名古屋のカルチャーWEBマガジン「アウターモーストナゴヤ」では、レビュー、リポート、トピックスなどを掲載します

KYOTO EXPERIMENT2016『水の駅』7月5日まで無料配信

 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMN」で公式プログラムの1つとして上演されたシャンカル・ヴェンカテーシュワラン/シアター ルーツ&ウィングスの『水の駅』(2016年11月12、13日、京都芸術劇場 春秋座京都芸術大学舞台芸術研究センター/KYOTO EXPERIMENT)が、2020年6月29日〜7月5日、無料公開されている。視聴は、京都芸術劇場春秋座 studio21のWEBサイトから。

 コロナ禍である状況だからこそ多くの人に見てほしいとのインド人演出家シャンカル・ヴェンカテーシュワランさんの思いから、配信が決まった。

 演出家、劇作家の太田省吾さん(1939〜2007年)による『水の駅』は、一切のセリフを排し、極端に遅い動作を役者に課す「沈黙劇」。社会の中での属性をはぎ取られた原初の人間を浮かび上がらせ、見る者に永遠の時間、超越的な宇宙を感じさせる名作として知られる。

 シャンカル・ヴェンカテーシュワランさんは、「ケーララ州国際演劇祭」の芸術監督で、インド最注目の演出家。2011年に取り組んだのが太田さんの代表作『水の駅』だったという。

 舞台上にある水飲み場の蛇口から細く流れるひと筋の水。この「水の駅」をさまざまに行き交う人が訪れ、去っていく…。この作品では、シンプルな設定の中で、多民族、多言語国家のインド全土から集められた俳優が対峙し、日本でつくられてきた沈黙劇とは違った意味性を帯びる。太田省吾さんへの21世紀インドからのレスポンスとして沈黙劇の可能性を問いかけている。

水の駅』映像公開に寄せて
太田省吾が『水の駅』を発表してから35年が経った2016年、私が演出し、インド各地とスリランカの俳優が出演する『水の駅』を京都で上演する機会に恵まれました。
私の『水の駅』が転形劇場の『水の駅』と違うのは、その沈黙が生まれる出所です。太田省吾の沈黙は、歴史、言語を共有するがゆえに登場人物は言葉を交わす必要がない、人々は共通の言語、生きられた歴史の集合的経験を持っているところから来ていると考えられます。他方、私たち南アジアの文脈における沈黙は、カースト、階級、肌の色、文化の違いから生まれています。私たちの沈黙は、私たちが全く違った文化、言語背景を持っており、言葉を交わすことができないところから来ています。
『水の駅』で私たちは、社会が種レベルにまで剥ぎ取られた時の人間の状態を目の当たりにします。そこでは私たちは一個人ではなく、死に囲まれた薄暗いランドスケープを横断する、特有の文化や言語、個性をはぎ取られた単なるヒトのサンプルです。
このパンデミック、進行中の社会不安、新たに展開される国境紛争、それらが私にある感覚を生み出しています。つまり、私たちは薄暗がりのなか危険な山の斜面を突き進む長い旅路にあるということを。『水の駅』は、私たちの抱える課題に取り組む方法、周りそして先々を見渡すために速度を落とし、暗闇のなかで私たちがもっと鮮明に物事を見るための手段を示してくれます。
上演時間は2時間弱、ペースはゆっくりとした、沈黙劇です。ぜひ静かな時間と場所を見つけてください。スクリーンの明るさを落とし、スピーカーの音量は下げてみてください。この作品のペースにじっくりと浸り、目、耳、心を開いて、あなたの想像のなかで作品を完成させてください。
シャンカル・ヴェンカテーシュワラン

京都芸術劇場 春秋座 studio21 のwebサイトより

最新情報をチェックしよう!