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「KYOTO EXPERIMENT」の全プログラム発表

 2019 年 10 月 5 〜27 日に京都市内で開かれる「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2019」の全プログラムが発表された。「世界の響き ーエコロジカルな時代へ」をテーマに、先駆的な活動を展開する世界各地のアーティストによる11の公式プログラムで構成する。西洋に対する東洋、人工に対する自然など二項対立的な考えを超え、様々な主体が多層的に響き合う新たな世界の捉え方を提示するのが狙い。オープンエントリーのフリンジプログラム、シンポジウム、観劇後に観客が集うミーティングポイント等、多角的に事業で、あらゆる文化ジャンルに興味を持つ人が参加可能な総合的なフェスティバルを目指す。会場はロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場春秋座など。
 西洋近代の原理の先を目指し、モロッコを拠点とするブシュラ・ウィーズゲン、南アフリカのネリシウェ・ザバ、イ ランのアミール・レザ・コヘスタニなど、KYOTO EXPERIMENT で初となる地域からアーティストを招聘。サイレン・チョ ン・ウニョンや神里雄大、庭劇団ペニノの作品からは、アイデンティティの揺らぎや遷移、現実 とフィクションの往還が提示される。
 過去にも出演したアーティストとの新たな創作も見どころだ。チョイ・ カファイはテクノロジーとスピリチュアルの力を交錯させ、舞踏の身体を召喚。チェルフィッチュと美術家・金氏徹平のコラボレーションは、人間中心主義を脱するための演劇作品に挑む。久門剛史は自身にとってかつてないスケールで初の舞台作品を制作する。 ミーティングポイント は、建築家ユニット dot architects が設計し、ロームシアター京都ローム・スクエア内に期間限定で設置する特設ステージ「シマシマジマ」が会場となる。

チェルフィッチュ×金氏徹平 『消しゴム山』
チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』©︎Shota Yamauchi

 シンガポール生まれでベルリン在住のチョイ・カファイは、ダンス、メディア、パフォー マンスが複雑に出合う領域横断的な作品を展開。「 存在の耐えられない暗黒」( 10 月 5、 6 日)は、故人である土方巽のアバターを舞台に生成させる。チェルフィッチュ × 金氏徹平の「消しゴム山」( 10 月 5 、6 日)は、岡田利規が東日本大震災の被災地で見た、驚異的な速度で人工的に作り変えられる風景をきっかけに構想。美術家の金氏徹平とともに、昨年からチェルフィッチュが力を注ぐ「映像演劇」も取り入れながら、 俳優の身体や言葉のありようにも新たなアプローチを試み、チェルフィッチュの最新形を提示する。

庭劇団ペニノ 『蛸入道 忘却ノ儀』  Photo by Shinsuke Sugino
庭劇団ペニノ『蛸入道 忘却ノ儀』Photo by Shinsuke Sugino

 庭劇団ペニノ 「蛸入道 忘却ノ儀」(|10 月 11 〜15日)では、寺院を模した空間を劇場に建立。観客はその内部に招き入れられるだけでなく、俳優たちが執り行う儀式的なパ フォーマンスに巻き込まれていく。8 本の足、3 つの心臓、9 つの脳を持ち、その不可思議さから宇宙から到来した生命とも呼 ばれる蛸が空間と祭事のシンボルに据えられ、経典の反復とヴァリエーション、かき鳴らされる楽器、閉ざされたお堂の中 に充満する香りとねばりつく熱気とともに観客の五感が総動員される。ブシュラ・ウィーズゲンは、モロッコ・マラケシュを拠点に活動する振付家。「Corbeaux(鴉)」( 10 月 13、14日)は、2014 年に発表されて以来、さまざまな都市の非劇場的な場所で上演が重ねら れてきた。舞台と客席の区分はなく、観客は生ける音の彫刻と化した女性たちと地続きに立つ。

ウィリアム・ケントリッジ 『冬の旅』  Festival d’Aix-en-Provence 2014 ©P.Berger/artcomart.
ウィリアム・ケントリッジ『冬の旅』
Festival d’Aix-en-Provence 2014 ©P.Berger/artcomart.

 映像作品で知られる南アフリカ出身のアーティスト、ウィリアム・ケントリッジ の「冬の旅」( 10 月 18 日)では、フラン ツ・シューベルト「冬の旅」のメランコリックで凍てついた情景が南アの乾いた風景とオーヴァーラップし、恋に破れ放浪する男の孤独 と絶望がアパルトヘイト下の黒人労働者の苦難とリンクする。ヴィルヘルム・ミュラーによる 24 篇の詩が時代の遠い隔 たりを越え、現代に響く。 映像のほとんどがすでに制作していた作品群から選び出され、そのドローイングの踊るような身体性が、世界屈指のバリトン歌手マティアス・ゲルネの深い声、ザルツブルグ音楽祭の芸術総監督としても手腕をふるうマルクス・ ヒンターホイザーの明晰なピアノと、稀代のトリオを形作る。
 その他の演目は、ネリシウェ・ザバ (南ア)の「Bang Bang Wo / Plasticization」(10 月 19 、20日)、久門剛史の「らせんの練習」( 10 月 20 日)、アミール・レザ・コヘスタニ/メヘル・シアター・グループ 「Hearing」 (10 月 24 、 25 日)、 神里雄大/岡崎藝術座 「ニオノウミにて」( 10 月 25 〜27日)、サイレン・チョン・ウニョン「変則のファンタジー _ 韓国版」(10月26、27日)など。
 会場等の詳細やチケット情報は、同芸術祭webサイト