年末回顧2020―建築

 2020年の年末を迎え、新聞各紙の年末回顧記事から、今年注目された建築を回顧する。

 毎日新聞の2020年12月16日の夕刊では、建築史家で東北大教授の五十嵐太郎さんが、この1年間の建築について振り返っている。

 五十嵐さんは、コロナ禍の影響が響き、東京五輪による祝祭的な光景はなく、注目すべき建築も地方に多かったと指摘。

 2020年の建築3選として、高田松原津波復興祈念公園(岩手県陸前高田市)、京都市京セラ美術館、白井屋ホテル(群馬県前橋市)を挙げた。

高田松原津波復興祈念公園

 高田松原津波復興祈念公園は、内藤廣さんが設計。2011年の東日本大震災から10年を迎えるのを前に姿を現した「超重量級の作品」だと、その意義を強調した。

 五十嵐さんによると、防潮堤や震災遺構がランドスケープデザインに組み込まれ、原爆投下から10年後にオープンした丹下健三さんの広島平和記念資料館(1955年)のような位置付けになるとみている。

 ほかに、災害に関連する建築として、五十嵐さんは、日本設計による熊本城特別見学通路も紹介した。

 地震の被害を受け、修復作業中の熊本城を閉鎖せず、訪れた人が巡って見学できるようにした空中歩廊という試みに注目している。 

熊本城特別見学通路

 このほか、五十嵐さんは、リノベーションのプロジェクトが多いことに言及。ヨーロッパでは珍しくないリノベーションが日本でも増えたと言えるかもしれない、としている。

 以下、リノベーションの事例として挙げたのが、京都市京セラ美術館(青木淳さん、西澤徹夫さん)、青森・弘前れんが倉庫美術館(田根剛さん)、前橋市の白井屋ホテル(藤本壮介さん)、ザ・タワー・ホテル名古屋(日建設計)、京都市の新風館(隈研吾さんなど)。

京都市京セラ美術館

京セラ美術館
京セラ美術館

 

弘前れんが倉庫美術館

白井屋ホテル

ザ・タワー・ホテル名古屋

ザ・タワー・ホテル名古屋

新風館

 このほか、竣工は2020年ではないとしながら、2020年日本建築学会賞の受賞作品である宮崎・延岡駅周辺整備プロジェクト(乾久美子さん)、栃木・道の駅ましこ(マウント・フジ・アーキテクツ・スタジオ)も地方の注目プロジェクトとして挙げた。

延岡駅周辺整備プロジェクト

道の駅ましこ

 また、2020年度グッドデザイン賞を受賞した地方のプロジェクトとして、宮城県山元町の震災遺構中浜小学校、岐阜県多治見市のJR多治見駅前、虎渓用水広場にも注目した。

震災遺構中浜小学校

虎渓用水広場

 最後に、五十嵐さんは、移転問題が起きていた前川國男さんによる宮城県美術館(1981年)に触れた。地元で保存運動が起き、11月に現地改修での存続に決着したという。

宮城県美術館

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伝えること、文化芸術とメディアについて

1980年代から、名古屋、東京、関西で文化芸術を見てきた。新聞文化面、専門雑誌、「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、自ら新聞文化欄を編集、美術、映画、演劇などの記事を書いてきた。2000年代に入ると芸術批評誌を立ち上げ、2019年にはWEBメディアを始めた。文化芸術とメディアの関係、その歴史的展開、メディアリテラシー、課題と可能性、レビューや伝わる文章の書き方、WEBメディアの意義、構築方法について、若い世代に伝えたいと考えています。

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