しむことを目的として企画している、恒例の美術の遊びとこころシリーズ。第9弾のテーマは「花」と「鳥」。絵画・茶道具・工芸品に登場する花と鳥を通して、四季折々に咲き誇る美しい花、さまざまな姿で魅せる鳥など、美術の中の花と鳥が織りなす多彩な表現や奥深い美の世界を紹介する。
☆開館20周年特別展 円山応挙―革新者から巨匠へ 2025年9月26日~11月24日
近年、同時代を生きた伊藤若冲、曽我蕭白ら“奇想の画家”たちの人気に押され気味の円山応挙。しかし、実は、応挙こそが、18世紀京都画壇の革新者だった。写生に基づく応挙の絵は、当時の鑑賞者にとって、それまで見たこともないヴァーチャル・リアリティーのように、眼前に迫ってきた。その画風は瞬く間に京都画壇を席巻、多くの弟子が応挙を慕い、巨匠として円山四条派を形成した。本展では、応挙が「革新者」から「巨匠」になっていくさまを、重要な作品を通して紹介する。
☆国宝 熊野御幸記と藤原定家の書 2025年12月6日~2026年2月1日
鎌倉時代・建仁元年(1201年)に藤原定家が後鳥羽上皇の熊野参詣に随行した際の自筆の記録「熊野御幸記」を全巻展示。あわせて「大嘗会巻」や「小倉色紙」・「歌切」など館蔵の藤原定家の書を展示する。また、近世に小堀遠州などが定家の書を好み、茶道具の銘を和歌から取り、小色紙や箱書を定家様で書いていますが、それらの茶道具も。
☆開館20周年特別展 生誕1200年 歌仙 在原業平と伊勢物語 2026年2月21日~4月5日
平安時代前期に活躍した在原業平(825~880)は、天皇の孫で和歌に優れた貴公子。その「歌仙」として、また「恋多き歌人」としての人物像は、彼の和歌にくわえ、『伊勢物語』の主人公に仮託されることで拡散していった。2025年は、業平の生誕1200年にあたる。 これにちなみ、現在でも人気が高い業平と『伊勢物語』を題材に生み出された絵画・工芸等の作品を集め、そのイメージの広がりの豊かさと、造形の魅力を探る。
《根津美術館》
☆企画展 古筆切-わかちあう名筆の美- 2024年12月21日~2025年2月9日
貴重な古筆を切断分割することで、より多くの人が鑑賞できるようになった古筆切。個々の魅力に富む名筆の美しさを楽しむ。
☆特別展 片桐石州の茶 武家の正統 2025年2月22 日~3月30日
片桐石州(1605~73、貞昌、石見守)は江戸前期の大名茶人。江戸幕府の数寄屋坊主や各地の大名など武家に広がりをみせた石州の茶を顕彰する。
☆財団創立85周年記念特別展 国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図―光琳・応挙・其一をめぐる3章― 2025年4月12日~5月11日
根津美術館が誇る国宝と重要文化財の金屏風3件を、それぞれの魅力をさらに高める作品ととりあわせて、堪能できる。
☆企画展 はじめての古美術鑑賞―写経と墨蹟 ― 2025年5月31日~7月6日
仏教経典を書写した写経と禅僧の書である墨蹟を紹介する入門編。これらの名品はなぜ重要なのか? その魅力を探る。
☆企画展 唐絵―中国絵画と日本中世の水墨画― 2025年7月19日~8月24日
室町時代、武家の間で中国伝来の宋元画が唐絵(からえ)として尊ばれ、やがて和製の唐絵も制作された。館蔵の名品を通じ、これら唐絵の系譜を辿る。
☆企画展 焼き締め陶―土を感じる― 2025年9月13日~10月19日
釉薬を掛けずに、高温で焼くことで、素地を固める「焼き締め陶」。この素朴なやきものを愛でる感性は、日本人の独特の美意識といえる。
☆在原業平生誕1200年記念特別展 伊勢物語―美術が映す王朝の恋とうた― 2025年11月1日~12月7日
恋多き貴公子・在原業平の和歌を中心に編まれた『伊勢物語』。そこから生み出された魅力ある美術作品が一堂に会する。
☆企画展 綾錦―近代西陣が認めた染織の美― 2025年12月20日~2026年2月1日
大正期、京都・西陣での染織展覧会に23点の能装束や小袖を出品した初代・根津嘉一郎。その展覧会図録『綾錦』を紐解き、嘉一郎の初期染織コレクションに迫る。
☆企画展 英姿颯爽―根津美術館の武器・武具― 2026年2月14日~3月29日
実は重要作を数多く含み、知る人ぞ知る充実した内容を誇る根津美術館の武器・武具。その美しく凜々しい世界を楽しめる。
《静嘉堂文庫美術館》
☆豊原国周生誕190年「歌舞伎を描くー秘蔵の浮世絵初公開!」 2025年1月25日~3月23日
美人画と並ぶ浮世絵二代ジャンル・役者絵。本展では近世初期風俗画の優品「歌舞伎図屏風」を皮切りに、初期浮世絵から錦絵時代、明治錦絵まで、静嘉堂所蔵品のみで役者絵の歴史をたどる。幕末明治は浮世絵円熟期、歌舞伎界では「団菊左」の時代。浮世絵界の重鎮・国貞でなければ描けない肉筆画帖「芝居町 新吉原 風俗鑑」、その弟子で明治の写楽・国貞らの「錦絵帖」10冊余りを初公開する。三菱二代社長・岩﨑彌之助(1851~1908)の夫人・早苗(1857~1929)が愛玩した、今摺ったような「錦絵帖」を堪能できる。
☆黒の奇跡・曜変天目の秘密 2025年4月5日~6月22日
中国陶磁の至宝、曜変天目。12~13世紀の南宋時代に作られ、世界に3点のみ現存し、全てが日本に伝わっている。多くの人々を魅了し続けているのは、漆黒の釉薬に浮かぶ虹色の光彩による謎めいた美しさ。曜変天目はこの神秘的な輝きの他にも、製法や伝来などさまざまな謎を秘めている。本展では工芸の黒い色彩をテーマとして、刀剣や鉄鐔など「黒鉄(くろがね)」とよばれる鉄の工芸品や「漆黒」の漆芸品を紹介。そして中国と日本の黒いやきものの歴史をたどりつつ、最新の研究成果をもとに、曜変天目が秘めるさまざまな謎と秘密にせまる。
☆絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ 2025年7月5日~9月23日
古美術のなかの神さま、仏さま、そして人の姿に注目する入門展。物語や和歌を主題としたやまと絵に描かれた人物、神さまを表現した絵、禅宗の人々を中心に愛好された道教や仏教の偉いお坊さんなどを描いた絵、中国の故事を題材にした絵などをとりあげる。「この人は誰?」「このポーズの意味は?」「何をしているところ?」ー神仏と人物が表されるときの約束事や背景にあるストーリーを、やさしく紐解きながら紹介する。
☆2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催記念 修理後大公開! 静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝 2025年10月 4日~12月21日
静嘉堂@丸の内・開館3周年となる本展では、静嘉堂の東洋絵画の逸品が勢揃い。大阪・関西万博2025にちなみ、20世紀初頭の博覧会に出品した岩崎家所蔵の光琳派や肉筆浮世絵、近代絵画などを皮切りに、国宝1件、重要文化財13件、博覧会出品作10件余りを一挙公開!そして未来の国宝!菊池容斎の破格の巨大絵画が丸の内に登場する。そのうち修理後初公開の重要文化財9件、重要美術品2件はいずれも室町時代の屏風や中国宋・元時代の貴重な作品である。
☆たたかう仏像 2026年1月2日~3月22日
仏像のなかには、武装して目をいからせ、怒った表情を見せるものがある。こうした仏像は、何のために、何とたたかっているのだろう。あるいは、何を護っているのか? 本展では浄瑠璃寺旧蔵の十二神将立像(重要文化財)を中心に、武士と「たたかう仏像」の関係を紹介する。神将像の鎧のル ー ツである中国・唐時代の神将個を丸の内で初公開するほか、仏教絵画や刀剣等に表される多様な仏像の姿にも注目する。
《東京芸術大学大学美術館》
☆相国寺承天閣美術館開館40 周年記念 相国寺展―金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史 2025年3月29日~5月25日
相国寺は、室町幕府三代将軍・足利義満が永徳 2 年(1382)に発願し創建された禅宗の古刹。今も京都の地、御所の北側にその大寺の姿を誇り、金閣寺、銀閣寺の通称で名高い鹿苑寺、慈照寺を擁する臨済宗相国寺派の大本山である。創建から640年あまりの歴史を持つ相国寺は、時代を通じ、数々の芸術家を育て、名作の誕生を導いてきた。 室町幕府の御用絵師とされる相国寺の画僧・如拙と周文。室町水墨画の巨匠と称される雪舟。江戸時代の相国寺文化に深く関わった狩野探幽。そして、奇想の画家・伊藤若冲、原在中、円山応挙…。中世に規範を得た相国寺文化圏の美の営みは、近世、近代、現代へと時を繋ぎ、相国寺、鹿苑寺、慈照寺が所有する美術品は相国寺境内にある承天閣美術館で公開されてきた。本展覧会は、相国寺承天閣美術館開館40周年を機に開催。国宝・重要文化財40件以上を含む相国寺派の名品を中心に紹介し、相国寺の美の世界をみつめ、未来へ託す。
《SOMPO美術館》
☆絵画のゆくえ 2025 2025年1月18日~2月11日
FACE2022からFACE2024までの3年間に「グランプリ」と「優秀賞」を受賞した作家12名の近作・新作約100点を展示し、受賞作家たちのその後の展開を紹介。また、当館所蔵となった「グランプリ」受賞作品もあわせて見せる。絵画のゆくえを探る展示となる。
☆FACE展2025 2025年3月1日~3月23日
第13回目となる現代絵画のコンクール展。「年齢・所属を問わない新進作家の登竜門」として、全国より応募された作品から入選・受賞した作品を展示する。様々な技法やモチーフで時代の感覚を捉えた「真に力があり、将来国際的にも通用する可能性を秘めた」作品が並び、観覧者投票によるオーディエンス賞も授与。
☆生誕140周年 藤田嗣治 7つの情熱 2025年4月12日〜6月22日
レオナール・フジタ(藤田嗣治、1886-1968)の創作源にせまる展覧会を、フジタ研究の第一人者として知られるシルヴィー・ビュイッソン氏監修のもと開催する。主にフランス国内の個人が所蔵する作品を、紙作品を中心に展示。自画像や女性、宗教画など、フジタが生涯にわたり情熱をささげた7つのテーマで構成する。また、フジタとの関わりが深い日本人画家の作品をあわせて展示し、フジタが同時代に果たした役割をとらえ直す。
☆大正イマジュリィの世界(仮称) 2025年7月12日〜8月31日
フランス語のイマジュリィ(imagerie)はイメージ図像を意味し、挿絵、絵葉書、ポスター、写真など大衆的な複製図像の総称。大衆文化が興隆した大正時代には、技術の革新を背景に新鮮なイマジュリィが生み出され、若者の心をつかんだ。竹久夢二の抒情画や高畠華宵らの挿絵、アール・ヌーヴォーやアール・デコを取り入れたデザインなど、明治末から昭和初期までのイメージの世界を紹介する。
☆モーリス・ユトリロ展 2025年9月20日〜12月14日
20世紀初頭のパリの街並みを描いたことで知られる風景画家、モーリス・ユトリロ (1883-1955)。本展では、フランス国立近代美術館協力のもと、同館所蔵の《ラパン・アジル》他に加え、国内美術館所蔵品を含む約60点により、作家の全貌に迫る。アルコール依存症の治療のために絵画制作を始めた「モンマニーの時代」、さまざまな素材を利用し白壁の独特な質感をとらえた充実期の「白の時代」、色彩を多用した「色彩の時代」の作品を通じて、ユトリロが愛した風景の詩情を感じることができる。
☆モダンアートの街・新宿(仮称) 2026年1月10日〜2月15日
日本の近代美術(モダンアート)の歴史は、新宿という地の存在なくしては語れない。明治時代末期の新宿には新進的な芸術家が集まった。そして、新宿に生きる芸術家がさらに芸術家を呼び込み、近代美術の大きな拠点の一つとなった。本展は、中村彝、佐伯祐三から松本竣介、宮脇愛子まで、新宿ゆかりの芸術家たちの約半世紀にわたる軌跡をたどる、新宿の美術館として初めての試み。
☆FACE展2026 2026年3月7〜29日
第14回目となる現代絵画のコンクール展。「年齢・所属を問わない新進作家の登竜門」として、全国より応募された作品から入選・受賞した作品を展示し、観覧者投票によるオーディエンス賞も授与する。また、本展から新たに、前回FACEで「グランプリ」と「優秀賞」を受賞した作家を招待する「絵画のゆくえ」を3階展示室に併設。各作家の新作・近作5~10点ずつを紹介する。
《サントリー美術館》
☆儒教のかたち こころの鑑 日本美術に見る儒教 2024年11月27日~2025年1月26日
儒教は、紀元前6世紀の中国で孔子と弟子たちが唱えた倫理思想。日本には古代に伝来し、その後、主に宮廷や寺院で享受されていたが、江戸時代以降になると社会に広く普及した。その結果、儒教は為政者から民衆まで浸透し、理想の君主像を表した「帝鑑図」から浮世絵の見立絵まで、美術にも幅広く影響を与えた。本展は、儒教に根ざした日本美術に注目し、儒教を学び受容した人々が生み出した豊かな作品群を紹介する。
☆没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ 2025年2月15日~4月13日
エミール・ガレ(1846 ‒1904)はフランス北東部の古都ナンシーに生まれ、ガラス・陶器・家具において独自の世界観を展開し、名声を極めた。ナンシーの名士として知られる一方、ガレ・ブランドの名を世に知らしめ、彼を国際的な成功へと導いたのは、芸術性に溢れ、豊かな顧客が集う首都パリだった。ガレの没後120年を記念する本展では、ガレとその国際的地位を不動のものとしたパリとの関係に焦点を当て、彼の創造性の変遷を顧みる。
☆酒呑童子ビギンズ 2025年4月29日~6月15日
平安時代の武将・源頼光が鬼神・酒呑童子を退治する説話は、14世紀以前に成立し、やがて絵画化や、能などにも劇化されて広く普及した。なかでも、室町時代の狩野元信筆「酒伝童子絵巻」(以下、サントリー本)は、江戸時代を通して何百もの絵巻に描き写され、多大な影響を与えた古例として有名である。本展では、近年修復を終えたサントリー本を大公開するとともに、そこから広がる酒呑童子絵巻の多様な展開を紹介する。
☆ざわつく日本美術 2025年7月2日~8月24日
作品を「見る」ために展覧会へ行ったのに、キャプションを読むのに精一杯で、肝心の作品の印象が残っていない……そんな「視れども見えず」という体験はないだろうか? 本展は、「心がざわつく」ような展示をきっかけに、作品をよく見ることを意識して愉しみながら、日本美術のエッセンスを味わえるコレクション企画展「ざわつく日本美術」(2021年)の第2弾。サントリー美術館の名品から珍品、秘宝まで、作品を「見る」ための準備運動ができる展覧会である。
☆幕末土佐の天才絵師 絵金 2025年9月10日~11月3日
謎の天才絵師とも呼ばれる土佐の絵師・金蔵は、幕末明治期に多くの芝居絵屏風を残し、地元高知では「絵金さん」の愛称で長年親しまれてきた。同時代のどの絵師とも異なる画風の屏風絵は、今も夏祭りの間に高知各所の神社等で飾られ、闇の中に蝋燭の灯りで浮かび上がる芝居の場面は、見るものに鮮烈な印象を残している。本展は東京の美術館で開催する初の大規模展。「絵金」の類稀なる個性と魅力を代表作の数々で紹介する。
☆NEGORO 根来 - 赤と黒のうるし2025年11月22日~2026年1月12日
いわゆる「根来」は、中世に栄華を極めた根来寺(現在の和歌山県)で生産されていたとの伝承から、後世「根来塗」と称された漆器であり、塗りの一技法でもある。黒漆に朱漆を重ねた姿に、耐久性と美しい造形を備えた根来は、古代より寺院や神社などの信仰の場で使われ、近世以降には民衆の生活の場でも大切にされた。本展では、根来誕生の起源に迫りながら、魅力あふれる色と造形をもつ名品群を一堂に紹介する。
《パナソニック汐留美術館》
☆ル・コルビュジエ絵画から諸芸術の綜合へ 2025年1月11日~3月23日
近代建築の巨匠であり優れた芸術家としての顔も併せ持つル・コルビュジエ(1887-1965)。本展は1930年代以降に手がけられた絵画、彫刻、タペストリーを展観し、芸術、建築、デザインが反応し合い統一体となる、その「諸芸術の綜合」の概念を明らかにする。またレジェ、アルプ、カンディンスキーといった芸術家たちによる作品との共鳴にも着目し、ル・コルビュジエがめざした「調和の時代」の理想的世界観を探る。20世紀を創ったクリエイティブな頭脳の革新的な表現を紹介する。
☆PARALLEL MODE オディロン・ルドン―光の夢、影の輝き 2025年4月12日~6月22日
夢のような光と影が生みだす輝きを宿した幻想的世界を描いたオディロン・ルドン(1840-1916)。ルドンが活躍した時代の欧州では、技術革新が進み、また印象派などの新しい芸術潮流が次々と生まれた。伝統と革新の狭間で、ルドンは、木炭画や版画からパステル画や油彩画へと表現媒体を変えながら、独自の表現を築き上げていく。本展は、岐阜県美術館のコレクションを中心とする約110点の作品により、近代美術の巨匠ルドンの豊穣な画業の全容を紹介する。
☆ピクチャレスク陶芸 アートを楽しむやきもの―民藝から現代まで 2025年7月12日~9月15日
陶芸は、絵画や彫刻など隣接分野と呼応しながら今日まで表現を展開してきた。本展では、色彩や質感、絵画的表現との関わりなどの観点から陶芸の本質を再考する。「民藝」から、伝統工芸、前衛陶芸、コンテンポラリーまで、日本の近現代陶芸史に残る名品や知られざる名作を横断しながら、同時代の海外作家による作品、陶芸と共鳴する油彩やドローイングも併せて展示し、新たな視点から陶芸の魅力を楽しんでもらう。
☆ウィーン・スタイル―ビーダーマイヤーと世紀末 ライフスタイルとしてのデザイン 2025年10月4日~12月17日
ウィーン世紀末とビーダーマイヤー時代、二つの時代の工芸とデザインを、銀器、陶磁器、ガラス、ジュエリー、ドレス、家具などを通して紹介。「ミニマルな形態」と「遊び心に満ちた装飾」という対照的な特徴がともにみられる、共通性のある両時代のモダンなスタイルを、対比や空間構成で見せる。華麗な装飾のウィーン工房の作品群や、クリムトによる素描作品の展示、女性の活躍にも注目しながら多面的なウィーン文化の魅力を知ってもらう。
☆美しいユートピア理想の地を夢みた近代日本の群像 2026年1月15日〜3月22日
イギリスの社会思想家、ウィリアム・モリスは自著『ユートピアだより』で暮らしと芸術の総合を唱えた。その思想が紹介された日本でも、「ユートピア=理想郷」は暮らしをめぐる理想と課題となった。そして近現代を通じあらゆる場所で、美術、工芸、建築など幅広いジャンルを結ぶ共同体が模索された。20世紀の日本人の美しい暮らしを求める「ユートピア」と、そのゆくえを左右した人々の好みをたずね、かつての「来るべき世界」を振り返り、今日のユートピアを思い描く方法を探る。
《三菱一号館美術館》
☆再開館記念『不在』―ソフィ・カルとトゥールーズ=ロートレック 2024年11月23日~2025年1月26日
19世紀末のパリで活躍したアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901)の多彩な版画・ポスターの表現にフォーカスし、同館のコレクションを中心にフランス国立図書館所蔵のロートレック作品と併せて展覧。また、フランスを代表する現代アーティストのソフィ・カル(1953- )が同館のコレクションの中からオディロン・ルドンの《グラン・ブーケ(大きな花束)》に着想を得て制作、当館に新たに寄贈された作品を世界初公開。
☆オーブリー・ビアズリー展 2025年2月15日〜5月11日
25歳で世を去った画家オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley 1872-1898)。この英国の異才は、ろうそくの光をたよりに、精緻な線描や大胆な白と黒の色面からなる、きわめて洗練された作品を描きつづけた。本展覧会は、19世紀末の欧米を騒然とさせたビアズリーの歩みをたどる、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)との共同企画。出世作のマロリー著『アーサー王の死』(1893-94)や日本でもよく知られるワイルド著『サロメ』(1894)、後期の傑作ゴーティエ著『モーパン嬢』(1897)をはじめとする、初期から晩年までの挿絵や希少な直筆の素描にくわえて、彩色されたポスターや同時代の装飾など、約200点を通じてビアズリーの芸術を展覧する。
☆オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ ―モダンを拓いた2人の巨匠 2025年5月29日~9月7日
本展は、フランス、パリのオランジュリー美術館が、ルノワールとセザンヌという二人の印象派・ポスト印象派の画家に、初めて同時にフォーカスし、企画・監修をした世界巡回展。ルノワールの代表作《ピアノを弾く少女たち》やセザンヌの代表作《画家の息子の肖像》をはじめとし、二人の巨匠による肖像画、静物画、風景画、そして、二人から影響を受けたピカソを加え約50点の作品から、モダン・アートの原点を探る。また、この世界巡回展はオランジュリー美術館とオルセー美術館の協力により、ミラノ、マルティニ(スイス)、香港を経て日本へもたらされ、三菱一号館美術館が日本唯一の会場となる。ルノワールとセザンヌの交遊と合わせて、自在で多様な表現が生み出されるモダン・アートの誕生前夜に立つ二人の巨匠の、卓越した芸術表現を楽しめる。
☆アール・デコとモード京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に 2025年10月11日〜2026年1月25日
1920年代に世界を席巻した装飾様式「アール・デコ」。生活デザイン全般におよんだその様式は、「モード」すなわち流行の服飾にも現れた。ポワレやシャネル、ランバンなどパリ屈指のメゾンが生み出すドレスには、アール・デコ特有の幾何学的で直線的なデザインや細やかな装飾が散りばめられている。それは古い慣習から解放され、活動的で自由な女性たちが好む新しく現代的なスタイルだった。2025年は、パリで開催された装飾芸術の博覧会、通称「アール・デコ博」から100年目にあたる。この記念の年に、世界的な服飾コレクションを誇る京都服飾文化研究財団(KCI)が収集してきた選りすぐりの服飾作品約60点を展観。また、国内外の美術館所蔵の絵画、版画、工芸品などを加え、現代にも影響を与え続ける100年前の「モード」を紐解く。
☆清親から巴水まで―ミュラー・コレクションにみる浮世絵・新版画(仮称) 2026年2月19日〜5月24日
最後の浮世絵師のひとりと呼ばれる小林清親が1876(明治9)年に制作を開始した『東京名所図』は、明治期の風景版画へ大きな変革をもたらした。黄昏どきの表情や闇にきらめく光の様相を描いた作品群は「光線画」と呼ばれ、深い陰影により江戸の情緒まで捉えている。このような視点は、失われゆく江戸の風俗を惜しむ人々の感傷や、それらを記録しようとする写真の意欲とも重なり、同時代の浮世絵師たちが文明開化によって変貌していく都市を、艶やかな色彩によって楽天的に捉えた開化絵とは一線を画するものだった。明治末期に浮世絵の復興を目指した新版画は、その技術ばかりでなく清親らが画面に留めようとした情趣を引き継いで、新しい日本の風景を発見しようとした。清親から吉田博、川瀬巴水らに至る風景版画の流れを米国スミソニアン国立アジア美術館が所蔵するロバート・O・ミュラー・コレクションの作品によって辿る。
《日本科学未来館》
☆パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅 2024年11月6日〜 2025年2月24日
本展は、「HistoPad(ヒストパッド)」と呼ばれるタブレット型専用端末を使って、世界遺産・ノートルダム大聖堂の創建時から現代までをタイムトラベルする体験型の展覧会。
☆チ。 ―地球の運動について― 地球(いわ)が動く 地動説を探求する物語をアニメの世界観で没入体験! 2025年3月14日〜6月1日
本展は、人類史上もっとも大きなパラダイムシフトの一つである天動説から地動説への転換を、テレビアニメ「チ。 ―地球の運動について―」のハイライトシーンとともに紹介。
☆深宇宙展~人類はどこへ向かうのか To the Moon and Beyond 世界初公開を含む最新宇宙探査技術が一堂に集結 2025年7月12日〜9月28日
月を超えて、火星へ、そしてその先にある深宇宙の謎へ。人類の新たな宇宙への挑戦を体感する大規模宇宙展。
《東京オペラシティアートギャラリー》
☆今津景 Imazu Kei(仮称) 2025年1月11日〜3月23日
今津景(1980-)は、様々なメディアから採取した画像をコンピュータを用いて加工を施しながら構成し、その下図をもとにキャンバスに油彩で描く手法で絵画を制作する。人類の知覚は、技術の発展と密接に関わっている。かつて写真や映画の登場がそうであったように、スマートフォンの普及やAIなど現代の科学技術の革新は、我々の知覚や空間認識、物事に対する考え方をますます変容させている。今津はそうした変化に呼応するように、美術史における新たな絵画表現を探求。2017年以降、インドネシアに拠点を移した今津の作品は従来からのモチーフに加え、インドネシアの歴史や神話も題材にしている。本展でも神話「ハイヌウェレ」を題材にした新作シリーズを中心に過去作品と合わせて全貌を紹介。地球環境問題/エコフェミニズム、神話、歴史、政治、といった要素が同一平面上に並列される画面は、膨大なイメージや情報が彼女の身体を通過することで生み出されるダイナミックな表現といえる。国内外で大きな注目を浴びている今津の初の大規模個展。
☆LOVE ファッション─私を着がえるとき 2025年4月16日~6月22日
私たちは長い歴史の中で、着ることにさまざまな情熱を傾けてきた。装いをめぐる憧れや熱狂、ときに葛藤や矛盾を伴って発露する私たちの内なる熱情や欲望を、本展ではファッションに対する「LOVE」ととらえ、その多様なかたちを考える。着るという行為は「私」という存在の輪郭にも働きかける。自己と他者の境界、老いやジェンダー、アイデンティティにかかわる苦悩や願望。そうした問題を抱えながら生きる現代の「私」のありようは単一で一貫性があるものではなく、「着がえる」ように日々変化している。本展では、豪華な宮廷服から現代のデザインまで、京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する衣服と装飾品にアート作品を加え、着ることから紡がれる「私」と「LOVE」の物語を見つめ直す。
☆難波田龍起(タイトル未定) 2025年7月11日〜10月2日
難波田龍起(1905-1997)は、戦前から画業を始め、戦後はわが国の抽象絵画のパイオニアとして大きな足跡を残した。海外から流入する動向を咀嚼しながらも、情報に流されず、また特定の運動に属することもなく、独自の道を探求したその活動は、多くの人々の尊敬をあつめてきた。同館収蔵品の寄贈者寺田小太郎氏が本格的な蒐集活動にのりだすきっかけとなったのも難波田の作品と人格との出会いだった。また寺田氏がコレクションを導くコンセプトのひとつである「東洋的抽象」を立てたのも、難波田の画業に触れたことが大きな機縁となっている。本展は難波田の生誕120周年を機に、同館収蔵品はもとより、全国の美術館の所蔵品、また個人蔵の作品などもまじえ、難波田の画業の全貌を20年振りに振り返り、今日的な視点から検証する。
☆柚木沙弥郎 永遠のいま 2025年10月24日〜12月21日
2024年に101歳の生涯を閉じた染色家、柚木沙弥郎。型染の世界に新風を吹き込んだ柚木の作品は、自由でユーモラスな形態と、美しい色彩が心地よく調和しつつ生命力にあふれ、見る人を惹きつけてやまない。柳宗悦らによる民藝運動に出会い、芹沢銈介のもとで染色家としての道を歩みはじめた柚木は、さらに挿絵やコラージュなどジャンルの垣根を超え、創作世界を豊かに広げた。本展では75年にわたる活動を振り返るとともに、制作において縁のあった都市や地域をテーマに加え、柚木をめぐる旅へと誘う。身の回りの「もの」に対する愛着や、日々のくらしに見出した喜びから作品を紡ぎだす柚木の仕事は、変化の時代にこそ、大切に慈しみたい「いま」を私たちに示してくれる。民藝を出発点に、人生を愛し、楽しんだ柚木の創作活動の全貌を堪能できる展覧会である。
☆アルフレド・ジャー(タイトル未定) 2026年1月21日〜3月29日
1956年にチリに生まれたジャーは、建築と映像制作を学んだのち、1982年に渡米、以後ニューヨークを拠点に活動している。ジャーの制作は、社会の不均衡に対する真摯な調査にもとづき、多様なメディアにわたるその作品は五感に訴えかけるインスタレーションで知られている。誰かを糾弾するのではなく、誰もが幸せになる社会を希求する。ジャーの制作に通底するこの態度は、私たちはいかに共生できるのかという問いを力強く投げかける。異なる価値観をもつ他者の存在を否定せず、一人一人がよく見て考える責任を負うこと。ジャーの姿勢と作品は高く評価され、国際的な賞を多数受賞している。2018年にはヒロシマ賞を受賞し、2023年には広島市現代美術館で受賞記念展が開催された。
《21_21 DESIGN SIGHT》
☆企画展「ゴミうんち展」 2024年9月27日〜2025年2月16日
☆企画展「ラーメンどんぶり展」 2025年3月7日~6月15日
☆企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」 2025年7月4日〜11月3日
《出光美術館》長期休館
《山種美術館》
☆特別展 HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観へ―(仮称) 2024年12月14日~2025年2月24日
☆特別展 桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!―(仮称) 2025年3月8日~2025年5月11日
暖かな陽光がさし始める春。草花が芽吹き、心躍る季節である。なかでも、私たちの気持ちを浮き立たせるのが桜の開花だ。桜の名品を一堂に展示し、美術館にいながら、お花見に訪れたかのように気持ちが華やぐ展覧会である。桜がらんまんと花を咲かせた時の美しさと、はらはらと散っていく儚さは、古くから日本人の心を魅了してきた。芸術の世界 においても、古来、詩歌に詠まれ、調度や衣装などの文様に 表されるとともに、絵画にも盛んに描かれている。近代・現代 の日本画でも、桜は多くの画家が取り上げたモティーフであり、 画家の個性や美意識が反映された多種多様な表現をみることができる。本展では、桜を愛でる女性を色鮮やかに描いた松岡映丘《春光春衣》、京都・総本山醍醐寺三宝院の「太閤しだれ桜」を柔らかな色合いで捉えた奥村土牛《醍醐》、清らかな水が流れる渓谷に咲く山桜を表した川合玉堂《春風春水》、宵闇のつややかな桜をクローズアップして描き出した速水御舟《夜桜》など、画家たちの創意あふれる桜の名品の数々を見ることができる。
☆特別展 生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち 2025年5月17日~7月27日
「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願」と語った日本画家・上村松園。この言葉どおり清らかで気品に満ちた松園の作品は、今もなお多くの人々を魅了し続けている。2025年に、松園が誕生して150年を迎えることを記念し、山種美術館では数々の名品を取り揃えてその画業をたどるとともに、松園と同時代の画家から現在活躍中の若手作家にいたるまで、女性の姿を描いた作品を紹介する特別展を開催する。1875年、京都で生まれた松園は、幼い頃より絵を描くことを好んだ。外形の美しさだけではなく、精神性を伴った自身の理想とする女性像の表現を生涯をかけて追求。やがて美人画の名手として高く評価され、73歳の時、女性として初めて文化勲章を受章するに至った。同館創立者の山﨑種二は、松園と親しく交流を重ねて作品を蒐集し、代表作である《新蛍》や《砧》、松園芸術の粋を極めた《庭の雪》などを含む日本有数の松園コレクションを築いた。本展では、画業の初期から晩年までの22点の優品を通じて、近代日本を代表する女性画家・上村松園の魅力に迫る。あわせて、同じく2025年に生誕130年を迎える小倉遊亀、生誕120年の片岡球子など、さまざまな画家による麗しき女性たちの姿を描いた、粒選りの作品を紹介する。
☆特別展 江戸の人気絵師 夢の競演―宗達から写楽、広重まで 特集展示:太田記念美術館の楽しい浮世絵 2025年8月9日~9月28日
「江戸時代、個性豊かな絵師が次々に登場し、多彩な作風が花開いた。一世を風靡した彼らの作品は、現在も多くの人を魅了し続けている。このたび山種美術館では、江戸時代に活躍した人気絵師たちが勢ぞろいし、浮世絵と江戸絵画の名作が一堂に会する展覧会を開催する。
☆特別展 日本画聖地巡礼Ⅱ (仮称) 2025年10月4日~11月30日
☆特別展 LOVE 愛おしきものたち (仮称) 2025年12月6日~2026年2月15日
☆特別展 花・flower・華 2026 (仮称) 2026年2月28日~5月10日
《菊池寛実記念智美術館》
☆菊池コレクション 現代陶芸のすすめ 2025年1月18日~5月6日
陶芸といえば日用陶器や茶陶をはじめとした道具としての器を想像されるかもしれない。しかし、現代の陶芸には器の形態を用途や機能ではなく立体造形としてとらえる視点があり、また、素材や技法、伝統など陶芸にまつわる要素を独自の視点でとらえたオブジェ的な造形作品が存在する。個人作家によって展開される多様な制作、その未知なる思考、美意識に同館設立者の菊池智(1923~2016)は魅了され、20世紀後半以降の日本の陶芸作品を精力的に蒐集した。そして、1983年には自身のコレクションによる展覧会「Japanese Ceramics Today(現代日本陶芸展)」をスミソニアン国立自然史博物館のトーマス・M・エバンスギャラリー(米・ワシントン)で開催。当時40代から50代であった作家たちの作品を中心に構成し、日米の貿易摩擦が問題となるさなかに日本の同時代の文化を紹介する展覧会が受け入れられた経験は、菊池がその後、文化事業に注力していく契機ともなった。本展では、同展出品作をはじめ、1970年代から80年代の作品を中心に日本の現代陶芸の展開を紹介する。
☆鳥々 藤本能道の色絵磁器 2025年6月7日〜9月28日
藤本能道(1919~1992)は写実的で奥行のある色絵を追求し、1986年に色絵磁器の重要無形文化財保持者に認定された。絵具の濃淡でモチーフを立体的に描き、それを白磁の肌と一体化させて見せるために、背景を表す技法として「釉描加彩」を開発。主なモチーフは鳥である。色絵の魅力は絵具や釉薬の重なりによる層状の表現にあるが、鳥を描いた色絵の下層に水彩画のような淡い景色を表すことで器の奥へと広がる写実的な、それでいてやきものの文様としての抽象性も有する独自の表現を生み出した。東京美術学校(現・東京藝術大学)で工芸図案を学んだ藤本は、陶芸の実技を身につけるため卒業後に同校敷地内に設置されていた文部省工芸技術講習所に入所し、後にともに色絵磁器で重要無形文化財保持者となる富本憲吉(1886~1963)、加藤土師萌(1900~1968)に指導を受けた。実家はやきものとは関わりがなく、講習所卒業後は個人の制作を続けながら富本の助手、陶磁器デザイナー、あるいは指導者として、東京から岐阜、京都、和歌山、鹿児島など各地を転々とする。京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)に勤務していた時代には走泥社やモダンアート協会に参加しオブジェ陶で注目もされるが、1962年に東京藝術大学助教授に就任以降、環境を整えながら徐々に色絵に専心していった。本展では、1970年代半ばから最晩年の91年までを中心に、素材や技法を開発して色絵磁器に本格的に取り組んだ充実期の作品を通して、藤本能道の制作を紹介する。
☆第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在 2025年12月13日~2026年3月22日
《CREATIVE MUSEUM TOKYO》
☆大カプコン展―世界を魅了するゲームクリエイション 2025年12月20日~2026年2月22日
家庭用ゲーム機の登場から約半世紀-ドット絵から始まった「ビデオゲーム」は、いまや映画と肩を並べるような美しい映像によって数多くの新しい世界を生み出している。私たちの生活に広く浸透し大衆文化の一部となったゲームは、テクノロジーと表現の領域を横断し、クリエイターの創造力と個性が発揮される総合芸術へと進化したと言えるのではないか。1983年の創業から世界的ゲームソフトメーカーに成長した現在まで、その本社を大阪に置くカプコンは、数多くのタイトルを開発し、世界の人々を魅了してきた。本展では開発者たちの「手」による企画書や原画、ポスターやパッケージなどのグラフィックワーク、体験型コンテンツ、最新技術など、ゲーム誕生の壮大なプロセスとそこに関わるクリエイターたちの想像力と実現力を惜しみなく展覧会という場に投入し、日本が誇るゲーム文化をあらためて捉えなおす機会を創出する。
《日本民藝館》
☆仏教美学 柳宗悦の見届けたもの 2025年1月12日~3月20日
1949年に主著作『美の法門』を上梓した柳宗悦。仏教美学の更なる探求と強固な構築を目指した柳は、1961年5月に歿するまで、その樹立を願い留まることはなかった。本展では、仏教美学に関わる資料を展示。柳が1955年10月に行った「東洋思想講座 第五回」の映像(音源を基に制作)を初上映し、柳が直観で見届けた具体的な作物の提示と共に、悲願とした「仏教美学」を顕彰する。
☆民藝 無作為の美―深澤直人が心を打たれたものたち 2025年3月30日〜6月1日
自然の中から生まれ出た作為なき民藝の美に、なぜ人は心を打たれるのか。プロダクトデザイナーで当館館長である深澤直人が、館蔵コレクションの中から自身が感動し刺激を受けた生活道具を選び、「温もり」や「親しさ」「愛らしさ」といった民藝美の魅力に光を当てる。生活美の結晶である民藝の存在が、未来に向けた「ものづくり」や「生きる方向」を確かめるための、大事な試金石となる。
☆所蔵作品一挙公開 棟方志功展Ⅰ 言葉のちから 2025年6月14日〜7月27日
棟方板画大規模公開の特別展・第1章。言葉に強い感心を示した棟方志功は、詩人たちの詩歌や物語から着想したイメージを板に刻み、独自の世界を形成していった。メッセージ性の強いこれらの作品を一挙に公開し、棟方の言葉に対する姿勢を探る。
☆所蔵作品一挙公開 棟方志功展Ⅱ 敬愛のしるし 2025年8月2日〜9月15日
棟方板画大規模公開の特別展・第2章。棟方志功は師と仰ぐ人物や協力者への畏敬の念を、数々の作品に表している。また、板そのものへの想いから「板画」と称することとした1942 年以降の作品を交え、万物への感謝を示した棟方の人物像に迫る。
☆所蔵作品一挙公開 棟方志功展Ⅲ 神仏のかたち 2025年9月21日〜11月5日
棟方板画大規模公開の特別展・最終章。棟方志功は幼少期から仏の存在を身近に感じていたという。柳宗悦らの教示により宗教への理解を深め、特に仏教を主題とした作品を次々と発表していった。棟方の真骨頂である。
☆2025年度日本民藝館展 —新作工藝公募展— 2025年11月22日〜12月17日
手仕事による伝統的な工芸品を中心に、日本各地の新作工芸品の数々を展示・頒布する、恒例の新作工芸公募展。
☆抽象美と柳宗悦 2026年1月6日〜3月10日
柳宗悦の晩年にあたる1950年代は、国立近代美術館で「抽象と幻想」展が開催されるなど、日本の美術界で抽象美術が大きな注目を集めた。そのような中、柳は雑誌『心』に「抽象美について」(1957年)を寄稿。「古くして新しい抽象美」について述べたこの一文は、『民藝』第63号での抽象紋特集(1958年3月)に発展し、多くの図版を伴って特集された。本展では、特集に掲載された「抽象紋」の工芸を軸に構成し、柳が見た「抽象美」とは何かを探る。
《渋谷区立松濤美術館》
☆須田悦弘展 2024年11月30日~2025年2月2日
普段、道端で見かけるような草花や雑草。実は本物と見紛うほどに精巧に彫られた木彫作品である。須田悦弘(1969~)は独学で木彫の技術を磨き、 朴 の木で様々な植物の彫刻を制作してきた。須田によって生み出される植物は全て実物大で、それらを思いがけない場所にさりげなく設置することで空間と作品が一体となり、独自の世界をつくりあげている。本展は、東京都内の美術館では25年ぶりとなる須田悦弘の個展。今回は、須田の初期作品やドローイング、近年取り組んでいる古美術品の欠損部分を木彫で補う補作の作品等を見せるとともに、新作も公開。
☆温故知新 古典技法で名画の魅力をまなぶ ―青山学院中等部のとりくみ― / 特別陳列 渋谷区立松濤美術館所蔵作品展示「人と動物のカタチ」 2025年2月23日~3月16日
☆2025 松濤美術館公募展 2025年2月23日~3月16日
☆妃たちのオーダーメイド セーヴル フランス宮廷の磁器 マダム・ポンパドゥール、マリー=アントワネット、マリー=ルイーズの愛した名窯 2025年4月5日~6月8日
国内コレクションにより、ルイ15世からナポレオン帝政時代を中心に、ポンパドゥール侯爵夫人、マリー=アントワネット王妃、ジョセフィーヌ皇后やマリー=ルイーズ皇后などの妃たちがこよなく愛したセーヴル磁器の魅力を紹介。
☆黙然たる反骨 安藤照 ―没後・戦後80年 忠犬ハチ公像をつくった彫刻家― 2025年6月21日~8月17日
渋谷駅前のモニュメント《忠犬ハチ公像》(初代)の作者、安藤照。没後80年を記念した本展は、彼の彫刻家としての活動を網羅的に紹介するはじめての展覧会となる。安藤は、数々の彫刻家がしのぎを削った昭和戦前期の彫刻界で活躍を期待された存在だった。1917年に東京美術学校に入学し、在学中の1921年に帝国美術院展覧会(帝展)で彫刻家としてデビュー。翌年に帝展特選、そして1926年には帝国美術院賞を受賞するなど、はやくから頭角をあらわした。1927年には帝展彫刻部の審査員に任命されたほか、1929年には中堅彫刻家の作品研究の場として結成した団体「塊人社」のリーダーとして活躍。そして、1934年には《忠犬ハチ公像》、1937年には《西郷隆盛像》(鹿見島県鹿児島市)と、現在も語り継がれるモニュメントを制作し彫刻家としての地位を築いていった。しかし、その道半ばの1945年5月、渋谷区代々木の自宅兼アトリエが空襲にさらされ、安藤もその犠牲となった。本展では、誰もが知る《忠犬ハチ公像》の影に隠れ、これまで語られる機会の少なかった安藤照の生涯について、戦火をのがれた現存作品約30点のほか、関連する作家の作品とともに迫る。激動の彫刻界、そして戦争に向かう不安定な時代の中でも「ただ黙々と仕事をして居ります」と語った安藤の作品は、時世の雰囲気に逆らうかのごとく、素朴で静謐。激しくうつろう社会を生きる現代のわたしたちにとって、時代と黙然と戦った安藤の彫刻は新鮮に映るだろう。
☆井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s-1980s 2025年9月6日~11月3日
世界的に評価されている書家、井上有一(1916-1985年)の没後40周年を記念する展覧会。芸術家であると同時に、長らく小中学校の教師として市井に生きた井上。彼は東京大空襲の経験者でもある。その地面に置かれた紙にむかって力強い一字を書き放つ、雄渾な作品は広く知られている。本展ではその創造の秘密に迫る一方で、彼の書が評価された戦後の時代状況にも光をあてる。すなわち、井上の書と戦後のグラフィックデザインとの並行関係を跡付ける、という試みだ。70年代を境に、名だたるデザイナーが井上作品へのシンパシーを表明し、80年代以降、デザインや広告を経営戦略に取り入れた、いわゆるセゾン文化のなかで井上の書が積極的に紹介されてもきた。渋谷西武とパルコを擁するこの地は、井上の書とデザインの関係を考える絶好の場所と言える。
☆描く人、安彦良和 2025年11月18日~2026年2月1日
『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイナー兼アニメーションディレクターであり、『アリオン』等のアニメ監督、『ナムジ-大國主-』『乾と巽-ザバイカル戦記-』等の歴史漫画家としても活躍する安彦良和(1947年12月9日-)の創作活動を展望する回顧展。北海道遠軽町に開拓民の3世として生まれ、大学では学生運動に参加し、その後上京してアニメ制作に参加、漫画家に転身するなど、安彦が歩んだ激動の半生は、戦後日本の社会や文化のありさまを浮き彫りにする。展覧会では初公開のものも含むアニメ制作の貴重な資料、美麗なカラーイラスト、デビュー当初から最新作までの漫画原稿など、約50年間にわたる仕事の数々を紹介。圧倒的な画力、壮大なスケールの物語性、時代や歴史を見つめる鋭い視線、天与の才能をもつ「描く人」、安彦良和のクリエーションの軌跡をたどる。
《目黒区美術館》
☆めぐろの子どもたち展 2025年1月18日~2月2日
☆中世の華・黄金テンペラ画への旅 チェンニーノ・チェンニーニ『絵画術の書』と石原靖夫 2025年2月15日~3月23日
☆遥かなるイタリア 川村清雄と寺崎武男 2025年4月19日〜6月8日
戦前に欧米に留学した画家の作品を収集し、展覧会等を通じて紹介してきた同館が、イタリアに留学した二人の画家、川村清雄(かわむらきよお 1852-1934)と寺崎武男(てらさきたけお 1883-1967)を取り上げる。
☆○△□えほんのせかい+目黒区美術館トイコレクション 同時開催 クルト・ネフ生誕99年 2025年7月5日〜8月24日
及川賢治と竹内繭子の絵本作品を取り上げる。絵本『まるさんかくぞう』には、カラフルなかたちが3つ登場する。それらは積まれており、一番上に丸いかたち、真ん中に三角、そして一番下には象がいる。他にも、船、帽子… 実際には積み重ねられるはずのない、大きさや重量が異なるものが積まれているため、違和感を覚える方もいるかもしれない。しかし絵本には、そんな非現実を軽々と越えていく想像力とイラストレーション、デザインの力がある。まさにこれこそが絵本の魅力。作者の及川賢治の言葉、「形にもリズムがあるなと思う。人間はみんな積み木をしたり粘土をしたりしてリズムやノイズをつくって喜んでいる」は、人間には「遊ぶ」力が備わっていることを私たちに教えてくれる。
☆区展(区民作品展) 2025年9月17日〜9月28日
☆目黒区美術館コレクション展 2025年10月11日~11月16日
☆めぐろの子どもたち展 2026年1月17日~2月1日
☆岡田謙三 パリ・目黒・ニューヨーク 2026年2月21日~5月10日
岡田謙三は、1920年代のパリと1950年代以降のニューヨーク、二つの都市と美術の時代に生きた画家。1929年に自由が丘にアトリエを築いた、目黒区ゆかりの芸術家でもある。本展は、岡田が、1950年の渡米以降、次第に抽象へと転じ、淡い色面を組み合わせた独自の作風を確立していく過程に着目し、その事象を二つの海外留学の経験からひも解く。
《世田谷美術館》
☆東急 暮らしと街の文化 2024年11月30日〜2025年2月2日
企業と美術シリーズのVol.5として、多彩な企業活動を展開する「東急」に焦点をあてる。「東急と世田谷の街」、「東急と街づくり」、「東急と文化」などの視点を通じて、その企業活動と世田谷という地の歴史的関係、そして街と暮らしの変遷、さらに社会貢献としての文化活動も取り上げ、写真をはじめ、さまざまな美術作品や文学作品、また映像、模型、地図などで、およそ100年間にわたる「東急」が育んできた企業文化をたどる。
☆世田谷美術館コレクション選 緑の惑星 セタビの森の植物たち 2025年2月27日〜4月13日
☆横尾忠則 連画の河 2025年4月26日〜6月22日
様々な手法と様式を駆使し、多岐にわたるテーマの絵画を生み出し続ける破格の画家・横尾忠則(1936-)。1972年のニューヨーク近代美術館での個展開催など、早くから国際的な知名度を得てきた作家ですが、近年ではその息の長い驚異的な創造力が注目を集めている。2023年春、からだの衰えに淡々と応じつつ、テーマも決めずに大きなキャンバスに向かううち、横尾の「連歌」ならぬ「連画」制作が始まった。和歌の上の句と下の句を複数人で分担して詠みあうのが連歌だが、横尾は昨日の自作を他人の絵のように眺め、そこから今日の筆が導かれるままに描き、明日の自分=新たな他者に託して、思いもよらぬ世界がひらけるのを楽しんでいた。「連画」は、気づけば川の流れのなかにあった。遠い昔に郷里の川辺で同級生たちと撮った記念写真。そのイメージを起点に、横尾の筆は日々運ばれる。水は横尾の作品の重要なモチーフの一つだが、いま、その絵画世界は悠々とした大河となり、観客の前に現れる。さまざまなイメージが現れては消え、誰も見たことがないのになぜか懐かしくもある光景ー生も死も等しく飲みこんで、「連画の河」は流れる。150号を中心とする新作油彩画約60点に、関連作品やスケッチ等も加え、88歳の横尾忠則の現在を紹介する。
☆野町和嘉ー人間の大地 2025年7月5日〜8月31日
写真家・野町和嘉は、1972年、25歳の時にサハラ砂漠を訪れ、大きな転機を迎えた。辺境に関する情報が乏しい時代、出会った旅人と地図を分け合うような行程のなかで、野町は蒼穹の下に開けた地平線と、古来より連綿と続く人々の営みに魅せられていった。サハラの写真が認められ各国のグラフ誌に掲載されるようになり、野町はさらにエチオピア、チベット、サウジアラビアと、深い信仰が人々の暮らしを形作っている、しかし外部の者が容易には近づくことのできない土地を目指した。旅を続ける野町の写真には、過酷な風土のなかで暮らす人々の息遣いと生き抜く意志が宿っている。そして、その膨大な作品群は、デジタル・テクノロジーにより「アイロン掛けされた一枚のシーツで覆ったように急速度で画一化されつつある」現在では最早見ることのできない、貴重な人と大地のドキュメントといえる。本展覧会では、「サハラ」、「ナイル」、「エチオピア」、「グレート・リフト・ヴァレー」、「メッカとメディナ」、「チベット」、「アンデス」の7つのテーマで代表作を紹介し、野町和嘉の50年にわたる活動の足跡を辿る。
☆自然と魂 利根山光人の旅 異文化にみた畏敬と創造 2025年9月13日〜11月9日
世田谷ゆかりの画家・利根山光人(1921-1994)。アトリエに遺された作品群から、彼が最も触発されたメキシコをはじめ、インドや中国、日本の装飾古墳など各地の遺跡や祭祀を訪ね、画家の眼差しを携えたフィールドワークを重ねた姿があらためて浮かび上がってきた。古来、人間が自然と魂への畏敬から生み出してきた造形。その原初のエネルギーに触れた利根山の旅を、マヤ・アステカの遺跡拓本を含む油彩、版画など多彩な表現で辿る。
☆つぐ minä perhonen 2025年11月22日〜2026年2月1日
「ミナ ペルホネン」はブランドの創設から30年にわたり、手仕事や職人との協業を大切にしながら、暮らしのなかに永く息づき、時を重ねて深みを増すデザインを積み重ねてきた。その‟運動”ともいえる、ものづくりのありかたを「つぐ」という言葉が内包する多様な意味を通じて紹介。洋服やプロダクトのほか、オリジナルのテキスタイルやそれらの原画などにより、100年先へと歩みを進める仕事と思想に触れる。
☆ミュージアムコレクション特別篇 開館40周年記念 世田美のあしあと――暮らしと美術のあいだで 2026年2月21日〜4月12日
1986年に開館した世田谷美術館。時代の移り変わりのなか、多くの芸術家が居住地としてきた世田谷ならではの文化的風土に育まれ、2026年に開館40周年を迎える。これを記念して、アンリ・ルソーなどの素朴派や世田谷ゆかりの作家をはじめとするコレクションとともに、いままでに開催してきた多彩な展覧会やイベントの記録も紹介。同館の歩みをたどる。
《板橋区立美術館》
☆レオ・レオーニと仲間たち 2024年11月9日〜2025年1月13日
『スイミー』、『フレデリック』などの絵本で知られるレオ・レオーニは、アメリカとイタリアを拠点にアートディレクターやアーティストとしても活躍した。豊かな文化的環境で育ったレオーニは、多数の画家やデザイナー、文化人たちと影響を与え合いながらキャリアを築き、晩年まで多彩な活動を展開した。本展は、絵画、彫刻、デザイン、イラストレーション、絵本原画などレオーニが生涯にわたって作り続けた作品と、交流のあったアーティストたちの作品を合わせて展示することで、文化史の大きな流れの中でレオ・レオーニの仕事を検証する試みである。
☆エド・イン・ブラック 江戸絵画に見る黒 2025年3月8日~4月13日
「黒」は色彩の中で何にも染まらない特異な存在といえる。日本の絵画においては、古くから欠かすことのできない要素のひとつでもあり、江戸時代には黒を効果的に用いた幅広い表現の作品が制作された。夜の情景を描いたものや、真っ黒な背景による独特な作品、美人画に見られる黒の用いられ方などから、その多様さや黒に象徴されたイメージを探る。
☆館蔵品展 あの時の風景(特集展示 あの風景を見つめる目) 2025年4月26日~6月15日
☆2025イタリア・ボローニャ国際絵本原画展 025年6月27日~8月11日
☆館蔵品展 狩野派の中の人 2025年8月23日~9月28日
☆区民文化祭 2025年10月9日〜11月2日
☆戦後80年 戦争と子どもたち(仮称) 2025年11月8日〜2026年1月12日
☆区立小・中学校作品展 2026年1月20日〜2月23日
☆佐藤太清記念中学生絵画展 2026年2月20~23日
☆焼絵展(仮称) 2026年3月7日~4月12日
「焼絵」とは、火筆画や焦画、烙画などとも呼ばれ、熱した火箸や鏝を紙や絹などに押し当て、絵画や文字を焦がして表現する技法。色調は茶から黒に近い色まで展開し、線描から点描、ぼかしといった水墨の筆法も巧みに再現されている。江戸時代には、山上藩主の稲垣定淳(如蘭、1762~1832)をはじめ、藩主や家老クラスの間で流行した。狩野派の表絵師である狩野梅雲行信(1770~1813)は、墨画に焼絵を組み合わせることを試みた。葛飾北斎の弟子と言われる北鼎如蓮(生没年不詳)など浮世絵師にも名手が現れた。幕臣で狂歌師としても活躍した大田南畝(1749~1823)は、焼絵に高い関心を示し、来日した中国人と焼絵問答した記録が残っている。朝鮮通信使により烙画(朝鮮における焼絵の呼び名)が制作されるなど、江戸時代には焼絵を通した国際交流も行われていた。当時の人々は、焼絵の特異な技法による独自の美を愛でるとともに、画中の漢詩や狂歌といった文学的な要素を含めて作品を楽しんでいた。一方で、少ない材料で制作が可能な点から、焼絵制作の根底には質素倹約を推奨する時世が反映されているとの推測もされている。本展では、日本のほか、朝鮮と中国の焼絵についても展観し、これまでほとんど紹介されることのなかった焼絵について、その美と制作背景について探究する。
《府中市美術館》
☆小西真奈 Wherever 2024年12月14日~2025年2月24日
小西真奈(1968-)は、鑑賞者の個人的記憶をアルバムをめくるように思い出させる、大画面の風景画を描いてきた。移動が制限されたコロナ禍において、多摩にある自宅近くを取材し、感覚をそのままにとどめたフレッシュな風景画を描き始めた。これら新作を中心に、美術館初の個展に臨む。
☆春の江戸絵画まつり 司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵 2025年3月15日~5月11日
江漢と田善は、江戸時代に油絵や銅版画を手がけた洋風画家である。風雅を愛する文人だった江漢と、西洋の技術にのめり込んで「ものづくり」に熱中した田善。二人の作品の特徴は異なるが、共通して感じられるのは、遠近法への素直な驚きから生まれた造形の「かっこよさ」だろう。二人の持ち味の違いにも注目しつつ、洋風画の魅力に迫る展覧会。
☆橋口五葉のデザイン世界 2025年5月25日〜7月13日
夏目漱石が初めて著した小説『吾輩ハ猫デアル』。その装幀を手がけたのが橋口五葉(1881〜1921)。これに続き、五葉は日本近代文学を代表する漱石や泉鏡花の著作を美しく彩っていった。こうした装幀の数々と、ポスターや絵画、《髪梳ける女》をはじめとする新板画などの代表作とを併せて、多彩な五葉のデザイン世界の全貌を紹介する。
☆ぱれたん旅行社 ゆめの旅 2025年7月26日〜9月7日
☆フジタからはじまる猫の絵画史 藤田嗣治と洋画家たちの猫 2025年9月20日〜12月7日
熊谷守一が朴訥と描いた猫の絵、猪熊弦一郎のモダンな猫の絵。日本の洋画家たちは個性的な猫の絵を数多く生み出した。ところが、洋画の本場ヨーロッパには、猫の絵は多くなかった。実はそれは、パリで活躍した藤田嗣治(1886〜1968) が、西洋の伝統では脇役だった猫を、あえて主役に据えた絵を生み出したことから始まった。日本洋画の独自の主題といえる猫の絵を紹介する。
☆小出楢重 新しき油絵 2025年12月20日〜2026年3月1日
大阪生まれの洋画家、小出楢重(1887~1931)の回顧展。大正から昭和初期にかけて「日本人としての新しき油絵」を追究し、軽妙なデフォルメと艶やかな色彩で、静物画や裸婦像に数々の傑作を残した。日本画・ガラス絵・装幀・随筆といった多方面にわたる仕事や、設立に参加した信濃橋洋画研究所の活動とあわせて、モダンな時代を彩った楢重の全貌を紹介する。
☆長沢蘆雪 2026年3月14日〜5月10日
18世紀後半の京都の画家、長沢蘆雪。ファンタスティックで不思議な風景、かわいい動物や子供。師の円山応挙に迫る凄腕の絵もあれば、その正反対のへそまがりで愉快な絵もある。また、禅の世界や仏の教えのもとに生きた画家でもある。この東京初となる蘆雪展では、色々な角度から魅力に迫る。
《東京富士美術館》
☆生誕135年 -愛しのマン・レイ展- 2025年1月11日〜3月23日
マン・レイ(1890-1976)は画家、写真家、オブジェ作家など、多彩な顔をもったマルチアーティストだった。多様な考えをもつ友人達とも分け隔てなく親交を結んでしまう、陽気で憎めない人柄の持ち主だった。本展では、当館所蔵の作品と日本における無類のマン・レイ・コレクターまた研究家である石原輝雄氏所蔵の作品と膨大な周辺資料を中心に、マン・レイの足跡を追いつつ、彼の愛すべき人間性を探る。
☆写真展 岩合光昭の日本ねこ歩き 2025年4月12日~6月22日
北へ、南へ、日本ねこ歩き。全国のネコとネコファンに愛される長寿番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK)から、日本国内15カ所を厳選した写真展「岩合光昭の日本ねこ歩き」。本展は国内各地それぞれの風土を背景に、ネコとヒトの暮らしぶりを紹介。
☆手塚治虫展 2025年7月12日~9月15日
『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『ブラック・ジャック』 - 今もその名が知られる名作を生んだマンガ家・手塚治虫。本展では手塚自身の歴史や、『希望の友』『少年ワールド』『コミックトム』(いずれも潮出版社)で連載され人気を博した『ブッダ』を含む、手塚が生涯で描いた数々のマンガ・アニメの直筆原稿やセル画、絵コンテ等を紹介する。過去から未来、地球から宇宙へと広がる想像力が生んだ「手塚ワールド」である。
☆東京富士美術館コレクションフランシスコ・デ・ゴヤ 四大連作版画展 2026年2月7日~3月22日
スペインを代表する画家フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)は、デューラーやレンブラントと並ぶ傑出した版画家としても知られている。彼が生み出した『気まぐれ』Caprices『戦争の惨禍』Disasters of War『闘牛技』Bullfighting『妄』The Folliesの連作版画シリーズには、社会に対する鋭い批判や戦争の残虐さ、人間精神の内面が、深い洞察に基づく表現力で鮮烈に描き出されている。同館が所蔵するゴヤの四大連作版画215点を一挙公開する本展では、時代を超越した独特の魅力を放つゴヤ版画の全貌を見ることができる。
《町田市立国際版画美術館》
☆新収蔵作品展Present for You わたしからあなたへ/みんなから未来へ 2025年1月5日~2月16日
☆第38回 町田市公立小中学校作品展 2025年1月10日~2月16日
☆『月映』とその時代 ―1910年代日本の創作版画 2025年1月5日~3月9日
恩地孝四郎、田中恭吉、藤森静雄の3人が発行した版画誌『月映』(つくはえ)とその時代の創作版画を展示。
☆「日本の版画1200年—受けとめ、交わり、生まれ出る」 2025年3月20日〜6月15日[前期3月20日〜5月6日/ 後期5月8日〜6月15日]
同館は開館以来、古今東西の版画の収蔵し、日本の版画に関しては国内有数のコレクションを形成している。本展覧会では奈良時代から現代までの版画を文化交流の切り口から展示する。
☆版画ってアートなの? 2025年7月5日~ 9月21日
版画は、同じ絵を何枚も作り出す複製の技術として生まれ、今ではアート(美術作品)としても、私たちを楽しませてくれる。デューラーやピカソ、ミロといった有名な画家たちをはじめ、多くのアーティストが版画独自の表現を活かした作品を作っている。さらに今では、さまざまな素材や技法を組み合わせて、版画という枠を超えた作品が次々と生み出されている。本展は、名だたるアーティストの作品から、「これって版画なの?」と思わずびっくりするようなものまで、町田市立国際版画美術館のコレクションを中心に紹介する。
《神奈川県立近代美術館・葉山館》

☆栗林隆展 2024年12月14日~2025年3月2日
栗林隆(くりばやし・たかし/1968–)は、インドネシアと日本を拠点とし、「境界」をテーマにドローイングやインスタレーション、映像などの多様なメディアを使いながら国内外で作品を発表するアーティスト。本プロジェクトは、当館の改修工事の期間に通常展示の行われない空間を用いて、作家が美術館の「内外」をつなぐ新作インスタレーションを発表する。
☆日本画コレクション再発見と片岡球子「蔦屋重三郎の浮世絵師たち」 2025年4月12日〜6月29日
神奈川県立近代美術館の日本画コレクションから、これまで同館で公開したことがない作品と20年以上出品していない作品に焦点を当てる。江戸時代前期に活躍した狩野探雪(1655–1714)の屏風《草花図》や、牛田雞村(1890–1976)の修復された屏風《青蘆》、小泉淳作(1924–2012)による建長寺の天井画《雲龍図》の下図など。また、特集展示として片岡球子(1905–2008)の〈面構〉シリーズから、《面構 東洲斎写楽》や《面構 喜多川歌麿と鳥居清長》など、蔦屋重三郎に関連する浮世絵師たちを描いた屏風を展示。
☆上田義彦 いつも世界は遠く、 2025年7月19日〜11月3日
上田義彦は、活動初期から自然や都市の風景、著名人のポートレイト、広告写真など幅広い分野で活躍を続けてきた写真家。瞬間を捉える感性と卓越した技術で、時代とともに変化する作風でありながら一貫して普遍的な美を作品に込め、国内外で高い評価を得た。公立美術館で約20年ぶりの本展では、代表作や未発表の初期作品から最新作まで、自ら現像とプリントを手がけた約500点を通じ、その40年の軌跡を辿る。
☆若江漢字とヨーゼフ・ボイス 撮影されたボイスの記録、そして共振 2025年11月15日〜2026年2月23日
若江漢字は、1970年代のドイツ滞在を機にヨーゼフ・ボイスの芸術に共鳴し、彼と交流するなかで、ボイス作品をはじめとする現代美術の収集と展示など、自らの創作活動と並行して芸術と社会を結ぶ行為を続けてきた。ドクメンタ7でのアクションやアトリエ訪問時、来日の際などに若江がボイスを接写した記録、そしてドイツ内外で主要なボイス展を撮影した写真は、貴重な証言であると同時に若江の作家的視点を伝える。多くが初公開となる記録写真と並行して二人の造形作品を展示し、両者の共通項と独自性を考察する。
☆内間安瑆・俊子展 2026年3月7日〜5月31日
日系移民の二世として米国に生まれた内間安瑆は、1940年に日本に留学し、画家を志すようになる。戦後、恩地孝四郎や棟方志功の知遇を得て創作版画の道に没頭すると、幾度かの変遷をとげながら、「色面織り」と呼ぶ独自の木版技法を深化させた連作〈Forest Byobu〉に至る。幻想的なアッサンブラージュで知られた妻・俊子にも焦点をあてながら、イサム・ノグチら関連作家の作品とともに、二人の豊かな創作世界を回顧する。
《神奈川県立近代美術館・鎌倉別館》
☆たいせつなもの I 新収蔵作品展 2015~2019 2024年11月2日〜2025年1月19日
同館の新収蔵作品を「たいせつなもの」と題するシリーズで紹介する。今回は2015年度から2019年度に収蔵された作品から、収蔵後未公開の油彩画、彫刻、版画など約70点を展覧する。
☆岩竹理恵+片岡純也×コレクション 重力と素材のための図鑑(仮題) 2025年2月1日~4月13日
俵屋宗達(たわらや・そうたつ)作《狗子図》や《両界曼荼羅》など日本美術を中心に選定し、ユニットで活動する岩竹理恵+片岡純也(いわたけ・りえ、かたおか・じゅんや/共に1982-)の作品とあわせて展示することで、同館の所蔵作品に新たな光をあてる企画。日常や自然の現象から着想を得たキネティック作品や、望遠鏡や顕微鏡の視覚を取り入れた絵画や版画作品をインスタレーションとして構成し、見立てや多視点といった、日本美術に見られる造形的な特色をユニークな手法で探究する。
☆木茂(もくも)先生の挿絵考 併陳:近代の洋画 2025年4月26日〜7月21日
木茂先生こと、明治美術の研究者で愛書家の青木茂(1932–2021)の旧蔵書として同館に収蔵された約1万冊の「青木文庫」を紹介する展覧会。2024年度に続く今回は、明治から昭和初期までの「挿絵」や「漫画」に関する書籍、雑誌、挿絵原画を特集。これらと時代を合わせ、浅井忠、黒田清輝、藤島武二、中澤弘光、岸田劉生らによる近代洋画の名品を展示する。
☆川口起美雄 Thousands are Sailing 2025年11月1日〜2026年2月1日
川口起美雄(1951–)は、目に見えないものは描かず、目に見えるものを描いて誰も見たことがない風景を現出する作家。川口の作品は、ウィーンで学んだテンペラ絵具と油絵具の混合技法で描かれている。ニュアンスに富んだ質感をもち、物語を想起させる作風は、しばしば詩に喩えられ、「読まれる絵画」とも称される。本展では、1970年代に制作された初期作品から初公開となる新作までを展示し、半世紀に及ぶ創作の軌跡をたどる。
☆福田尚代 あわいのほとり 2026年2月21日〜5月17日
福田尚代(1967–)は、「世界は言葉でできている」という独自の思索を、言葉と美術によって探求してきた。始めからも終わりからも同じ読みになる回文を綴る一方、言葉に関わるモノ—本や手紙、鉛筆、消しゴムなどを素材に彫刻を施す。削り、折り、切り抜き、糸で縫い、針穴を穿たれたモノたちは元々の姿を失い、やがて小さな粒子となって消えゆくかのよう。本展ではこうした存在のはかなさ―生と死の「あわい」に光をあててきた福田の創作世界を、会場の空間をとりこんだインスタレーションによって展覧する。
《横浜美術館》

☆横浜美術館リニューアルオープン記念「おかえり、ヨコハマ」 2025年2月8日~6月2日
開港以前にこの地に住んだ人びと。170か国籍を数える市民。横浜発の意外なプロダクト。この展覧会は、こうした多様なヨコハマの姿に光を当てる。同館のコレクションを活用し、またアーティストに新作も依頼する。タイトルには、約3年の工事休館を経て「横浜美術館が帰ってきた」という意味と、「生きた時代や生まれた地域を問わず、横浜に関わるすべての人を『おかえり』といって迎え入れたい」という願いを込めている。
☆佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方) 2025年6月28日〜11月3日
『ピタゴラスイッチ』『だんご3兄弟』『0655/2355』などの教育番組群、『バザールでござーる(NEC)』『モルツ(サントリー)』『スコーン(湖池屋)』をはじめとするCM群、《計算の庭》《指紋の池》に代表される身体表象をテーマにしたインタラクティブアート群。佐藤雅彦は、表現者そして教育者として、さまざまなメディアを用いて斬新、かつ親しみやすいコンテンツを発表し続け、90年代以降のメディアの世界を牽引している。初の回顧展となるこの展覧会では、佐藤の40年にわたる創作活動を概観し、そこに通底する独創的な思考方法と表現手法、感性を浮き彫りにする。
☆日韓現代美術展(仮称) 2025年12月6日〜2026年3月22日
地理的にも文化的にも近しい他者として、長い歴史を歩んできた日本と韓国。その中でも、1945年以降今日に至るまでの美術は、どのような関係にあったのだろうか。二国間の接点や断絶、共通点と差異を中心に考えると、たがいの、そして自己の意外な姿が立ち上がってくるかもしれない。1965年の日韓国交正常化から60年となる節目に合わせ、韓国国立現代美術館との共同企画により、日韓現代美術の関係史を紐解く。
《横須賀美術館》

☆令和6年度第3期 所蔵品展 特集:かながわ散歩 2024年10月26日~2025年2月16日
☆生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密― 2025年2月8日~4月6日
☆令和6年度第4期 所蔵品展 特集:新収蔵作品展 2025年3月1日~5月11日
☆箱根-横須賀連携企画第3弾 アートでつなぐ山と海 箱根・芦ノ湖 成川美術館コレクション展 海辺のミュージアムで楽しむ日本画のきらめき 2025年4月19日〜6月22日
山本丘人、毛利武彦、吉田善彦、平山郁夫、稗田一穂、堀文子、平松礼二など優れた日本画家の作品、神奈川県ゆかりの作品など約50点を紹介。
☆住友洋画コレクション―フランスと日本近代絵画名品選 2025年7月5日〜8月31日
泉屋博古館東京の所蔵品から、モネ、ローランス、ルノワール、ルオー、ピカソらのフランス絵画と浅井忠、鹿子木孟郎、藤島武二、岸田劉生、梅原龍三郎らの日本近代洋画の名品約80点を紹介。
☆山本理顕展 コミュニティーと建築 2025年7月19日〜11月3日
建築家・山本理顕(1945-)の50年にわたる設計活動 を、およそ60点の模型や図面、スケッチ、ドローイングを通して紹介。山本理顕は、建築におけるパブリックとプライベートの境界を「閾(しきい)」と呼び、地域社会とのつながりを生む空間として重要視している。こうした思想を体現した建築は、そこに住む人々だけでなく、周辺のコミュニティ全体を豊かにできるものとして世界的な評価をあつめ、2024年には、建築界で最も栄誉あるプリツカー賞を受賞した。代表作のひとつである横須賀美術館を会場として行われる本展は、山本理顕の設計思想を総合的に紹介する、過去最大規模の展覧会となる。
☆ブラチスラバからやってきた! 世界の絵本パレード 2025年9月13日〜11月3日
ブラチスラバ世界絵本原画展 (略称BIB=Biennial of Illustrations Bratislava)は、スロバキアの首都ブラチスラバで2年ごとに開催される世界最大規模の絵本原画コンクール。本展では、BIB2023(第29回展)で選ばれたグランプリを含む受賞作品と、日本代表として参加した国内作家10組の絵本と原画作品を紹介。
《平塚市美術館》
☆おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展 2024年9月21日~2025年2月16日
☆古井彩夏展 熱を与えた鉄とステンレス 2024年12月7日~2025年4月6日
☆絵本作家・たてのひろし 公開制作 絵本の生まれる瞬間(とき)を見よ! 2025年1月23~31日
☆生誕100年 中村正義展-その熱と渦- 2025年4月12日~5月18日
中村正義(1924-1977)は、戦後日本画壇において特異な存在として多彩で精力的な活動を展開した。本展では正義の代表作を中心に構成するほか、関連作家の作品もあわせて紹介し、映画や舞台美術、住宅デザインや写楽研究などの多様な活動にも焦点をあて、およそ120点の作品で画業を辿り、あらためて正義の実像に迫る。
☆よみがえる絵画 修復された川村清雄、藤田嗣治、鳥海青児… 2025年4月12日~9月7日
美術館には、美術作品の劣化を防ぎ、できるだけ良い状態で保管していくという重要な仕事がある。本展では当館の所蔵作品の中から、修復をしたさまざまな絵画作品を修復過程の分かる資料とともに紹介し、美術館の裏側ともいえる保存管理・修復の役割について紹介する。
☆原良介 サギ子とフナ子 光のそばで 2025年6月14日~9月15日
原良介は1975年平塚生まれ。油絵具による一層のみの筆致で対象を的確に捉えた、明るい色の光あふれる風景を特徴としている。本展では、一貫して追求している光の表現を中心に、近年レジデンスやアートプロジェクトでの制作も精力的に行い、多彩な広がりを見せている原良介の現在地点までを紹介する。
☆没後35周年 北澤映月展 2025年10月11日~11月30日
北澤映月(京都生、1907-1990)は再興院展で活躍した日本画家。本展では、近年、同館が寄贈、受託された北澤映月の院展出品作をはじめとする日本画、大下図、写生、大下図や印章、書簡や写真などを交え、初期から晩年までの映月の画業を振り返る。
☆新収蔵品展 国立劇場の名品 2025年10月11日~2026年2月15日
1966年の開場以来、国立劇場の場内を彩ってきた作品群は、日展・院展・創画会など各美術団体の画家たちの展覧会出品作と国立劇場のために描かれた力作ばかり。本展では国立劇場のリニューアル工事のための閉場に伴い、同館で受託した作品を展示。
《ポーラ美術館》
☆カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ 2024年12月14日~2025年5月18日
多様化する現代社会では、ファッション、インテリアはもちろん、環境、健康、美容などの分野でも色彩の果たす役割が拡がっている。一方、最も身近な存在となったスマートフォンには10 億色以上の再現力があるように、いつしか私たちは厖大な色彩の世界に巻き込まれてしまっているとも言える。本展覧会は、近代から現代までの美術における「色彩」に注目し、色彩論や色を表現する素材との関係にふれながら、その役割についてあらためて考察する。チューブ入りの油絵具を巧みに扱い、さまざまな色彩によって視覚世界を再構築した19世紀の印象派や新印象派から、20世紀のフォーヴィスムの絵画や抽象絵画、そして色彩の影響力によって観る者の身体感覚をゆさぶる現代アートにいたる近現代の色彩の美術史を、絵画や彫刻、インスタレーションなどによって読み直す。
☆ゴッホ・インパクト―生成する情熱 2025年5月31日〜11月30日⇨特設サイト
ポーラ美術館では開館以来初となるフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)をテーマとした展覧会を開催する。陽光のきらめく南仏のアルルで制作された《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》(1888年)や最晩年にオーヴェール=シュル=オワーズで制作された《アザミの花》(1890年)など、当館は3点のゴッホ作品を収蔵している。わずか37年ほどの生涯のなかで、数えきれないほどの絵画を制作したゴッホの名声を築き上げているのは、うねるような筆触とあざやかな色彩による独自の様式、そして何よりもその劇的な生涯であると言える。本展覧会では、個性と情熱にあふれたゴッホの作品や芸術に人生を捧げたその存在が、さまざまな時代においてどのようなインパクトを与えたのかを検証するとともに、現代という時代のなかで、「ゴッホ」がいかにして新たな価値を持ち得るのかを考察する。
☆ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー 2025年5月31日~11月30日
ライアン・ガンダー(1976年生まれ)は、英国サフォークを拠点に活動するアーティスト。絵画、彫刻、映像、テキスト、VRインスタレーションから建築、出版物や書体、儀式、パフォーマンスに至るまで、幅広く多元的な作品と実践を通して、ガンダーは芸術の枠組みやその意味を問い直しながら国際的な評価を確立してきた。また、自身の制作に加えて、展覧会のキュレーション、大学や美術機関での指導、また子どもたちを支援する活動にも熱心に取り組んでおり、数多くの書籍の執筆・編集、テレビ番組の制作・出演を通じて芸術や文化の普及にも携わるガンダーは、現代におけるアーティスト像を更新している。「一種のネオ・コンセプチュアルであり、特定の様式をもたないアマチュア哲学者」と自称するガンダーは、日常の中に潜む物語や多層的な意味を、知的な遊び心と鋭いユーモアを交えながら表現している。その作品においては、不在や死、不可視、潜在性といったテーマが、現実と虚構が複雑に絡み合う中で展開される。人間の言葉を話すカエル、読めない時計や仮想の国旗、ある兄弟の偽りの歴史など、ガンダーの作品は極めて具体的でありながら、捉えどころのない神秘に満ちている。「アートの目的はコミュニケーションではなく、触媒として曖昧さを提供すること」と作家が語るように、作品の意味は固定されていない。鑑賞者の働きかけーー解釈と連想のプロセスによって、出会いのたびに新たな物語が創造される。
《埼玉県立近代美術館》
☆没後30年 木下佳通代 2024年10月12日〜2025年1月13日
木下佳通代(1939-1994)は兵庫を拠点に活動した、関西の戦後美術を代表する作家のひとり。60年代半ばより、神戸で結成された前衛美術集団「グループ<位>」Group “i”と行動をともにしながら、存在、認識、空間などをテーマに、三次元と二次元像のズレを写真を用いて表現した。1981年にはドイツで個展を開催、その後、絵画へと軸足を移していったが、1994年に亡くなるまで、一貫して「存在とは何か」という哲学的な問いに向き合い続けた。この展覧会では、作家の没後30年を機に、初期から晩年までの代表作を一挙に展示し、国内初となる美術館での個展として、作家の全貌を紹介する。
☆メキシコへのまなざし 2025年2月1日〜5月11日
1950年代の日本では、メキシコ美術が展覧会や雑誌を通じて盛んに紹介され、多くの美術家がその鮮やかな色彩、古代文明や革命の歴史と結びついた力強い造形表現に魅了さた。同館では、開館以来メキシコの近現代美術を収集してきたが、その出発点には、50年代のメキシコ美術に対する熱いまなざしがあったと考えられる。この展覧会では、メキシコに憧れた日本の美術家たちの足跡と、当館のコレクションの双方から、戦後日本がメキシコ美術をどのように捉えたのかを考察する。
☆アーティスト・プロジェクト#2.08 松平莉奈 2025年2月1日〜5月11 日
京都を拠点に活動する松平莉奈(1989-)は、日本画や東洋の絵画の画材や技法をベースに、日本近世の史実や物語、歴史上の人物などを題材にした具象画を制作している。「他者について想像すること」をテーマとした松平が描く人物像は、時にユーモラスに、時に迫力をもって、完全にはわかりあえない他者への理解、共感を促す。本展では新作を中心に紹介。
☆Nerhol:Misreading Righteousness 種蒔きと烏 2025年7月12日〜10月13日
Nerhol(ネルホル)は、グラフィックデザイナーの田中義久(1980–)と彫刻家の飯田竜太(1981–)により2007年に結成されたアーティストデュオ。連続写真や映像から抽出した画像の出力紙の束を彫り刻む独自の制作手法を基軸としつつ、その観測範囲を他者や他領域と接合し、時空間を超えた因果関係の複雑な絡み合いや、不可視化された物語までも語りうる豊かな表現へと深化させてきた。これまでの表現活動の歩みを振り返った千葉市美術館における個展(2024)を経て、新作・未発表作を中心に構成するこの展覧会は、彼らの多層的な探究の現在地と表現言語の新たな展開を目撃する機会となる。
☆野島康三と斎藤与里 2025年11月1日〜2026年1月18日
野島康三(1889-1964)は浦和に生まれ、明治末期から大正期にかけて、絵画の影響を色濃く受けた写真作品を制作した。後には新興写真の動向に身を置き、『光画』や国画会写真部などに発表。加須出身の斎藤与里(1885‒1959)は、京都で洋画を学んだのち渡仏した。帰国後は西洋の新しい芸術思潮を広めながら、次第に南画等の影響も受け、晩年には独自の伸びやかな画風を追究した。野島と斎藤はそれぞれ、画廊経営者やコレクター、あるいは評論家や教育者として同時代の美術を支えたことでも知られる。この展覧会では、埼玉県ゆかりの二人の作家の足跡を辿るとともに、大正期における二人の交流にも着目しながら、関連作家の作品や資料を交え、両者が美術に注いだ眼差しにも迫る。
☆コレクションの舞台裏 2026年2月7日〜5月10日
1982年に開館した埼玉県立近代美術館は、継続的な収集活動により、現在4,000点以上の作品を収蔵している。この展覧会では、その中から学芸員が各々の視点で作品を選び、リサーチの成果をもとに展示する。複数の独立したテーマを設け、ともにコレクションを掘り下げていく、短編小説のアンソロジーのような展覧会である。学芸員の主要な仕事のひとつである「収蔵作品の調査研究」を通じて、作品や資料のさらなる解明を試み、コレクションの新たな見方や、通常はなかなかご覧いただけない側面を紹介する。
☆アーティスト・プロジェクト#2.09 江頭誠 2026年2月7日〜5月10日
江頭誠(1986-)は戦後日本で普及した花柄の毛布を用いて、独自の立体作品や展示空間を創り出すアーティスト。古い家具や既製品を毛布で包み込むことで、有機的なフォルムを立ち上げるとともに、物や空間が持つ記憶をゆるやかに呼び起こしていく。本展では新作を交えたインスタレーションを中心に紹介する。
《千葉市美術館》
☆千葉市美術館コレクション選 特集 田中一村と千葉 2024年10月9日〜12月1日
「特集 田中一村と千葉」では、千葉市美術館収蔵作品に、近年の新出作品、初公開作品を交えて特集するほか、一昨年行った《椿図屏風》《アダンの海辺》等作品の光学調査の成果を紹介するパネルも展示する。
☆ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展〈童堂賛歌〉 2024年11月16日〜2025年1月13日
☆第56回 千葉市民美術展覧会 2025年2月22日〜3月14日
☆開館30周年記念 ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード 2025年3月22日〜5月18日
スロバキア共和国の首都ブラチスラバで2年毎に開催される、世界最大規模の絵本原画コンクール「ブラチスラバ世界絵本原画展」(略称BIB=Biennial of Illustrations Bratislava)を紹介する展覧会。2023年10月から12月にかけて現地で開催された「BIB 2023」(第29回展)に日本代表として参加した、荒井良二、きくちちき、ザ・キャビンカンパニー、たじまゆきひこら10組の絵本と原画作品とインタビューを通じて明らかになった創作の背景を紹介。加えて、国際審査で選ばれるグランプリをはじめとする各賞受賞作家の作品を展覧し、世界のイラストレーションの動向やその魅力を浮き彫りにする。
☆開館30周年記念 ノック ノック!千葉市美術館をたのしむ4つの扉 2025年3月22日〜5月18日
所蔵作品と美術館を楽しむ視点を、いつもとはちょっと違うアプローチから提案。
☆開館30周年記念 江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ 2025年5月30日〜7月21日
2025年の大河ドラマの主人公ともなる蔦屋重三郎は、西村屋与八など老舗の版元たちがしのぎを削る中、新興の版元として出版界に彗星の如く現れ、斬新な作品を次々と世に送り出した。本展では、蔦屋重三郎が活躍した「浮世絵の黄金期」を中心に、鳥居清長や喜多川歌麿らの美人が、東洲斎写楽による役者絵を一堂に展観。あわせて、初期浮世絵から江戸時代後期までの名品を集め、浮世絵史も総覧する。
☆開館30周年記念 日本美術とあゆむ―若冲・蕭白から新版画まで 2025年5月30日〜7月21日
開館30周年を記念し、コレクションの中から江戸時代から明治・大正にかけて制作された日本の絵画・版画の名品を展観。伊藤若冲・曾我蕭白ら奇想の絵師たちによる絵画、大正時代に興隆した新版画など、各分野を代表する名品を一挙公開し、この30年における千葉市美術館の収集、調査研究、公開活動も網羅的に紹介する。
☆開館30周年記念 千葉市美術館と現代美術 2025年8月2日〜10月19日
1995年に開館した千葉市美術館での現代美術の歩みを草間彌生、河原温、田中敦子、中西夏之、河口龍夫、小清水漸、菅木志雄、杉本博司、辰野登恵子、吉澤美香ら重要なコレクションを通じて紹介。市指定文化財である美術館1階のさや堂ホール(旧川崎銀行千葉支店)では、過去の企画展を再現したインスタレーションを行う。
☆開館30周年記念 千葉美術散歩 2025年11月1日〜2026年1月8日
千葉市美術館がある「場」をテーマとした展覧会。黎明期の洋画家・堀江正章が指導を行った旧制千葉中学校、ビゴーの滞在で知られる稲毛、田中一村が住まった千葉寺町、戦後の千葉アートシーンの拠点となった国松画廊などを関連する作品とともに紹介。千葉市美術館を介して過去と未来が地続きにつながるさまを展望する。
☆開館30周年記念 ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン所蔵 ロックフェラー・コレクション花鳥版画展 北斎、広重を中心に 2026年1月17日〜3月1日
1877年創立の美術大学ロードアイランド・スクール・オブ・デザインには、約4,000点の日本美術品が所蔵され、特に浮世絵版画のコレクションは膨大であり、なかでも地元出身の資産家ジョン・ロックフェラーの妻アビー・オルドリッチ・ロックフェラーの花鳥画コレクションが知られている。本展ではこのユニークなコレクションから葛飾北斎、歌川広重らの浮世絵師による選りすぐりの花鳥版画約160点を紹介する。
《DIC川村記念美術館》
☆西川勝人 静寂の響き 2024年9月14日〜2025年1月26日
ドイツを拠点に活動する西川勝人(1949–)は、光と闇、その間の漠とした陰影に心を配り、多様な技法を用いた作品を、40年以上にわたり手がけてきた。抽象的なフォルムをもつ彼の白い彫刻は、木や石膏を用いた簡素な構造ながら、表面に淡い陰影を宿し、周囲の光や音さえもそっと吸い込んでしまうように、ただ静かにある。存在を声高に主張することも、個性を高らかに示すこともしない。写真や絵画など、彫刻以外の制作においても、これは変わることがない最大の魅力である。本展は、1980年代より現在まで、一定して静けさという特質を保持し続ける西川作品の美学に近づこうとする日本初の回顧展。彫刻、写真、絵画、ドローイング、インスタレーション、建築的構造物の約60点が、作家自身の構成によって展示される。静寂が拡がり、静謐さに包まれた空間で、私たちはどのような情景と出会うだろうか。日常から隔たった美術館という場において、観想に耽ることを許す、一人ひとりのための展覧会である。
《水戸芸術館》
☆田村友一郎展 2024年11月2日~2025年1月26日
☆クリテリオム101渡邊拓也 2024年11月2日~2025年1月26日
☆近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は 2025年2月15日~5月6日
ダイナミックな筆使いや力強い色彩など、エネルギーに満ちた絵画で知られる画家・近藤亜樹による個展。新作を中心に、絵画の力と「生きること」のつながりに迫る。
☆日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで2025年7月19日~10月5日
日比野克彦による個展。「ダンボールの日比野」黎明期から、子どもを含む他者との協働、地域社会における芸術実践、館長/学長としての変革的プロジェクトまで、日比野による多岐にわたる活動を「手つき」をキーワードに検証。
☆磯崎新展(仮称) 2025年11月1日~2026年1月25日
最も創造的で先駆的な20世紀を代表する建築家・磯崎新の回顧展。本展では、作品模型、スケッチ、インスタレーション、絵画、映像などの様々なメディアを通じ、彼の思考の軌跡を辿りながら、磯崎の建築の枠を超えた文化的・思想的活動を総体的に紹介する。
☆飯川雄大 大事なことは何かを見つけたとき 2026年2月28日~5月6日
立体、写真、映像等を自由に組み合わせて作品を制作するアーティスト飯川雄大が、情報の曖昧さや感覚の不完全さを新たな可能性と捉え、鑑賞者を巻き込む新作インスタレーションを発表。
《茨城県立近代美術館》
☆没後100年 中村彝展 2024年11月10日~2025年1月13日
水戸市出身の洋画家・中村彝(1887-1924)の没後100年を記念して開催する展覧会。作品に描かれたテーブルや椅子など遺品類、あるいはルノワールやセザンヌなど影響を受けた西洋美術作品と彝の作品を比較することで、彝が何を見て、何を描こうとしたのかをさぐる。また、画家を支援した人々の存在に着目し、大正という時代の豊かさに迫る。
☆キース・ヘリング展アートをストリートへ 2025年2月1日~4月6日
1980年代ニューヨークを代表するアーティストの一人、キース・ヘリング(1958-1990)の大規模な個展。「アートはみんなのために」という信念のもと、地下鉄駅構内やストリートを舞台に、グラフィティや広告デザインなど多彩な分野で活躍し、HIV・エイズ予防啓発運動にも取り組んだヘリング。本展では活動初期の貴重な作品から晩年の大作までの約150点により、今も色褪せないヘリングのメッセージをさぐる。
☆アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで 2025年4月19日~6月29日
19世紀後半のイギリスでおこったウィリアム・モリス(1834-96)らによるデザイン運動、アーツ・アンド・クラフツの歩みを紹介する展覧会。イギリスから各地へと広まったこの運動は、アメリカでは建築家フランク・ロイド・ライト(1867-1959)らが参加し、新たな展開を見せる。本展では、テキスタイルや工芸品、家具、書籍など約170点による多彩な作品を通じて、モダン・デザインの源流となったアーツ・アンド・クラフツ運動の魅力と展開を紹介する。
☆旅にまつわる絵とせとら 2025年7月16日~8月31日
誰もが日常を離れ、ふと旅に出たくなる時があるように、多くの画家たちも様々な場所へ赴き旅をした。本展は、江戸時代の名所絵や絵双六をはじめ、風光明媚な景勝地を描いた風景画など、現代にいたるまでの「旅にまつわる絵」をテーマとした展覧会。あわせて画家によるスケッチ、画文集といった旅にまつわるエトセトラも紹介する。
☆安野光雅美術館コレクション 安野先生のふしぎな学校 2025年9月13日~11月16日
島根県津和野出身の画家、安野光雅(1926-2020)は、独自の世界観からなる絵本が日本国内外で高く評価され、装丁デザインや執筆活動など幅広い分野で活躍した。本展では、安野が画家として独立する前の教員時代に着目し、多彩なジャンルの作品を学校の授業科目に見立てて紹介する。
☆令和7年度茨城県芸術祭美術展覧会 2025年11月29日~12月14日 書・写真部門は11月15~30日、ザ・ヒロサワ・シティ会館で展示
☆第14回現代茨城作家美術展 2026年1月10日~2月1日
☆藤田嗣治 絵画と写真 2026年2月10日~4月12日
藤田嗣治(1886-1968)は、乳白色の下地に描いた絵画で世界的に知られた、エコール・ド・パリを代表する画家。そんなフジタの芸術を「写真」をキーワードに再考する展覧会。本展では、画家と写真の関係を、「絵画と写真につくられた画家」「写真がつくる絵画」「画家がつくる写真」の3つの視点から紐解く。描くこと、そして撮ること。2つの行為を行き来した「眼の軌跡」を追いかけ、これまでにない角度から藤田嗣治の魅力を紹介する。
《群馬県立近代美術館》
☆特別展示:ホセ・ダヴィラ 私は目を閉じて見るほうがいい-ジョゼフ・アルバースとの対話 2025年3月1日〜4月6日
ダヴィラにとって日本の美術館における初の本格的な展覧会となる本展では、ダヴィラの作品と、アルバースの「正方形讃歌」シリーズの作品を合わせて展示。時代を超えて人々を惹きつけるアルバースの形と色彩に対する探求、そして、美術史と対話することで新たな芸術を生み出す。
☆20世紀イタリアの巨匠 マリノ・マリーニ 新収蔵の版画作品を中心に 2025年4月19日〜6月8日
群馬県伊勢崎市出身の個人コレクターから、マリーニの版画146点、挿絵本1点、テンペラ画1点、彫刻2点、合計150点の作品が一括して寄贈されたのを受け、初めて全貌を紹介する。最初期の繊細な銅版画から晩年の色鮮やかなリトグラフまで各年代にわたる充実した版画コレクションを中心に、絵画と彫刻を加え、150点の作品を一堂に展示。
☆群馬青年ビエンナーレ2025 2025年7月19日〜8月24日
若い世代を対象とした全国公募の展覧会。
☆響きあう絵画 宮城県美術館コレクション カンディンスキー、高橋由一から具体まで 2025年9月13日〜11月9日
1981年、仙台市に閉館した宮城県美術館は、同館のコレクションの原点である高橋由一をはじめ、明治から昭和に至る充実した絵画作品を収蔵している。中でもエッセイ「気まぐれ美術館」で知られる、画廊主で作家の洲之内徹が残した「洲之内コレクション」には、彼が決して手放さなかった伝説的な名品や、コレクターと作品との唯一無二の物語が含まれている。また、海外作家のコレクションでは、カンディンスキー、クレーらドイツ表現主義の画家たちの作品が、収蔵品の個性を豊かに形作っている。戦後の絵画では、一大潮流となった抽象画や、関西の前衛グループ「具体」の作品などが、熱気に満ちた激動の時代を浮かび上がらせる。
☆特別展示:水野 暁 視覚の層|絵画の層(仮) 2025年9月13日〜12月16日
水野暁(1974-)は群馬県東吾妻町に生まれ、現在も同地を拠点に活動を続ける画家。同館では2014年、開館40周年を記念するグループ展「1974年に生まれて」においてそれまでの代表作を展示し、反響を呼んだ。今回の個展では、それ以降の10年間に制作された大作を中心に、近年の水野の展開を紹介する。
《栃木県立美術館》
☆よむ あむ うつす 勝城蒼鳳展―人間国宝に訊く竹の道 2025年1月18日〜3月23日
《宇都宮美術館》
《セゾン現代美術館》
長期休館 2023年11月1日−2026年4月(予定)