国立工芸館石川移転開館1周年記念展《十二の鷹》と明治の工芸 10月9日~12月12日

鈴木長吉《十二の鷹》1893年 重要文化財 東京国立近代美術館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト

重要文化財《十二の鷹》発表当時の姿で12羽揃い踏み! 北陸で初お披露目!

 金沢市の国立工芸館で 2021年10月9日~12月12日、 特別展「国立工芸館石川移転開館1周年記念展 《十二の鷹》と明治の工芸」が開催される。

 重要文化財の鈴木長吉《十二の鷹》をはじめ、明治から現代までの工芸作品約100点を通して、変化し続ける社会に立ち向かう工芸家たちの姿を見つめる企画。

 器の表面から飛び出すほどの彫刻的な細工が施された陶器や金属器 、生きているかのようにリアルな表情を見せる動物の置物など 、 明治時代の工芸には、見る者の視線をとらえて放さない「 熱量 」 がある。

鈴木長吉《十二の鷹》(12番)1893年 重要文化財 東京国立近代美術館蔵
撮影:エス・アンド・ティ フォト

 それは、江戸から明治へと社会構造が大きく変化した時代に、どうにか活路を見出そうとした工芸家たちの必死さの現れであるかもしれない。

駒井音次郎 《鉄地金銀象嵌人物図大飾皿》1876-85年頃 登録美術品

 翻って、現在を生きる私たちも 急速に進むデジタル化など、激変の中にある。インターネットによる情報化や新たなデジタル機器は 、モノづくりにも確実に影響を及ぼしている。

 社会構造の変化に 、 工芸家たちはどのように立ち向かってきたのだろうか。

二十代堆朱楊成 《彫漆六華式平卓》1915年 
東京国立近代美術館蔵 撮影:尾見重治©2012

展示のポイント

鈴木長吉 《 十二の鷹 》 をはじめとした明治以降の工芸作品約 100 点を展示

 明治の名工で帝室技芸員に任命された鈴木長吉(1848-1919年) が制作の指揮をとって完成させた大作 《 十二の鷹 》 は、 当時の最高の技に日本の伝統を加味した最新の 「 美術 」 として 、 明治26(1893)年、シカゴ万博で発表された 。

鈴木長吉《十二の鷹》(1番)1893年 重要文化財 
東京国立近代美術館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト

 近年復元された飾り布とともに 、 発表当時の姿で展示されるのは北陸地域で初めてとなる。

 また、《十二の鷹》全12羽を3Dデータ化し 、 あらゆる角度から堪能できるようなサービスを提供する予定 。

 自分のスマホやタブレット端末を使い、普段の展示では見ることができない角度で 鑑賞できる。

社会の変化に立ち向かう工芸家たちのヒューマン・ストーリー

 社会全体が大きな変化の波に揺れ動いた明治時代、工芸家たちはどのように時代に立ち向かったのか。コロナ禍で加速する社会のデジタル化 、 新しい生活様式や働き方への対応など 、変化に
翻弄される今だからこそ共感できる 、 明治の超絶技巧にひそむ工芸家のヒューマン ・ ストーリーを 紹介する。

七代錦光山宗兵衛《上絵金彩花鳥図蓋付飾壺》1884-97年頃 
東京国立近代美術館蔵  撮影:アローアートワークス©2005

国立工芸館の歴史を振り返る特設コーナー

 国立工芸館が東京国立近代美術館工芸館として誕生したのは昭和52(1977)年 。 皇居に近い北の丸公園内にある明治生まれの建物 、旧近衛師団司令部庁舎から活動をスタートさせた 。

 それから43年後の2020 年 、 拠点を金沢市に移し 、2021年秋には移転開館1周年を迎える 。本展示では 、さまざまな資料を交えて開館から移転までの工芸館の歴史を伝える 。

章立て

第1 章 ◇ 明治の工芸 変わらなければ生き残れない

初代宮川香山 《鳩桜花図高浮彫花瓶》1871-82年頃 
東京国立近代美術館蔵 撮影:アローアートワークス©2005

 明治の改元以降、廃藩置県 、廃刀令 、内閣制度の確立など、近代国家の礎となる政策が矢継ぎ早に打ち出される。 武士階級という後ろ盾を失った工芸家たちも、生き残りの方法を模索。 ある者は住む場所を変え 、ある者は社会的な立場を変える。

 変わらなければ生き残れない 、 そんな激動の時代を生き抜いた工芸家たちを紹介する。

第 2 章 ◇ 鈴木長吉と 《 十二の鷹 》 新旧の技に挑む

鈴木長吉《十二の鷹》(3番)1893年 重要文化財 
東京国立近代美術館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト

 《十二の鷹》 制作の指揮を執った鈴木長吉も 、 明治という時代にあわせ 、 自身の活動を大きく変えた工芸家の一人 。 海外の美術館やコレクターが所蔵する彼の作品はいずれも高さ2メートル近く、あるいはそれ以上の大作である 。

鈴木長吉《十二の鷹》(8番)1893年 重要文化財 
東京国立近代美術館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト

 《十二の鷹》は、日本古来の技法である色金の技術によって、我が国の高い文化的水準を世界に示そうとした作品だが、近年の研究で、当時の最新技術も使ったのではないかと指摘されている。展示では、そんな新旧の技を駆使した明治の工芸家の気概が確認できる。

第3 章 ◇ 「 熱量 」 のゆくえ~工芸の変わりゆく姿

 明治から大正・昭和へと 、 世相の移り変わりとともに 、 工芸家たちの制作にも変化が現れる。 作家の熱量は 、表立ってそれとわかる装飾や大きさから、内面に込めた作家の表現へと方向を変える。

平田郷陽《洛北の秋》1937年 東京国立近代美術館蔵 
撮影:アローアートワークス©2006

  一見すると 、 落ち着き払って見える作品の内奥に見え隠れする工芸家たちの熱量 。現代の工芸家の作品も取り上げ 、新しいテクノロジーを取り入れつつ時代に即応する姿も紹介する。

開催概要

会 期:2021年10月9日[土]〜12月12日[日]

会 場:国立工芸館
石川県金沢市出羽町 3-2

時 間:午前9時30分~午後5時30分(入館は閉館の30分前まで)

休館日:月曜日(10/25 、 11/1 は開館)

入館料:一般500円(400円)/ 大学生300円(150円)
※高校生以下および18 歳未満、障害者手帳のある人と付添者 1 名までは無料
※( )内は割引料金。割引対象は、石川県立美術館・金沢21世紀美術館・石川県立歴史博物館・石川県立伝統産業工芸館(いしかわ生活工芸ミュージアム)・金沢市立中村記念美術館・金沢ふるさと偉人館の主催展覧会入場券半券、ならびに
SAMURAI パスポート (一般のみ)を窓口で提示した人。

オンラインによる事前予約
 日時指定・定員制 を導入。若干数、当日券も用意している。詳細は公式WEBサイトで。

岩田藤七《彩色壺》1935年 東京国立近代美術館蔵 撮影:斎城卓

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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