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馬場駿吉さんの中日文化賞受賞を祝う会

 現代美術や舞台、文芸など幅広い分野で批評・執筆活動を展開してきた馬場駿吉さん(名古屋市千種区)の第72回中日文化賞受賞を祝う会が2019年7月28日、名古屋市中村区の名古屋JRゲートタワーホテルで催された。名古屋地区はもとより、加納光於さん、谷川渥さん、市川政憲さんをはじめ全国から馬場さんを慕う美術関係者が参加。馬場さんの業績をたたえるとともに、和やかな雰囲気の中で交流を深めた。
 最初に発起人=木本文平さん(碧南市藤井達吉現代美術館長)、高橋秀治さん(岐阜県現代陶芸美術館長)、南雄介さん(愛知県美術館長)、村田眞宏さん(豊田市美術館長)、吉田俊英さん(四日市市立博物館長)=が紹介され、代表で吉田さんが「馬場さんの人柄、交際範囲や視点の広さなど、素晴らしいところを身近に学ばせていただいた。馬場さんの受賞を祝う会ですが、フランクな形で交流を楽しんでほしい」と述べた。

 馬場さんは挨拶で「医学の領域に長くいたが、同時に少年時代から俳句をやっていて芸術に関心を持ってきた」と来し方を振り返り、駒井哲郎さんの銅版画をきっかけに美術の世界と出合い、その後、実験工房などを通して、ジャンルを横断する幅広い人脈を築いてきたことなどを改めて紹介。「(自分は)一途に一つの道を進み、突き詰めてきたわけではない。何をやっているのか、はっきりしないところもあるのに、このような賞を受けていいのかとの思いもあったが、広い視野で横断的に芸術を見るのもいいのではないかと考えた」などと述べた。館長を務めた名古屋ボストン美術館については、「反省もあるが、皆さんの温かい支えがあって続けられた」とお礼を述べ、最後に「皆さんと楽しい時間を過ごしたいと思います」と締めくくった。
 乾杯の後は、立食パーティーのスタイルで参加者が懇談。続いて、美学者の谷川渥さんが「いつまでも私たちの範として頑張ってほしい」と祝辞を述べ、馬場さんとのミニ対談のようなやり取りの中で、荒川修作さんや、ダンスカンパニーのH・アール・カオスなどにも話題が広がった。谷川さんが「馬場さんは身体的なものが好きですが、僕も身体的なものがないと駄目です」と話すなど、会話が盛り上がり、続く加納光於さんは「文章を書いて援護射撃してもらった」と馬場さんに感謝。「(幅広いジャンルの中でも)僕は馬場さんは何より俳人だと思っている。俳句について、芭蕉の色彩感覚などいろいろと教えてもらった」と語った。元愛知県美術館長の市川政憲さんは「館長として名古屋に赴任する際、馬場さんが文章を書いている彫刻家の若林奮さんから、『何かあったら馬場さんがいるから(大丈夫)』と言われた」と振り返った。
 ある列席者の形式的な挨拶に対して、画家の森真吾さんが突然、自分にも話させろという勢いで会場の一番後方から発言。「そんな話は聞き飽きた。自分のような無頼な奴と付き合ってくれるのが馬場さんの価値だ」などと野次を飛ばしたが、森さんが言いたかったのが、分け隔てなく人と接する馬場さんの本質についてだっただけに、興味深い一幕となった。ちょうど横にいてワインを飲んでいた女性が「肩書きがあって付き合っている人と、そうでない人との違いですよ」と呟くのを聞き、納得。そう、馬場さんは、高名な人でも、名も無い学生でも、同じように物腰柔らかく誠実に、自然体で相手をしてくれる。会場にいたそれぞれの人が、そうした馬場さんとの思い出を胸に、馬場さんを心から慕ってこの会場に駆けつけたのである。
 最後に、木本文平さんが「ますます元気に活躍してほしい」と呼びかけると、馬場さんも「もうちょっと頑張ってやっていきたい」と笑顔で応えた。
 馬場さんには花束と記念品のAIスピーカーが贈られ、参加者には、馬場さんから2018年秋に出された芭蕉顕彰名古屋俳句祭編「続冬の日」が贈られた。

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