アイキャッチ画像はKAAT神奈川芸術劇場のWEBサイトより
現代演劇の旗手として国際的に活躍する劇作家・演出家で、チェルフィッチュ を主宰する岡田利規さんの作・演出による舞台「未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀」の一部が2020年6月27、28日午後4時から、無料オンライン配信される。企画製作・主催 は、KAAT神奈川芸術劇場(横浜市)。もともとは、6、7月に全国4カ所で公演する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止になった。本来の舞台公演は改めて検討される。
舞台はもともと、2020年6月3日に初日を迎えるはずだった。4月15日に今年の全公演中止を発表。6月27日・28日に愛知・豊橋で予定されていた公演を含め、全公演が中止になった。
それでも、出演者、スタッフらは直接会うことなく、上演の機会を調整。それぞれのリモート環境下で、ワークショップやリハーサルに取り組んだ。
今回は、そのクリエーションの一部を、演奏付きのリーディング形式でオンライン配信する2日間だけの特別上演である。
上演の予定がなくなった演劇は、幽霊になるのでしょうか?
KAAT神奈川芸術劇場のWEBサイトより
あなたのオンライン環境に、「未練の幽霊と怪物」の上演の幽霊を出没させてみたいと思っています。
岡田利規
舞台は、歴史の中で忘却される人やものをモチーフに据え、「夢幻能」の構造を使って演じる。「夢幻能」の形式には、さまざまな思いや願いを果たせないまま亡くなり、成仏できずにいる幽霊が「シテ」(主人公)として登場。霊的な存在として、メッセージを語る。思いを遂げられなかった理由の多くが、社会的、政治的な問題、状況によることから、物語自体が普遍性を帯びる。
今回は、2つの主題を取り上げ、その幽霊、怪物としての存在から、現在の日本を射抜く。
能という演劇形式の構造をかりながら、現在を直視する、このまま忘却しないという主題で貫く音楽劇である。
作品『挫波』が取り上げるのが、2012年に新国立競技場の設計者としてコンペで選ばれながら、膨大な工事費用から15年に白紙撤回された世界的建築家、ザハ・ハディドさん。その後、翌年に没した彼女をシテに立ち上げる。
もう1つの『敦賀』は、「夢の増殖炉」といわれながら、国費が膨れ上がる中、廃炉作業に至っている福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」がモチーフ。1985年の着工以来1兆円を超す巨額の資金が投じられながら一度も正式稼動することはなかった。夢のエネルギー計画を実現するべく、希望を抱いて「もんじゅ」の設立・計画にかかわってきた人々の思いがモチーフである。
社会とその歴史は、その犠牲者としての未練の幽霊と怪物を、ひっきりなしに生み出して来て、今だって生み出し続けています。
KAAT神奈川芸術劇場のWEBサイトより
わたしたちはそれら幽霊や怪物のことを見ないこと忘れてしまうことを、その気になればできちゃうし、そのほうが快適な向きは確かにある。
でもそれらに、つまり直視しないこと忘却することに、抗うために、能という演劇形式が持つ構造を借りて、音楽劇を上演します。
岡田利規
音楽は、維新派の音楽監督に32年にわたって携わり、《No Theater》をはじめ、岡田利規のミュンヘン3部作の全ての音楽を手がけた内橋和久さんが担当。出演者にも、個性的で才能あふれる俳優、アーティストが集った。
俳優、そしてダンサーとしても常にその活動が注目される森山未來さん、無二の存在感を放つ片桐はいりさん、独自の個性で俳優としても活躍目覚しい栗原類さん、若手の実力派女優、ダンサーでもある石橋静河さん、チェルフィッチュ作品にも多数出演し、映画監督としても話題を集める太田信吾さん。ほかに、シンガー・ソングライターの七尾旅人さんも出演する。
類まれな歌い手の七尾さんが、劇中では謡をつとめ、内橋さん率いる演奏家とともに音楽劇としての能の根幹を担う。
作・演出:岡田利規
音楽監督・演奏:内橋和久
出演:森山未來、片桐はいり、栗原類、石橋静河、太田信吾/七尾旅人(謡手)
【演目】
◆『挫波(ザハ)』『敦賀(もんじゅ)』(の一部)
◆アフタートーク
岡田利規(作・演出)
白井晃(演出家・俳優・KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)
【日程】
6月27日(土)上演開始16:00
6月28日(日)上演開始16:00
※両日程とも同じ演目・同じトークでの上演
【会場】
KAAT Youtubeチャンネル
※配信URLは後日、KAATのWEBサイトのyoutubeリンクから
【料金】
無料
スタッフ 映像:山田晋平、音響:稲住祐平、美術協力:中山英之、演出助手:石内詠子、制作:小沼知子
宣伝美術:松本弦人 宣伝写真:間部百合 宣伝衣装:藤谷香子
詳細は、KAATの公演WEBサイト、今回のオンライン配信のWEBサイト
戯曲が、2020年7月末に白水社より緊急刊行される。
岡田利規『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』
価格:本体2400円+税
ISBN:978-4-560-09783-0
岡田利規による「コンテンポラリー能楽集」の全貌が、ついに明らかに。『NŌ THEATER』を併録。
予約受付は、白水社のWEBサイト
予約受付は、こちら。